2016年11月16日水曜日

Vynl Memories



あの頃、僕が一番好きだったものは間違いなくレコードだった。
レコードプレイヤーを使ってデジタル音源を
流すことのできるScratch Live登場前夜、
毎週のようにレコード屋へ行き、
雑誌を読み、webをチェックして、
未知の自分の好きなかっこいい音楽を探していた。
ときは流れ大阪から東京へ移り1人暮らしが始まると、
実家に私物を置いておくことを許されなかったため、
約6年かけて集めたレコードをすべて持って上京することに。
その数ざっと800枚。
800枚なんて好事家からすれば大したことないかもしれない。
「これさえなければ…」
世間のレコードブームと逆行するかのように、
レコードは大きく邪魔なものだと感じることが何度もあった。
じゃあ全部売っちゃえばいいじゃん、と思う人もいるだろう。
しかし、レコードはCDやダウンロードした音源とは異なり、
強烈に思い出がこびり付いている。まるで残留思念のように。
それは買ったときの思い出だったり、その曲をかけたあの夜だったり。
ここ1年ぐらい、ようやく観念して少しずつレコードを売るようになった。
好きな曲、かっこいい曲は当然残していく中で、
自分で売るレコードを選んでいるときに気づいたことがあった。
それは先に述べた「記憶に残っているか」ということ。
人からすればどうでもいい思い出を封じ込めてミックスを作った。

1. Aurora / Azymuth
ブラジルのフュージョンバンド。
今もブラジルの音楽は全然明るくないけれど、
このアルバムはひと夏に1度は聞く。
アップテンポな曲からダウンテンポな曲まで、
そのすべてにメロウネスが丁寧に込められていて
真夏の夜を涼しくしてくれる。
FLOATING POINTSも日本のFavorite Record Shopに上げる
ROOTDOWN RECORDSでレコメンドしてもらった。
レコ屋で広げてもらった音楽の世界は本当に貴重なものだと思う。

2. twuneanunda / Dwele
彼の曲を初めて聞いたのは昔放送されていた
RhymesterのWANTEDというラジオ番組。
番組内でDJ JINによるショートミックスのコーナーがあり、
毎週MDに録音して聞いていて、
このラジオでブラックミュージックが持つ
漆黒のグルーブの虜になった。
“A.N.G.E.L”が有名で最近発売されたDJ JINのMix CDにも収録。
このアルバムはブート版ながらも素晴らしく内容が良くて、
最近夜によく聞いているけれど、
その後主流となるアンビエントな流れの前夜にありながら
メロウネスを忘れない感じが好き。
大阪で一番好きなレコードショップだったCISCOにて購入。
当時CISCOの袋を持ってドヤ顔でキャンパスを歩いていた。
大学2年ぐらいまで在籍してた
バスケサークルの先輩が気づいてくれて、
得意な気持ちになった覚えがある。
その自意識が恥ずかしすぎる。

3. Quiet Nights / orfeo
東京のレコード屋に行ける!ということは
上京前に楽しみにしていたことだった。
(すっかり意気消沈してるけど)
その熱に浮かされて下北沢のJETSETで購入。
タイトル通り静かな夜にお似合いな曲で、
PVがグサヴィエ・ドラン調でそれもオモシロい。
computer jay REMIXは彼のBandcampでFree DLできる。
全然知らないアーティストに出会う場所が
レコード屋だった最後の記憶の断片。

4. Think About You / Frank Ocean
今年ついにセカンドアルバムがリリースされたが、
超名盤の1stアルバムである”Channel Orange”からこの曲を。
色褪せないメロディは何十年と語り継がれるだろう。
今はなき大阪のManhattan Recordsで購入。
あの仰々しいポップがとても懐かしく感じる。

5. desert rose(war player) / inc.
DrakeやThe Weekend以降、急速に増えたアンビエントなR&B。
彼らの退廃的なムードとメロウネスのバランスが好きだ。
最近はレコード+DLコードという形が多くなってきたが、
このアルバムはレコード+CDという珍しい形。
CDという音楽のリリース形態は今後一体どうなっていくんだろう。
こちらはCDショップのタワーレコードで購入。

6. Verse / Rhye
こちらも前の曲と同様のアンビエントなR&B。
SADEの再来!と言わずにはいられないけれど、
実はボーカルが男の人だということを知って心底驚いた記憶がある。
最近では須永辰緒が雑誌&Pemium2016年9月号にて選盤していた。
冬に聞きたくなるアルバム、通称冬バム。
これもタワレコ池袋店にて購入。

7. DO NOT LEAVE WET / Seiho
大阪でinnitというパーティーがあり、
そこで初めて見たときからかっこ良かったSeiho。
(すべて繋がったのはCosmopolyphonic RadioとONRAのおかげ)
音楽の構造を深くまで理解して機材に詳しい、
奇天烈な格好をした、かっこいい音楽を奏でる人。
とか思っていたら、
いつのまにかとんでもないスーパースターになっていた。
優れたポップスの感性も持ちながら、
こんなに前衛的でかっこいい音楽も作れる人は
今後出てくるんだろうか。
仕事帰りに渋谷のディスクユニオンで購入。

8. Stilll Wanna Do U / Hazel
大阪で先輩たちとaffectionというパーティーを開催していたとき、
仲間内でかなり話題になったことを思い出す。
(読み方が「ヘイゼル」なのか「ハゼル」なのか毎回忘れる。)
ONRA周りの人でグイグイ引っ張るグルーブと歌声のハーモニーがかっこいい。
"Comeback Season”というDrakeのmixtapeに
Shareという曲を提供していることを知ってビックリした。

9. Love Is Gone / Riccio
ブギーブーム以降、ディスコのエディットもので、
かっこいい曲が数多くリリースされるようになり、
先に紹介したROOTDOWN RECORDSでよく買っていた。
エディットものは色々あるけれど、
この曲のダンサブルメロウな感じがとても好き。
Riccioはイタリア人で、
これを機に元ネタ調べたけど結局分からなかった。

10. Promise / grooveman spot
前曲の流れでエディットだけではなく、
ダウンテンポの四つ打ちの曲もよく買っていた。
この曲もテンポは比較的遅いながらも、
名は体を表すとはよくいったもので
grooveのツボをついてきて体がどうしたって揺れてしまう。
311の被災者を支援をする為に発売されたことも覚えておきたい。

11. BAYSIDE TERRACE / BTB
説明不要のサマーマッドネスチューン。
シンセサイザーとギターカッティングで白飯3杯食べれちゃう。
この曲はaffectionの面々で和歌山白浜のバグースにて
開催されたパーティーでかけたことを覚えている。
「ちょうどサンセットのときで …」と言いたいところだけど、
当日はあいにくの曇天の模様だった。楽しかった思い出。

12. Test Of Wind / Vynl Jam
デジタル機材を使わないポリシーを掲げている
というフィンランドのバンド。言われなければ、
この曲が2008年生まれだなんて絶対わからない。
そのぐらい普遍的なメロウネスで最高に心地よい。
当時通販でもよくレコードを買っていて、
福岡のthirty three recordsで購入。
ソウルやディスコシングルの再発の品揃えが充実してて、
かなりお世話になったけど閉店していた …諸行無常。

13. Valdez In The Sky / Donny Hathaway
好きなソウルシンガーを1人選ぶとすれば
Donny Hathawayと言いたい。
ここでピックした曲はインストだが 、
彼のエレピプレイが炸裂する彼のクラシックの1つ。
LIVE版のテイクも捨てがたいがここは7inchで。ノイズはご愛嬌。
最近ではTerace Martinがカバーしている。
池袋のレコフェスでMASHさんにレコメンドしてもらった。

14. My Life My Street / cro-magnon Feat. MC 漢
東京、新宿。
昔に比べて安全になったと言われるが、
まだまだ危険の残り香が存在する街。
そんな街で今聞くべきのなのはMC漢のライムだろう。
新宿という街の磁場が菊地成孔と
彼を結びつけたことも記憶に新しい。
Takumi Kanekoのピアノプレイと
畳み掛けるライミングのアンサンブルが心地良い。
雨の中、傘をささずにフードをかぶりながら歌舞伎町で聞きたい曲で、
この頃から巻くのはポリスとガンジャだけだと分かる。

15. Down The Street / Guru
夜の新宿からNYへと場所を移そう。
煙たいジャケットが印象的なGURUのJAZZMATAZZの1作目。
サンプリングで使うのではなくジャズプレイヤー自身を呼んできて、
共演することは当時としては画期的なことだった。
この曲に参加するのはLonnie Riston Smith。
彼のピアノが胸を締め付けるほどグッとくる。
もうGURUはこの世にいないと思うと悲しいし、
世代ではないものの、90’s HIPHOPを聞くと
大阪でよく見たストロングスタイルな
ヒップホップDJたちのプレイを思い出す。
最近だとフリースタイルダンジョンでZEEBRAがレコメンドしていた。

16. Girls, Girls, Girls (instrumental) / JAY-Z
Hello Brokryn!! (ここは敢えてLil Wayneの声で脳内再生希望)
JAY-Zの名盤”Blueprint”から、
Just BlazeがProduceした泣きのメロウソング。
今回改めてインストで聞いて
初めてビートボックスが被せらていることを知った。
インストなんだけどソウルボーカルをサンプルしていること、
単純なワンループではなく展開が
きっちりあるのでインストでも楽しめる。
こういったヒップホップシングルは
売る対象の第一候補になる訳だけど、
インストやアカペラが入っててなかなか踏ん切りがつかない。
大阪のキングコングで購入。
茶屋町にあった梅田店が好きで大学帰りによく行っていた。

17. Alicia Keys / Unbreakable
JAY-Zと共にNYを歌い上げたクイーン。
名ライブ盤「Unplugged」からライブバージョンで。
有名人の名前を使ったワードプレイをまじえながら
高らかに愛と夢を歌い上げる曲。
PVでドゥーラグを被った彼女の姿が鬼カワイイ。
友人たちと三重へレコードディグツアーへ行ったときに購入。
いなたいレコード屋でソウルやディスコを買った後、
最後に訪れた四日市のレコードショップ。
新譜中心のお店でイケイケなミックスCDと共に、
AK-69やMOSADの大きなコーナーがありローカルを感じた。

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