2016年11月14日月曜日

留学

留学 (新潮文庫)

遠藤周作作品。
自分がこんなにハマるとは思いもしませんでしたが、
今年で4冊目となりました。
時代背景は今と異なるのだれど、
書かれているテーマはと普遍的であり、
かつ自意識をエグってくる内容がオモシロかったです。
本作は3つの話で構成されていて、
タイトルの通りどれもが留学する人の話。
遠藤周作は戦後初めてフランスに留学した人であり、
その経験を最も反映しているのが本作であり、
作品内での留学先もすべてフランスとなっています。
(タイトル作の「留学」は除く)
1つめは「ルーアンの夏」という話で、
キリスト教を勉強するために留学する学生が主人公。
彼はフランスへ行くこと自体は良しとしていたが、
キリスト教への思い入れが現地の人ほど深い訳ではない。
そこでフランス人から日本での布教を過剰に期待され、
しかも、泊めてくれる家の息子が亡くなっていて、
家族たちは息子の幻影を見るかのように彼に接する。
そんな息苦しい生活で思いつめていく様子を描いています。
今でこそ異文化交流は楽しくて為になるもの!
という理解が広まっていると思いますが、
当時のフランスにとって日本人は
敗戦国の得体の知れない黄色人種といった認識でした。
互いに理解しようと姿勢があって初めて、
交流が成立するのであり、
一方的に奇人扱いされる辛さが描かれており
胸が痛くなりました。
またキリスト教を絶対的正義と信じる恍惚に対する、
主人公の疑念が行間から滲み出ていました。
2話目はタイトル作である「留学」。
これは沈黙のプロローグと言ってもいいと思います。
荒木トマスという人を追ったもので、
彼もまた江戸時代に初めてヨーロッパを訪れる人であり、
訪れた先、ローマでの過度な期待を嫌がり、
日本へ帰国後キリスト教を棄教し幕府へと寝返り、
キリシタンの迫害に手を貸してしまう。
この2作品はキリスト教を日本へ輸入し、
根付かせることの難しさ、
日本人がキリスト教を信じることって、
どういう意味があるんですか?
ということを考えさせてくれました。
そして、一番ボリュームのある3話目の「爾も、また」
これが抜群にオモシロかったです!
遠藤周作の作品は読むたびに、
一番好きな話が更新されていくようで超楽しい。
(あくまで個人的な話ですが、、)
前2つの話は共にキリスト教が題材でしたが、
この話は文学にまつわるお話で、
主人公はフランス文学を研究する大学助手。
オモシロいと思ったのは大きく分けて2点。
1つ目は外国文化と日本人というテーマ。
主人公は作家のサドを研究しているんですが、
最初に訪れたフランス人のサド研究者に、
「日本人がなぜサドを研究するのか分からない」
と言われ、いきなり梯子を外される。
これってもう永遠のテーマだと思っていて、
僕は海外の映画や音楽をむさぼるように摂取してる訳ですが、
そこにどんな理由があるのか、、と自問せざるを得ない。
日本の音楽、映画を敬遠して、
海外至上主義な人ってたまに見かけるけど、
テメエのその浅い了見は何なんだ?
と問い詰めたくなるときがあって、
そのときの気持ちを思い出したり。
「だってオモシロいんだもの」という
居酒屋の便所に飾っている、
あいだみつをみたいな回答もできるけど、
そんなしょうもないことはしたくない。
今ここでズバッと回答できる訳ではないけれど、
いつか答えが見つかれば良いなと思います。
そして2つ目は対人関係を巡る自意識。
天の邪鬼で頑固な彼の姿は、
まるで自分を見るようで何回かエズくレベルでした…
コミュニティの中でドンドン孤立していき、
研究対象であるサドひいては留学先であるフランスと
自分自身の乖離をひたすた悩み続ける。
そこへ象徴として現れる城跡の揺るがなさの
対比が素晴らしかったです。
エッセイもたくさん書いているようなので、
次は目先を変えてエッセイでも読んでみようかと思います。

0 件のコメント: