2016年11月24日木曜日

ララバイ

ララバイ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

先日、近所の図書館を訪れた際に、
何気なく棚を見たらチャック・パラニュークの作品が!
ということで借りて読みました。
本作は絶版になっているので正規では買えません。
彼の代表作はもちろんファイトクラブでしょう。
昨年、新訳版がリリースされて読んだのですが、
超オモシロかったです。
その一方で、他の作品は読めない状況が続いています。
サバイバーは単行本を持っているんですが、
やっぱりKindleで洋書コースかなぁと考える今日この頃。
前置きが長くなりましたが、本作もオモシロかったです。
ララバイは子守唄という意味ですが、
作品内でメインとなるのは間引きの歌と呼ばれるもので、
それを特定の人物に向かって唱えると、
その人間が死んでしまう呪文。
歌を対象者に聞かせなくても唱えるだけで殺すことができる。
ここまで聞いて勘のいい人なら分かるでしょうが、
そうです、デスノートカジュアル版です。
あとがきにも書かれていましたが、
デスノートシリーズでは、ギミックの勝負といいますか、
ある設定を使ってどっちが裏をかいて
勝つことができるかというゲーム性がフォーカスされています。
本作にも後半はその要素は含まれるものの、
メインとなるのは人を殺すことに関する議論と
ひたすら展開される陰謀論。
現実社会で陰謀論をドヤ顔で語られることほど、
辛いことはないわけですが、
チャック・パラニュークが語る世界の仕組みの話、
資本主義に対する懐疑的な姿勢はいつも興味深い。
中盤から擬似家族状態でアメリカを巡る、
ロードムービーのような展開の中で、
家族間の会話として論考が繰り広げられるんですが、
僕はここが一番好きでした。
とくにオイスターというキャラクターが展開する、
自然でさえも元々アメリカ大陸にはなかったものが、
蹂躙しているこんな世の中、ポイズン。
という論考がなるほどなーと思いました。
(ファイトクラブでのタイラー・ダーデン的な役割)
あとチャック・パラニュークは文を忍ばせるのが巧み。
前半に出てきた同じ文章が後半にそのまま出てきても
物語を読み進めた上で読むと感じ方が変わっていて、
自分の変化を文章から感じるという不思議な体験でした。
後半からはラストにかけて「ハリーポッターか!」と
ツッコミを入れたくなるほど様々な呪文が登場して、
しっちゃかめっちゃか。
ラストはぶっ飛び過ぎて笑ってしまいました。
ビッグブラザーへの言及がとても多かったので、
1984をいい加減に読まねばと思います。

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