2016年10月1日土曜日

俳優 亀岡拓次



<あらすじ>
映画やテレビでよく見かけるが、
作品名や本人の名前もすぐにはパッと浮かばない…
そんな脇役俳優として活躍する亀岡拓次。
泥棒やチンピラ、ホームレスと演じた役は数知れず、
大作から自主映画まで、声がかかればどんな役でも応じる亀岡は、
監督たちに重宝される俳優だった。
お酒が趣味で、撮影現場と酒場を行き来する毎日を送っていた亀岡は、
ある時、居酒屋の女将に恋をしてしまい…
映画.comより)

最新の麻生久美子が見たいという不純な動機と
横浜聡子監督の作品ということで見てきました。
すでに一般公開は終わっていて
名画座で鑑賞したんですが、
俳優を描いた映画というメタ構造と独特の空気感が
名画座と相性抜群で映画館で見てホントよかったです。
(Movie Town としてのTOKYOは最高最高!)

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

前作のウルトラミラクルラブストーリーは見ていて、
斜め上の展開がいくつかあって好きだったんですが、
あまりに脈絡がなさ過ぎると思った点もありました。
本作でも現実から一気に飛躍する瞬間があるんですが、
見せ方がかなり良くなっていて違和感なく楽しめました。
タイトルに「俳優」とあるように、
本作は映画、さらに言えば演じることにまつわる映画です。
主人公の亀岡を演じるのは安田顕で、
亀岡は主役を張ることはないバイプレーヤーとして、
様々な映画に出演する役者。
これは安田顕の立ち位置と合致しますよね。
近年は本当によく見かける役者の1人で、
作品によって味わいが異なるという、
素晴らしいバイプレーヤーっぷりを発揮しているわけですが、
彼をキャスティングした時点で本作は勝ったも同然!
と思わされるくらい素晴らしかったです。
基本無気力で役者の仕事をこなしながら、
毎日酒を飲みまくり孤高な生活を送っている。
8割方は自堕落な彼の生活を見るという映画で、
日常系が好きな僕にとっては大好物。
残りの2割がそんな日常から急に沸き立つ非日常で、
この飛躍の仕方とその飛躍した先の映像が好きでした。
飛躍の仕方でいえば、亀岡が憧れの海外の有名監督作品に
主演する夢想展開へのシームレスさが相当グッときました。
カメラの動かし方で興味を持続させられました。
映像という観点ではスクリーンとのエチュードが迫力満点。
前後半で計2回あるんですが、それぞれ影絵とプロジェクションで
見せ方を反転させる仕掛けが良かったです。夢の中のよう。
同じエチュードという点でいえば、
フィリピンパブの女の子とのシーンは心底くだらなくて、
それもそれで身も蓋もなくて楽しかったです。
パンチラインを大御所に言わせるというのも好きでした。
僕が印象に残っているのは以下の2つ。(うろ覚えです …
三田佳子に「あなたに流れている時間は舞台ではなく映画だ」
山崎努に「涙は口からも出る」( ゲロのこと)
前者は役者論に通じる話だと思うんですが、
観客と同じ時間を共有する舞台と、
カットが割られて時間が分断される映画。
本作においては彼が脇役として様々な現場を訪れるんですが、
その都度移動の電車の様子を律儀に映し出し
彼の世界が分断されている様を描いていて、
それを端的に示す言葉だと思います。
ジプシーのように旅を繰り返す中で 、
彼が探しているのは寂しさを埋める愛。
それが麻生久美子演じるロケ先で訪れた居酒屋の娘。
まー麻生久美子が死ぬほどカワイイ。
仕草、台詞の1つ1つがたまらないんですよねぇ。
とくに初めて訪れた時の2人の会話は甘酸120%!
ゆえに終盤の2回目に訪れた時の展開が切ないんですが …
初めから何も始まってなかったけれど、
それに気づいたときの切なさよ!
カウンターに座る亀岡の横からのショットの雄弁さよ!
その居酒屋に俳優としてサインを残すことになるんですが、
ボトルに名前書くのもサイン!
というタイトルがフリになってるのも良かったなぁ。
ラストの結局は自分の足で歩き続けるしかない、
というオチも好きでした。(たとえもらいタバコし続けても。笑)
パッと見はノッペリしてるけど、
見れば見るほど工夫が凝らされた味わい深い作品。

0 件のコメント: