2016年10月15日土曜日

鬼才 五社英雄の生涯

鬼才 五社英雄の生涯 (文春新書)

映画好き必読の名著あかんやつらの
著者である春日太一最新作ということで読みました。
あかんやつらでもフィーチャーされていた五社英雄監督。
本作は彼にフォーカスし、作品および人物像が深堀りされていて、
めちゃくちゃオモシロかったです。
春日太一さんの本の何がオモシロいかって、
監督のキャリアを時間の縦軸と、
同時代の状況を描いた横軸で整理している点は勿論のこと、
映画の場面や裏話をドラマティックなタッチで書いているところ。
本のイントロからブチ上がらざるを得ないんですが、
それはすでに五社英雄監督の術中にはまっているという、
仕掛けからしてニクい構成でニヤリとさせられる。
今でこそTV主導で邦画作品が多いですが、
当時は映画が娯楽の王道でTVが下に見られていた中、
フジテレビのプロデューサーだった五社監督は亜流扱い。
そこから映画スタッフの信頼を獲得して、
己の映画を作り上げていく姿が超かっこいい!
丹波哲郎、夏八木勲、仲代達矢、夏目雅子といった、
日本を代表する俳優陣とのエピソードもオモシロくて、
当然知らないことだらけだし作品が見たくなります。
また監督の作風の変化も興味深く、
時期によって作り方が異なる点を丁寧に解説してくれています。
その中で五社監督が貫いた姿勢が、
どこか1つでもいいから出色のシーンを作ること。
たとえ物語の流れが破綻したとしても、
観客の心に残る場面を作り上げるんだ!という心意気は、
ツッコミ過多な批評が多い中だと、
少なくなっているかもしれません。
本作の中には写真が多く掲載されているんですが、
それも超かっこよくてウットリしてしまう。
とくに五社監督の背中のモンモンの迫力たるや …
カタギではなくなるその覚悟を見ました。
本当に死ぬ寸前まで映画を作り続けた、
映画への愛が滾りまくった人生に最大限の敬意を。
Huluに松竹配給の作品がたくさんあるので、
時間かけて見ていきたい所存です。

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