2016年10月26日水曜日

きのうの神様

([に]1-2)きのうの神さま (ポプラ文庫 日本文学)

映画、小説ともに大好きな永い言い訳の、
西川美和監督の小説ということで読みました。
これまでディア・ドクターのメイキング本、
エッセイの「映画にまつわるxについて」を読んでいますが、
永い言い訳以前の小説を読んだことがなかったので、
楽しみにしていました。
あとがきに本作が執筆された経緯が書かれていて、
ざっくり説明すると
西川監督が僻村の医療を題材にした映画を作りたく、
それには膨大な量の取材が必要だがお金がない。
そこで出版社が本作を書くことを前提に
取材費用を負担してくれたという経緯。
原作なしで映画を製作することが、
いかに難しいことかを示すエピソードな訳ですが、
その取材で作られた映画はディア・ドクター。
僕は西川監督のフィルモグラフィーの中で、
3本の指に入るくらい大好きな作品です。
本作は5つの短編で構成されていて、
ディア・ドクターを匂わせる部分がありますが、
原作という訳ではありません。
(同じタイトルの短編も映画原作ではない)
先日、直島を含む瀬戸内海の島々へ旅行したこともあって、
より作品の世界観を楽しむことができたような気がします。
都会、とくに東京で働いていると、
自分の存在価値ってなんだろう?
と考えることがあると思います。
祭りかよ!というくらい毎日多くの人が街に跋扈し、
様々なものが恐ろしい速度で消費されていく。
そこに心地よさを感じる訳ですが、
人と人がテクノロジーの発達前に保っていた距離、
半径5mの世界で生きることの良さと辛さ、
両方を描いている点がオモシロかったです。
僻村医療が題材となると、
あたたか〜い人情話になりそうなところを、
シビアな現実が合間に挟まれることで、
物語全体がウェットになり過ぎない。
映画しかり、小説しかり、
この温度感が西川監督の作品で好きな部分だなと改めて。
久々に映画を見返して見ようかなーと思います。

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