2016年8月28日日曜日

A

A

中村文則作品。
新作も超気になっていますが、
先に過去作をと思い読んでみました。
これまで長編しか読んでいなかったんですが、
本作は僕にとって初めて読む彼の短編集。
中村文則さんの作品は話自体のオモシロさに
プラスアルファで主人公を通じた論考の深さが加わって
体に染み渡るような読書体験となる。
短編になるとその部分が薄まっていたんですが、
その分、お話のヴィヴィッドさが際立っていました。
私小説テイストな話、SFのような話もあったり、
ギャグやん!と思わず言いたくなる話など、
バラエティに富んだラインナップ。
そりゃあんだけ重厚なものを書き続けていたら、
精神的なバランスが取れないよなぁと。
人間、中村文則を目撃したような気がしました。
作品感の温度が違う中で緩やかな繋がりがある点も、
あまり読んだことがないタイプで楽しかったです。
終盤の戦争をテーマとした、
タイトル作品の「A」が短いながらもドスンとくる話でしたし、
ラストの「二年前のこと」という話からは
彼の小説家としての覚悟を見ました。
新作の「私の消滅」を早く読みたいと思います。

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