2016年8月7日日曜日

ケンとカズ



<あらすじ>
悪友であるケンとカズは自動車修理工場を隠れみのに
覚せい剤の密売で金を稼いでいたが、
ケンは恋人が妊娠したこと、カズは認知症である母親を
施設に入れるため金を必要なことを言い出せずにいた。
2人は密売ルートを増やすために敵対グループと手を組むが、
元締めのヤクザに目をつけられ、次第に追いつめられていく。
映画.comより)

今年のバイオレンス系の邦画は豊作だと
様々な作品を見てヒシヒシと実感する中、
本作を見たところで、さらにその気持ちが強まりました。
身も蓋もない切ない話なんですが、
映像、音がめちゃめちゃカッコ良かったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

タイトルにあるケンとカズの2人はシャブの売人。
冒頭、自分たちの縄張りを侵食するヤツらを
ボコボコにするシーンから始まり緊迫感満点。
容赦のない暴力の雨あられが降り注ぐ。
表向きは2人とも車の整備工場で働いているんですが、
その整備工場でシャブのお金を洗浄しています。
本作の魅力が主演2人にあることは間違いありません。
温和なケンと武闘派のカズ。
正反対に見えるけれど、それぞれが家族を支えるために、
シャブを売りさばいているという点では共通しています。
ケンには妊娠している奥さんと生まれてくる子供のために、
カズはボケた母親を施設にいれるために。
彼らはギャンブルや性欲といった私利私欲を満たしたくて
シャブの売人をやっているわけではなく、
あくまで金を稼ぐ1つの手段としてしか、
考えていないというのがフレッシュ。
逆を返せばシャブを売らないと
生活が成り立たない状況にあるということ。
そのリアリティが2人の立ち振る舞いから
ヒシヒシと伝わってきました。
辞めたいけれど辞められない、
なんならもっと儲かる方法へと流れていく。
止まらない負のループを見ていると心が痛みました。
主演2人に限らず 登場人物の顔が皆いいんですよね。
ケツ持ちのヤクザ2人はたまんないものがあり、
とくに若頭の方の木偶の坊のそのものの佇まいが最高!
彼らの演技を支えるのが素晴らしい映像と音楽。
この2つが最高潮になったと感じたのはカーチェイスのシーン。
まるでハンズ・ジマーかのごとく、
豪勢なドラムソロが鳴り響く中、カットが怒涛に変わっていき、
人と車のカーチェイスにもかかわらず、
とてつもない迫力が生まれていました。
本作はインディー映画と呼ばれる部類に入るかもしれませんが、
ちょっとした工夫で何とでもなるし、
下手な監督のCGよりも100倍オモシロくなってました!
あと前半に2人が一緒にフラフラしているシーンがあって、
そのときの夜のシーンの美しさは素晴らしかったです。
全体としてショットの1つ1つが
とても丁寧という印象を持ちました。
(クローズショットの多用については、
長谷川和彦氏のコメントに100%同意)
後半からは二重スパイのような展開となり、
サスペンス性が大きく増していきます。
明らかに上手くいかない気配がプンプン漂っているにも関わらず、
突っ込んでいってしまうカズの姿は自暴自棄に見えて、
緩やかに死のうとしているでは、、とさえ思えてくる。
一方のケンは自分がカズをシャブ売りに誘ったこともあるし、
生まれてくる子どものことを考えると、
どうしても金が欲しくて裏切りに加担してしまう。
ラストはその清算としての殺し合いが勃発。
破滅の中で壊れかけていた2人の関係が、
死の間際で取り戻されるという切なさは泣いちゃうし、
ラストショットのキレが素晴らしかったです。
ゴジラもいいけど日本の新世代の息吹を目撃せよ!

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