2016年8月5日金曜日

シン・ゴジラ




2年前にアメリカでゴジラが再度映画化され、
それがなかなかのクオリティだったため、
果たして日本でもう一度作られるとしたら、
どこまでできるのだろうか?と当時思っていました。
そんな浅はかな自分に激怒したいくらい、
素晴らしい作品で大満足でした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。


古めかしい東宝のロゴが出て、

あの独特のカタカナフォントで
「シン・ゴジラ」の文字を見ると
平成ゴジラのギリギリリアルタイム世代で、
にわかファンな僕でも胸が高まる形で映画がスタート。
序盤からいきなり海上において未確認生物が確認され、
街を破壊していくシーンが描かれることにビックリ。
これをそこら辺の職業監督に撮らせたら、
くだらない前置きが用意されて、
それを散々見せられたあげくにゴジラが登場する
という流れになる可能性が高いと思います。
しかし、本作はそこを鮮やかに裏切り、
異常なまでのテンポの速さで物語を紡いでいきます。
CGでの撮影が大きく話題になっていますが、
本作がさらにネクストレベルにあるのは、
カメラの使い方と編集のキレに尽きると感じました。
冒頭から空撮、手持ちカメラ、固定のカチッとしたショットと、
バラエティに富んだ画面設計がこれでもかと打ち込まれてきて、
映像の豊かさで心が掴まれてしまう。
物語をドライブさせる仕掛けとして
細かくカットを割るのではなく、
ゴジラのシーン以外ほぼ全編で続くのがフレッシュ!
まるで物語の濁流に飲み込まれているかのよう。
それに拍車をかけるのがひたすら続く、
ゴジラ対策会議とそこで交わされる言葉の雨あられが、
本作最大の魅力だと思います。
会話自体のテンポも非常に早く、
自衛隊関連の専門用語とか山ほど出てくるけれど、
役者陣が的確にその言葉を放っていく姿は
見てて気持ちが良くなってくる。
この感覚は原田眞人監督の
駆け出し女と駆け出し男に近いな〜と思いました。
原田眞人監督つながりで言えば、
今年彼がリメイクした日本のいちばん長い日
オマージュとなっている点もオモシロイと思いました。
(詳しくはリンク先のレビューをご参照→リンク
日本で〜は戦争映画なんだけど、
意思決定をする人たちにフォーカスしていて、
本作においてもゴジラが街中で暴れるシーンよりも
会議をしているシーンの方が魅力的に感じてしまう 。
その会議にもグラデーションが存在して、
政治家、官僚の会議においては無味無臭というか、
起こっている事態に対して
極めてドライに接しているのに対して、
民間も参加したゴジラ対策会議では、
コメディ要素も含めたウェットな展開が多い。
ゆえに中だるみせずに楽しむことができたと思います。
(僕は市川実日子のキャラクターが好きでした)
肝心のゴジラはどうったかといえば、
それはもう楽しいに決まってるじゃないですか!
本作ではゴジラは人類にとって明確な悪、
災害として描かれており、平成シリーズや
2年前のアメリカ版とは一線を画しています。
ゴジラの引き起こす災厄とその対処が、
311以降に日本に大きくのしかかる社会問題の
数々を象徴している点も興味深いところ。
市街地の放射線量が上がることが
夢物語ではなく現在進行形の問題であることを
嫌が応にも考えさせられます。
また、昨年大きく話題になった自衛隊の武力行使も
1つのテーマとして存在し、
フィクションと現実を混同するなと怒られそうですが、
本作を見ると「自衛のための武力だけでいいじゃん」
と思ってしまいました。
またゴジラから逃げる人々の姿は、
「もし東京で災害が起こったら …」という
近い将来を想起させる見せ方になっていて、
非現実的な存在のゴジラが想起させる、
現実問題という意味では通常のパニック映画よりも
さらに踏み込んだ作りだと感じました。
とくに東京駅付近で活動休止するまでの
強烈な暴れっぷりと東京が焼け野原になるシーンは、
ディトピア感満載で最高最高でした。
(年寄りに将来は任せられないという意思を強く感じる、
ヘリ撃墜は心底納得しました。)
終盤のゴジラvs人類の対決における、
ギミックの数々と映像の魅力は
映画館で見てこそ味わえる醍醐味。
音楽を含めてまんまエヴァな作戦の準備から、
実際に遂行するまでの流れは胸がときめきますよねー
「何も終わっていない、これからだ」
という締め方は今の日本の状況を風刺した、
本作のこれ以上ない幕引きだと思いました。
石原さとみのAEON効果とか諸々語りたいことはあるけれど、
今年の夏は本作を絶対見た方がいいと思います。
ゴッツッズィーラァ!!

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