2016年8月23日火曜日

コンビニ人間

コンビニ人間



第155回芥川賞受賞作品。
著者の村田沙耶香さんがSession 22にゲスト出演していて、
オモシロそうだったので読みました→リンク
書かれている内容は現代社会を批評する視点を持ち、
皮肉も大いに含まれているんですが、
主人公の素直さとそれに起因する文体の柔らかさゆえに
底が見えない。だからオモシロい!
という不思議な気持ちになる作品でした。
世間の「普通」「当たり前」に真っ向から切り込む鋭さが
天邪鬼の僕にはたまらなく楽しかった!
本作を読んで真っ先に思い出したのは、
SIMI LABの「Uncommon」ですね。



普通って何?常識って何?
んなもんガソリンぶっかけて火つけちまえ

と思わず言いたくなりましたし、
世間にうまく溶け込めない主人公を応援したくなりました。
主人公が如何に変わった人間かというエピソードで、
子どもの頃に亡くなった小鳥を見つけたときのリアクションが
めちゃめちゃパンチ効いてて好きでした。
このシーンは本作に関するほとんどのレビューで
言及されていたんですが、
それは彼女の性格、考え方がここに凝縮されているからだと思います。
要するに彼女は恐ろしいまでに合理的なんですよね。
小鳥の「小」の部分や、小鳥という言葉に含まれる文脈を
感じ取ることなく、
"鳥" or "not 鳥" という0/1でしか見ていない。
したがって、この"鳥" には焼き鳥の素材である鶏も等価に扱う。
世間から見ると変わった彼女が煩わしいことを考えることなく、
社会の一部になっていると心底実感するのが
コンビニで働いているときという点が本作の白眉でしょう。
言ってしまえば工場の単純労働でも良いわけですが、
もはや無いことなんて考えられないコンビニという、
毎日のように訪れる場所を持ってくることで、
とんでもないと思える彼女の言動に親近感を感じることができる。
また、「世間」から見て突っ込みどころ満載な
36歳/独身/バイト/未婚という属性もポイントで、
彼女の友達とのやりとりはヒリヒリしましたねー
あと、「本当の自分」幻想へのカウンターとして、
主人公が登場人物の口調を細かく見ている点が
興味深いなーと思いました。
僕はすぐ影響受けるタイプなので、
オモシロかった言い回し、フレーズを自分の中に
取り入れがちなんですが、
その点をズバッと突かれてドキッとしました。
(今、一番言いたいのは真剣勝負(読み方はセメント))
言い回しを「!」や「ー」といった感嘆符で表現していて、
主人公の語尾がやたらと「!」が多く、
バイト先のコンビニの同僚たちの語尾は「ー」が多い。
これで人格を表現していくのは
メールにおける文体と近いものを感じて、
メール登場以降の文学だなーなんて思いました。
個性を尊重した社会!と喧伝されているシーンを
実社会で見かけることもありますが、
やっぱり日本は村社会属性が強く、
「〜は〜であるべき」という同調圧力が残っているし、
そこからはみ出した人に冷ややかな目を向けてしまう。
自分自身もそういう瞬間があります。
どちらが良い/悪いではなく、
他人の普通と自分の普通の違いを認識することが、
他者を少しでも理解することのはじめの一歩ということを
読んでて強く感じました。
ラストの彼女の選択は心が晴れやかになりました。
普通に縛られずに自由に生きたい、今日この頃です。

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