2016年1月20日水曜日

1998年の宇多田ヒカル


1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

このキャッチーなタイトルに惹かれたのと
色んな方がプッシュしていたので読みました。
予想を遥かに超えてオモシロかったです!
多くの20代〜30代にとって
宇多田ヒカルは思春期真っ只中の音楽であり、
いわゆる「J-POP」の中でも
特別な存在と考えている人も多いことでしょう。
本作は宇多田ヒカルがデビューした1998年の状況から、
彼女自身がどういった足跡を残したか、
というタイトルどおりの内容があります。
そこも当然オモシロかったんですが、
本作をスペシャルな存在たらしめているのは見立ての見事さ。
同時代のアーティスト、環境といった横軸の見立てが
奇跡か!と言いたくなるくらいのレベルでした。
本作内でもグレートな見立て職人として登場する西寺豪太氏の
「マイケル・ジャクソン、小沢一郎同一人物説」を
初めて聞いた時のワクワク感に近かったです。
はっきり言って1アーティストの縦軸の情報は、
インターネットを使えばかなり細部まで入手できる時代です。
海外の音楽を紹介する方は別として
日本国内の音楽を語るライター、ジャーナリストが
この時代にできる語るべきことは何か?
ってことを証明した1冊かなと思います。
宇多田ヒカルの比較軸として配置されるのが、
椎名林檎、aiko、浜崎あゆみといったメンツなんだから、
たまんないものがありましたね〜
椎名林檎のシークエンスでは
宇多田ヒカルと彼女の蜜月関係にビックリしましたし、
2人の音楽家としての違いも興味深かったです。
つまり、完全自己完結型である
ラップトップ型ミュージシャンである宇多田ヒカル。
バンドのメンバーをことあるごとに変えてきた
セッション型ミュージシャンである椎名林檎。
そんな2人を繋いだCarpentersの
I Won't Last A Day Without You までの
鮮やかさには身震いしました。



またカバー集である「宇多田ヒカルのうた」における
浜崎あゆみの「Movin' on without you」に関する論考も超興味深かったです。
2016年になってあゆのことがこんなに気になるだなんて、
ブレイク当時の自分には全く考えられないことですから、
本を読むのは楽しいなーと改めて思いました。



縦軸の部分でいうと宇多田ヒカルの
ソングライティングおよび編曲への取り組みの変遷が
目から鱗な話ばかりで興奮しながら読み進めてました。
(PUNPEEが宇多田好きなのはその辺りが背景にあるのかなと。)
ただ、本作の中で違和感を感じたのは
これからのJ-POPへのスタンスです。
本作内で紹介されている2014年のCD売上枚数を見ると、
確かにどこのディストピアだよ!という点で
筆者と意見は一致しますが、
「もう何も期待していない」と書き切ってしまうのは
いささか早計のように感じます。
なぜなら本作内で紹介されているようなシンガーたちが
また誕生するかもしれない、いや誕生すると信じたい!
と多くの音楽ファンが思っているからです。
アイドルもいいんですが、他の豊かな音楽が
日本でもっと鳴り響くことを切に願います。

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