2017年1月3日火曜日

カリートの道



新年1発目、何を見るかはその年を占うと言っても
過言ではなく1月1日の映画の日に、
君の名は。をぶっ込もうかなとか考えましたが、
ブライアン・デ・パルマ監督×アル・パチーノ!
ということで今更ながら見ました。
このコンビでマフィアものといえば、
どうしたってスカーフェイスが有名です。
特にヒップホップカルチャーにおいて、
アル・パチーノが演じる、
アントニオ・トニー・モンタナは
憧れの存在として描かれることも多いですし、
リリック、トラック共にサンプリングソースとして
今もなお輝きを放ち続けています。
who sampledというサイトで確認できます→リンク
同サイトでカリートの道を見ると、
スカーフェイスほど引用されていません→リンク
同じマフィアもので、なぜここまで差が出るのかなーと思うと、
描いているテーマが大きく異なるからです。
スカーフェイスが「破滅」ならカリートの道は「更正」
主人公のカリートは元大物ドラッグディーラーで、
友人の弁護士の力を借りて出所。
バハマ諸島でレンタカー業を始め足を洗うための
何とか最低限のお金を溜めようとする話。
ただしトラブルは向こうからやってきて、
彼は否応無しに巻き込まれていく。
極めてクリーンであろうとするカリートと、
もともとカタギの弁護士なんだけど、
コカインに毒されていく友人のクラインフェルド、
この対比がとてもオモシロかったです。
クラインフェルドを演じるのはショーン・ペン。
仁義もクソもない最低な男を見事に体現してました。
コカイン漬けのクズは最悪の結果に陥る、
ここはスカーフェイスと同じなんだけど、
英雄として描くのではなく情けない男として描いている。
ヒップホップは野蛮でナンボという側面を持つ
音楽のジャンルなのでカリートの道よりも、
スカーフェイスの方が受けるのかなと思います。
あと、カリートの道は映画として
ちゃんとし過ぎている点も
あまりフィーチャーされない理由なのかもしれません。
とくに終盤のタイムリミットサスペンスの部分は、
もろにアンタッチャブルズなシーン然り、
スカーフェイスに見られる衝動の部分がないので。
ヒップホップにおいてスカーフェイス至上主義の中、
JAY-Zのカリートの道好きっぷりがオモシロい。
1stアルバムのReasonable Doubt収録の
Biggieをfeatに招いたBrooklyn's Finesや
In My Lifetime, Vol.1〜3すべてのイントロで、
カリートのセリフを引用しています。
今の彼を見れば分かりますが、
ドラッグ稼業から足を洗いカタギとなり、
事業家として活躍している姿は、
カリートが成し得なかった未来を
彼は体現していると言えると思います。
大統領と仲が良い元ドラッグディーラー、
改めて文字にするとカッコ良さに痺れますね。
そして今カリートといえば
彼のことに触れない訳にはいかない!
フリースタイルダンジョンでもおなじみChico Carlito.
昨年末に出たアルバムが本当に素晴らしかったです。
フリースタイラー音源あんまり良くない問題を
鮮やかに乗り越えて音楽としてもカッコイイのに加えて、
今、レベルミュージックとしてのヒップホップが
どこで機能するかといえば沖縄しかない訳で、
そこをも汲み取ったデビューとは思えない完成度でした。
(カリートの出自と映画の製作年に基づいた、
MCネームという話も興味深かった→リンク
リスペクトとリサイクルに基づく、
ヒップホップと映画の関係性について考える
新年1発目から濃い映画体験。

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