2017年1月21日土曜日

甘美なる作戦

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)


年末に友人との本の座談会飲みする前に、
本屋でオススメしてもらった作品。
昨年Session22で取り上げられていたんですが、
そこまで手が回らず読まなかったものを
オススメしてもらいました。
(なお安定安心の新潮クレストブックスです。)
海外小説は骨太で読みにくいものがあったりしますが、
とても読みやすかったですし、
終盤のあっと驚く仕掛けが素晴らしかったです。
女性スパイが主人公で彼女(セリーナ)が
自分自身の人生を語る形でお話が進んでいきます。
舞台はイギリス。
教会の娘に生まれたセリーナは
すくすくと成長しケンブリッジで数学を専攻します。
高校では数学の能力はトップクラスだったけど、
井の中の蛙で挫折してしまう。
そんな中、おじさんの愛人となり、
彼の計らいでMI5へ入局することになります。
1970年代の話なので正社員で採用されてはいるものの、
男女間の格差は大きくあり書類整理の事務仕事ばかり。
しかし、ある突然Sweet Toothという作戦にアサインされ、
スパイとして働くことに。
007みたいな話を想像しがちですが、
派手な作戦を担当するのはMI6であり、
Sweet Toothはめっちゃ地味な作戦で、
冷戦まっただ中の社会で反共産主義的であったり、
イギリスのことを賞賛するジャーナリストや作家を
基金を通じて裏から支えるというもの。
彼女の担当は小説家なんですが、その彼と恋に落ちてしまう。
ここまでが大まかなあらすじなんですが、
物語の骨格を担うのがスパイの話ではなく、
彼女自身の恋愛 に関する話なのがフレッシュでしたねー
無敵状態のときもあるし、ジメジメなときもあるし、
女の子は恋愛と共に生きているなぁと思いました。
そして愛した男達の行動が彼女の人生を規定していき、
運命の濁流に巻き込まれていく姿が
愛しくもあり辛くもありました。
小説内の小説というメタ構造も興味深くて、
小説の話自体もオモシロいんですが、
見る/見られるの関係性を生かした
驚きのエンディングが待ち受けている。
人間観察という点では小説家とスパイは表裏一体なのである、
という作者の主張に深く頷かされる一作でした。

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