2017年6月27日火曜日

武曲 MUKOKU



<あらすじ>
剣道の達人だった父に幼少時から鍛えられ、
剣道5段の腕を持つ矢田部研吾。
しかし父をめぐるある事件をきっかけに剣を捨て、
自堕落な日々を送っていた。研吾のもう1人の師匠である
僧侶・光邑は、研吾を立ち直らせるため、
ラップのリリック作りに夢中な高校生・羽田融を送り込む。
融は剣道初心者だったが、
本人も気づかない恐るべき剣の才能を秘めていた。
映画.comより)

熊切和嘉監督で脚本が高田亮、
なおかつ綾野剛主演ということで見てきました。
予告編で見ていた決闘シーンが圧巻だったし、
剣にしか生きることができない、
現代の男たちの生き様がオモシロかったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

ラップブームが始まって以来、
色んな媒体で見るようになりましたが、
こういったノリの作品にまで登場することを
とても嬉しく思いました。
なんと本作は主演の1人である羽田を演じる村上虹郎の
ライブーシーンから始まるんです!
2タンテとギターのミクスチャー風なんだけど、
村上虹郎が激しいラップを披露してくれる。
その出来の云々はどうでも良くて、
主人公が思春期で音楽やってる設定の場合、
ほぼ100%ロックバンドだと思うんですけど、
そこを覆してくれているのが嬉しい。
ラップが広まっていくのは
こういった些細なところが
実は重要な気がするんですよね。最近。
本作では羽田がラップから剣道の虜になっていく姿と、
矢田部が自堕落な生活に苦闘する姿を
並行して描いていきます。
実際に剣道をやっている人が見ると
「いかがなものか!」というクレームがつきそうなくらい、
ラフな剣道のシーンがとても多いです。
あくまで競技としての剣道ではなく、
「剣の道」に魅了され、毒された人達の話であり、
僕はそこが好きなところでした。
そもそも中高生とおっさんが
最終的に剣で果たし合うという設定に
かなり無理があるわけですが、
その説得力を持たせるために用意するのが、
どっちが強いのか?というシンプルなテーマ。
とくに羽田はもともと才能があったこともあって、
強くなることにどんどん惹かれていく。
一方で矢田部は自分の剣で
父を植物状態にしてしまったことを
受け入れることができず酒に溺れる日々。
幼い頃から父にしごかれ、
ひたすら強さを追い求めた人間にとって、
その超えるべき壁を失ったときに陥る喪失感が
スクリーン全体を覆うようでした。
(ドリフかよ!とツッコミたくなるくらい
千鳥足のシーンが多かったけど。)
そして、強さを巡る人生が交差することで
決闘へと加速していきます。
僕が物足りないなーと思ったのは、
その決闘がエンディングになっていないところ。
あくまで剣に生きる男たちの人生の話であり、
アクション映画ではないことを
重々理解しているんですが、
豪雨の中で殺気ギンギンで向かい合う
2人の姿がラストだと良かったなーと。
(エンディングと同じ曲が
ドヤでかかる演出も過剰だった気が…)
ただ、この決闘後が矢田部にとって、
人生の再生が始まると言えるし、
あくまで決闘はキッカケの一つに過ぎず、
剣に生きる男の人生は続くのである。
という結論なので良いのかなと。
鳴り響く床を打つ足の音が
戦いの始まり=人生の始まりを告げる武曲なのかな?
なんて思いながら劇場を後にしました。

0 件のコメント: