2017年6月25日日曜日

ハクソー・リッジ



<あらすじ>
人を殺してはならないという
宗教的信念を持つデズモンドは、
軍隊でもその意志を貫こうとして
上官や同僚たちから疎まれ、
ついには軍法会議にかけられることに。
妻や父に助けられ、武器を持たずに戦場へ行くことを
許可された彼は、激戦地・沖縄の断崖絶壁
(ハクソー・リッジ)での戦闘に衛生兵として参加。
敵兵たちの捨て身の攻撃に味方は一時撤退を余儀なくされるが、
負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、
たったひとりで戦場に留まり、
味方の分け隔てなく治療を施していく。
映画.comより)

メル・ギブソン監督の戦争映画ということで
楽しみにしていたさので公開初日に見てきました。
第二次大戦時の沖縄が舞台なので
複雑な気持ちになる部分もありましたが、
戦闘シーンの壮絶さから戦争する意味を
考えさせられる作品になっていたので、
とてもオモシロかったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

映画の前半は主人公ドクの幼少期から
戦地へ行くまでの過程を丁寧に描いていました。
彼は敬虔なキリスト教信者で、
暴力に対して明確に拒否のスタンスを取る人。
宗教的理由で盲目的に暴力を拒否している訳ではなく、
自分を含めた身近で起こった暴力体験によって、
彼の人格が形成されていく過程をキッチリ描いているため、
感情移入しやすい作りになっていました。
父親は第一次大戦の過酷な戦場を生き抜いた人なので、
ドクが志願することに反対するものの、
彼は国のために尽くしたい気持ちが強く入隊することに。
彼は暴力をふるわないで済む衛生兵を志願したものの、
ライフル隊へと配属され銃の訓練が必要な状況となります。
ここでドクが取るスタンス、信念の強さに驚きました。
訓練なので誰かを殺すわけでもないのに、
決して銃に触れようとしない。
仲間、上官からの強烈な同調圧力があるにも関わらず、
信じていることを決して曲げない。
もし自分が同じような立場に置かれたときに、
こんな態度が取れるだろうか?と感服するしかありませんでした。
とくにキツかったのは連帯責任の罰の恨みによる、
仲間から受ける暴行。上官に問いただされても犯人を言わない。
そこまでして戦地へ行く意味って…と思わずにいられなかったです。
(主演がアンドリュー・ガーフィールドで、
自分の信念を曲げる/曲げないという点で、
今年公開された沈黙とかなり重なるところがありました)
ドクが銃も握れないタマナシの軟弱野郎だと
皆がせせら笑っていることが、
後半の地獄の戦闘シーンへのフリとして抜群。
つまり、本当の「強さ」を持つのは誰なのか?ということ。
後半から沖縄へ上陸しタイトルにもなっている、
ハクソーリッジでの戦闘へと突入していきます。
現場へ向かっている最中に先攻部隊の帰還と遭遇するんですが、
死体が荷物みたいに積み上がったトラックの絶望感が
見ていて辛かった…これから同じようにトラックに
積まれる可能性があるところへ出向くことを痛感させされる。
ハクソーリッジの断崖絶壁を登り、煙(モヤ?)で周りが見えない中、
少しずつ足を進めていると突然1人の兵士の頭がふっ飛ぶ。
そこから阿鼻叫喚の地獄絵図の戦闘シーンが始まります。
「プライベート・ライアン超え!」
という宣伝文句があって、一概に比べるのは難しいだけど、
本作の戦闘シーンも相当な迫力がありました。
僕が驚いたのは戦闘のスピード感です。
カメラの上手さなのか、編集の上手さなのか、
矢継ぎ早に同時多発的に色んなことが
異常なスピード感で起こり続ける。
勿論ゴア描写にも一切の手抜きがない。音の迫力も凄い。
異常な情報量が放り込まれることで、
自分がその場に立ち会っているかのような錯覚に陥る。
そして、一体何のためにここまでして殺し合う必要があるのか?
という強烈な無力感に苛まれて涙腺決壊でした。
さらに、こんな殺し合いの局面において丸腰で、
兵士を救出し続けるってどんな精神してんねん!と。
しかも日本側の反撃に遭って部隊が撤退した後も
1人でひたすら生きている人を捜して救出し続ける。
バレる/バレないサスペンスとしても手に汗握る展開でした。
予告編でも出ていた土から覗く、
あの兵士の目は忘れることはないと思います。
本作は沖縄が舞台で日本は悪役扱いなので、
センシティブなところもありますが、
戦争ってお互いの言い分を暴力で解決するものだと思うので、
この描写は当たり前だと思うし、
そんなことは承知して見てくださいと思います。
子どもじゃないんだし。
1作品内で両論併記できればいいけど、
戦争映画の場合は特に難しいところがあるし、
どっちかに重きを置かないと中途半端になってしまう。
なおかつ本作では日本兵の救出にも言及されていて、
バランス取っている方だと思います。
沖縄での戦闘の悲惨さを知るツールはたくさんあるので、
そちらも合わせて見ておくと理解がより深まるのではと。
ひめゆりの塔をめぐる人々の手記はオススメ)
DVDで見ても響かない部分が多分にある映画なので、
絶対映画館で見た方が良いと思います。

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