2017年6月14日水曜日

20センチュリー・ウーマン



<あらすじ>
思春期の息子ジェイミーの教育に悩む
シングルマザーのドロシアは、
ルームシェアで暮らす写真家アビーと、
近所に暮らすジェイミーの幼なじみのジュリーに、
ジェイミーを助けてやってほしいと頼む。
映画.comより)

グレタ・ガーウィグがメインで出てる!
ということだけで見てみました。
思春期の子どもと母親の距離感の取り方について、
スタイリッシュかつ心がほっこりするような
描き方をしていて楽しかったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

オープニングを飾るのは海の鳥瞰ショット。
ドローン登場以降、空撮しなくて
済むようになったこともあり、
この画角は近年多く見るようになりました。
しかし!本作では特段意味が込められたショットで、
それはラストですべて明らかになる仕掛け。
誰のどこからの視点なのか?
主人公はドロシアという女性で
40才で息子ジェイミーを授かるものの、
夫と離婚して1人でジェイミーを育てています。
父が居ない中、思春期の男の子と
どう接すべきか分からなくなり、
2人の若い女の子たちに息子の力になって欲しい
と頼み込み彼女たちはそれぞれのやり方で、
ジェイミーとの関係を築いていきます。
メンターとなるのが女性であり、
フェミニズム志向なところが特徴的。
まるで男の死を宣言するように
前の夫の車が駐車場で冒頭で燃え盛るし、
唯一出てくる男は自分の話しかしないし
女性に対して節操がない男のダメな部分を背負ったキャラ。
ゆえに本作を見るとかっこいい男になるには
女性の助言に従ったほうがいいように思えるんですよね。
男尊女卑への明確なカウンター
また、物語の進め方が大胆でジェイミーの周りにいる人達の
人物像を簡単に明らかにはしませn。
具体的には中盤手前までは説明されないので、
観客は能動的に彼らがどういった立場なのか、
理解しようとしなければならなくて、
物語へ入り込む仕掛けとして機能していたと思います。
グレタが演じていたのは写真家のアビー。
写真家として自分自身の表現を模索する姿が
オモシロいんですが、彼女には子宮頸癌の疑いがあります。
その診断結果を病院へ聞きにいくシークエンスが
とても素晴らしかったです。
ジェイミーはアビーに同行するんですが、
身近な人間の死の瀬戸際、
病気によってもたらされる事態の辛さを
肌を持って感じることになります。
まさしく他人の痛みを知ることそのもので、
ジェイミーとアビーはこれをきっかけに仲良くなる。
(アビーがジェイミーに渡すミックステープ聞いてみたい!)
ジュリーを演じるのはエル・ファニング。
傑作ネオン・デーモンでの素晴らしい演技も記憶に新しいですが、
本作でもエンジン全開で最高最高!
見た目が清楚なのでb*tchキャラを演じると
GAPがあってオモシロいんですよねー
ジェイミーとアビーの関係は甘酸…
友人以上恋愛未満で、ここまで男を追い込むのかと。。
辛い!辛過ぎる!でも嫌いじゃない!
その辛い経験を引き受けるジェイミーを演じる
ルーカス・ジェイド・ズマンが素晴らしくて、
ナヨナヨなところと強いところの押し引き、
子どもはバカではないことを体現しまくっていました。
ジュリーもまた親との関係が上手くいっていない。
ジェイミーとアビーが対照的で、
親の過干渉と非干渉のどちらがいいのか?
と考えさせられる作りになっていました。
安易にどちらがいいか、結論を出すものではないと思いますが、
僕は非干渉派かなーと思いました。
必要なときに側にいればいいじゃん!と思うから。
ドロシアも同じようなスタンスなんだけど、
やはり母親は母親でありっていうところもあって、
この辺の機微の描き方が抜群でした。
終盤、親子水入らずの関係になってからは
心にグッとくるシーンのつるべ打ちで最高最高!
家族の世界が閉じて濃密になることは
良いこともあるかもしれないけど、
近所の人も含めた共生がもたらす
風通しの良さも必要だということを感じた映画でした。

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