2015年6月29日月曜日

グローリー /明日への行進



グラミーおよびアカデミーにおける、
主題歌Gloryのパフォーマンスが話題だった本作。
ブラックミュージック好きとして、
黒人のルーツやこれまでの歩みを描いた作品は
積極的に見るようにしているんですが、
本作は後世に語り継がれるだろう素晴らしき作品でした。
キング牧師を正面切って描いたものなんですが、
ファーガソンでの事件を皮切りに
丸腰の黒人が白人警官に殺される事件が続いている、
今だからこそ刺さる内容だと思います。
(ボルチモアの暴動も記憶に新しいと思います。)
脈々と続く「権利」の話は
深く考えさせられること山の如しでした。
原題はSELMAで、これはアメリカ南部アラバマの街の名前。
そこで起こった血の日曜日事件を題材にした映画です。
キング牧師というと「I have a dream」で始まる演説が
あまりにも有名な訳ですが、彼が実際にどういった形で
黒人に権利を取り戻したのかというのは、
僕は不勉強ながら知らず…
しかし本作を見れば、彼の活動の一部かもですが、
大いに勉強になりました。
冒頭に物語のキーポイントがテンポ良く入ってきて、
ノーベル平和賞受賞、公人ではないキング牧師の姿、
有権者登録の当時の実態、教会での爆破事件。
これたすべてがSELMAに繋がっていく。
特に爆破事件がかなりの衝撃で、
作り手の相当な覚悟をビシバシと感じました。
物語は大きく分けて2つで構成されていて、
ジミー・リー・ジャクソン射殺とセルマでの行進妨害。
ジミーの方は夜中に行進してたら、
警察の暴力による制圧が行われ彼は射殺されてしまう。
彼のおじいさんとキング牧師が
病院で対面するシーンがあるんですが、
おじいさんの無念さがあまりにも辛すぎて、
泣いてしまいました…あまりにも理不尽過ぎる!
この事件を受けてセルマでの行進が企画され、
実行されていくんですが、この1回目の行進で、
またしても白人による暴力がふるわれる。
ここのバイオレンス具合はハンパじゃなくて、
本当に目を覆いたくなる地獄絵図。
同じ人間なのに肌の色が違うというだけで、
ここまで非人間的な行動を取らせる、
排外主義というシステムの怖さを改めて感じました。
あとキング牧師の人間性というか、
私人/公人のバランス問題もとても興味深くて。
マクロに見れば絶対に必要なことだけど、
ミクロに見れば分からなくなるというか、
自分がやらなくても…という気持ちになる。
どこにフォーカスを合わせるかの話。
凡人スケールに落とし込むと、
選挙に行く/行かないっていう問題になるなー
と考えたりもしました。
根本的な話だけど選挙権を得るために
ここまで多くの人間が蜂起するという状況も
日本に生まれ予め権利が保証された時代を
生きてきた僕のような人間にとっては
映画でしか体験できないことだなと思います。
ただ2015年現在、その権利も声をあげないと
守れない状況になりつつあるのは確かで、
その辺りも踏まえると今見るべき作品なのは間違いないです。
そして何かを変えるときには声をあげるだけではなく、
具体的な行動が必要となることもよく理解できました。
当然キング牧師の強烈なリーダーシップを感じる
スピーチの数々も劇中で描かれていて、
パンチラインメーカーだなと思うし、
ゆえに議会でのジョンソン大統領の引用がグッとくる。
そして、エンディングで流れる、
Common&John LegendのGloryで大団円!
見るタイミングで感じ方は異なるだろうけど、
時代を超えて残っていくだろうマスターピース!

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