2014年7月6日日曜日

DANCHI NO YUME



先日avexからメジャーデビューした、
ANARCHYというラッパーがいます。
このデビューを記念して、彼を題材とした映画が
渋谷で見れるってことで見てきました。
ちょうど彼がセカンドアルバム「Dream and Drama」を
製作、発表した頃である2007〜2008年の彼に、
アメリカ人が製作したドキュメンタリーです。
彼自身の語りや友人、家族の言葉から、
彼のルーツやidentityを浮き彫りにしていく形で、
セカンドアルバムのリリパをべースにしてるので、
Dream and Dramaの曲にそった進め方になっています。
(本作見た後にDream and Dramaを改めて聞いて泣きました。)
ANARCHYは京都出身で、向島団地という場所で育っています。
いわゆる市営団地で比較的低所得者の人が暮らすエリア。
アメリカではこういった団地はプロジェクトと呼ばれ、
80年代後半から90年代にかけてHIPHOPが勃興したときには、
こういった貧しいプロジェクト出身の人達が
日々のマッドな生活から這い上がるために
HIPHOPを始めるという構図が存在しました。
(今や億万長者のJAY-Zもプロジェクト出身です)
貧しさや犯罪から抜け出すツールとして機能した側面もある
アメリカのヒップホップとは異なり、
日本でのHIPHOPの形成や広がり方は異なる形を取りました。
ハードコアなものよりも日本独自のJ-POPと、
親和性の高いもの(リップ、キック等)から
人気が出たことはご存知の通り。
メジャーではそういった広がりを見せる一方で、
2006年頃から日本語ラップは現在に至るまで
非常に細分化していきました。
そんな中で、とんでもない「物語」をまとったANARCHYが現れた。
というのが僕の認識です。
その物語っていうのを、ラップでも表現しているんですが、
「痛みの作文」という自伝も発表しています。
そして、この物語をさらに映像化したのが本作となります。
「とんでもない」と書きましたが、
それは幼少期から貧困な家庭環境で暮らしたり、
暴走族に入ったり、日本で3例目の決闘罪で捕まったり。
(到底ここでは紹介しきれないので、
興味ある人は「痛みの作文」を読んでください。)
本作の何がオモシロいかって、
勿論本人の口から語られる話もいいんですが、
それ以上に周りの人が語る話ですよね。
家族では、ANARCHYのお父さんが出演してるんですが、
彼には母親がいなくて、お父さんが男手1つで育ててきた。
この人が親としてどうかと言われれば、
はっきりダメだとは思うけど、
FUNKYで男としてはかっこよく見える訳です。
しかも彼の周りの友人は親が両方ともいないケースも珍しくない。
んでお父さんの仕事は彫師で、
ANRACHYの体に入れ墨を入れているっていうシーンは
皆が知ってる親子の形ではないかもしれないけれど、
それぞれが歳を取ったからこその関係性、
つまりお互いをリスペクトする姿勢が見れて良いなぁと思いました。
あとはANARCHYの友人でもあり、
ともにRUFF NECKというHIPHOPクルーを組むメンバー、
および向島団地でHIPHOPをやってる若い衆のシークエンスが、
一番グッときたシークエンスでした。
それぞれがタフな状況に置かれている訳ですが、
そこでHIPHOPが果たした役割を語る訳です。
どんなにこねくり回したHIPHOP論よりもRAWで、
Directに心に響く話ばかり。
若い衆にとってはANARCHYがロールモデルとなり、
もしかしたら僕達も…と思わせる存在となっているのが分かる。
その姿は完全に「NEW YANKEE」な訳です。
犯罪にまつわるめくるめく誘惑に惑わされない
予防薬としてHIPHOPが機能しているというね〜
最大の見せ場となるのが仲間で、
出所してくる友人を刑務所まで迎えに行くところ。
豆腐のくだりは笑ったし、
帰る車内で刑務所にいる彼に向けて作った
「My Words」という曲を聴くシーンはウルっと。
HIPHOPっていう音楽はクルー文化もあるけれど、
基本的にセルフボースト、
「オレ」はこんなに凄いんだぜっ!という側面が強い。
にも関わらず、ANARCHYがラップで使う人称は
「オレ」もあるけど、「オレら」も多い。
それは向島の仲間への思いが非常に強いことの現れでもある。
お互いを必要とする関係性は萌えるし、燃えますよね!
(今回のメジャーデビューのシングルも、
そういった内容のものを持ってきています⇒PV)
ANARCHYのBack DJを務める、
AKIOが劇中で語る通り、友人としての関係が先行していて、
結びつけるためのツールが、たまたまHIPHOPだったという奇跡。
その経緯を目撃できるのが本作だと思います。
あと、よく友人とも話しているんですが、
ANARCHYがここまでの人気となったのは、
彼自身のこういった話やラップのかっこ良さもあるんですが、
本作にも登場するRYUZOという人の力無しではあり得なかった。
という点をもう少しフォーカスしても良かったのかな?と。
HIPHOPの怖い側面のバランサーとして扱われてるのは、
ちょっともったいないなと思います。

簡単に「夢が叶う」とか言うのは、あんまり好きじゃないんだけど、
ANARCHYの人生はHIPHOP云々抜きで、
めちゃくちゃカッコイイと思いますので、是非見て欲しい作品です!
最新アルバムもかっこ良くて、
書きたいこと色々ありますが、とにかくオススメです!

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