2015年4月21日火曜日

ザ・トライブ



全編セリフ無しで演者が聾唖者という予告編を見て、
これは!と思い公開初日に見てきました。
今劇場ではたくさん素晴らしい映画がかかっていますが、
僕は断然これをプッシュしたい!とんでもない傑作キタで!
見ている間、見終わった後と映画を見ることで
こんなに興奮したのは久々でした。
仰々しい話になるんですが、
映画が誕生してから100年くらい経っています。
その原点にある無声映画の意味や、
それがもたらす独特の感動を21世紀に入った今、
改めて定義し直したと言ってもいいんじゃないでしょうか。
主人公は聾唖学校の生徒で、その寄宿学校へ転入してきます。
何の変哲もない全寮制の学校かと思いきや、
年長者を中心とした不良集団(the tiribe)が存在し、
主人公もその集団への参加することになり…という話です。
冒頭この映画にはセリフも字幕もなく手話のみだという
高らかな宣言とともに映画が開幕。
バス停の引きのワンショットから始まるんですが、
本作の何が素晴らしいかって撮影、ショットの
美しさ、かっこよさなんですよねー
場面が変わるところでしかわカットは割らなくて基本ワンショット。
ステディカムで追いかけるスタイルは、
バードマンのそれと引けを取らない仕上がりです。
僕が一番好きで、本作を特徴づけているのがサイドショット。
ワンショットで横スクロールしていく形で主に2つ。
1つ目は主人公が不良集団からの手荒い祝福a.k.aかわいがりを
受けるシーンの手前の部分。
建物にところ狭しと描かれたグラフィティの数々をバックに、
tribeの幹部が主人公を連行していき、喧嘩が始まる。
完全に猿山にしか見えないんですが、
これがめっちゃかっこいいんですよねー
さらに2つ目の強盗後に tribeの皆で成果を山分けするシーン。
(強盗シーンも結構な衝撃なんですが…)
初めはメインのメンバーだけが映るんですが、
暗闇に隠れていたメンバーたちがスクロールしていくにつれ、
どんどん顔が出てきて合流するのが最高最高!
これだけでも見る価値は十二分にあると思います。
本作では一切セリフが無く手話で意思疎通が行われるんですが、
めちゃくちゃ激しいといいますか。
登場人物たちの身体性の高さが本当に素晴らしくて、
身振り手振りで感情が痛いほどに伝わってくる。
さらに音楽も一切かからないから、
劇中で発生する音は声にならない声と生活音のみ。
特にSEXシーンが生々しかったですねー
そして何気ないシーンでも、
どことなく不穏な空気が常に漂っている。
さらに驚くべきなのは本作に登場する人物が
役者でもない聾唖の若者たちということ。
これでワンショット構成で映画を作るんだから凄まじい…
劇中で展開される内容もバイオレントで、
セクシュアルなのも良くて、
極めてPrimitiveな形で男は強盗、女は売春という
「狩り」をする「tribe」なんですね。
タイトルが「tribe」である必然性が映像、内容から
ビシバシと伝わってきます。
本作を誰もが忘れられないのが中絶のシーンですよね。。
あのヒモ…怖過ぎるやろ!なんやあれ!
街の闇医者のこなれた感じもイヤでしたねー(褒め言葉)
本作に出てくる人達は皆どこか満たされてなくて、
その最たる例が主人公で金で愛を買うのが切ない。
彼が取る行動によってtribe内のruleが乱れ、
破滅への階段を着実に上っていくんですなー
終盤のエゲつないバイオレンス展開は
耳が聞こえないことを生かした演出で、
痛い音が虚空へと放たれたるのが好きでした。
映画からこんなに作り手のエネルギーを感じる作品は
なかなか無いし、これがウクライナ映画という衝撃…
世界はまだまだ広くて最高最高だ!

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