2015年4月12日日曜日

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)



アカデミー賞総なめにしたことで話題の本作。
予告編だけでなるべく前情報を入れずに見てきました。
これがアカデミー賞を取るんか…と思うくらい、
アヴァンギャルドな作品で、とてもオモシロかったです。
監督はアレハンドロ・G・イリャニトゥという人で、
以前から好きで結構見てるんですが本作が一番好きかも。
何といっても全編ワンショットの映像にやられちゃうし、
負け犬のOnce Againものでありつつ、
クリエイターと批評の関係について
SNS全盛の現況を踏まえて描きつつ、
自らが「何者」なのか?という問いへの答えを導きだす。
それでいてコメディとして楽しい作り。
こんなの見たことない!と興奮しまくりでした。
90年代にバードマンという
ヒーローアクションでスターとなったリーガンが主人公で、
落ちぶれてしまった彼は何とか再起しようと
NYの劇場で舞台を行うことにするんですが、
決して演技派ではない彼が演劇の世界に飛び込み、
紆余曲折しながら上映まで漕ぎ着ける舞台裏を描いた作品。
はじまってすぐに超かっこいいフォントで、
作中の舞台の原作として使われている、
Raymond Corverのラインを引用して話がスタート。

And did you get what you wanted from this life, even so?
I did. And what did you want?
To call myself beloved, to feel myself beloved on the earth

そしてリーガンが宙に浮いているところから映画は始まります。
えっどういうこと?と考えるのも束の間、
ここからワンショットで映画が終わるまで
舞台製作の裏側を描き続けていきます。
画面上および話の内容を含め前半は情報量がとても多く、
それに付いていくので精一杯でしたが、
話が分かるとぐいぐい引き込まれました。
(2回見るともっと楽しめる気がしている)
ワンショットのように見えますが、
IMDbによると16カットで構成とのこと。
ヒッチコックのロープと同様、
背中とか暗闇にフォーカスし一旦画面を真っ暗にして、
カットを割っているのかなーと思います。
ワンショットっていうだけでも十分なんだけど、
こんなに滑らかに撮影されていることも驚異!
まるで自分が幽霊になって、
劇場を徘徊しているような感覚に陥ります。
基本的には実時間どおりに物語が進むんだけど、
日にちが変わるタイミングのシームレスさも素晴らしく、
「昼と夜の境目が溶けていく」という表現がピッタリ。
(宇野維正がパンフレットに書いていました)
この撮影を務めたのがゼロ・グラビティも撮った、
エマニュエル・ルベツキという撮影監督で、
予告編で彼の名前が出ているのも納得の仕上がり。
あと音楽も特徴的で全編に渡って、
即興的なドラムが重く鳴り響続ける。
Jazz Drum Breaks!がひたすらかかっているんだから、
HIPHOP好きとしてはテンション上がりまくり。
題材が演劇、improvisationを彷彿とさせる音楽、
そしてワンショットの映像から導き出されるのは、
人生が一度切りで一方通行であることに他ならない。
まさにYou Live Only Once(YOLO)な訳です。
作り手と批評の関係はSNSを絡めている点も含めて、
CHEFに近いものがあります。
前半にあるリーガンの付き人をしている娘が喝破する
承認欲求にまつわる話はなるほどなーと。
昔はfameが生業の人だけが気にしていたことだけど、
今や皆がインターネットを通じて、
自らが何者かを発信しfameを追い求める。
これがダメ!っていう描き方ではなく、
一長一短ですよねというバランスが好きでした。
そして、リーガンが「これしかない!」と演技にかける姿、
すなわち、それこそがタイトルにあるignorance(無知)であり、
そんな彼にしかできないことがある。
東京ポッド許可局の言葉で言えば大ボケのスタンス。
俳優陣が本当に素晴らしくて、
主演を務めるのはマイケル・キートンしかり、
エマ・ストーンはジャンキーな姿でもカワイイし、
何と言ってもエドワード・ノートンが最高最高!
スキルはピカイチだけど、
超自分勝手な姿は何度も笑わせていただきました。
(パンツはいてないくだりが好きです。)
終盤の幻想展開は開放感あって好きだし、
オレがオレの世界を支配する!という決意が
かっこいいなーと思いました。
親子物語でもあるんですが、
ラストの収め方がワビサビ効いているというか、
3人で仲良くってことではないのが良いなと。
エマの顔ですべてを物語る演出もナイス!
映画館で見ないと損するよ!

追記:
KREVAの最終回という曲が
この映画にドンピシャだったのでサビの歌詞を転載します。

終わりだなんて言わないで欲しい
まだこれからさ
最終回の中身は自分で決める
いいだろ?
どんなに笑われても譲れないセリフ
吐き出してやるさ
最終か回の予定は立てない
今のところ

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