2024年2月19日月曜日

証言 落合博満 オレ流を貫いた「孤高の監督」の真実

証言 落合博満 オレ流を貫いた「孤高の監督」の真実

 嫌われた監督が超絶オモシロかったので読んでみた。選手、コーチといった周辺人物の証言により落合像がさらにくっきりと明らかになる素晴らしいサブテキストだった。マスコミやファンの視点とは密度が高いインサイダーの話は一次資料として貴重なもの。そして既存の監督像や野球のセオリーを裏切り続けて強いのだから多くの野球ファンを魅了して当然だよなと改めて認識した。

 冒頭、落合政権時の成績を振り返るのだが、その圧倒的な強さを改めて認識するとともに今リリースされたことで現監督の立浪史観が含まれていて興味深い。ここ数年の成績不審、謎の采配やトレード、果ては米騒動まで。立浪への懐疑的な視点は多くの野球ファンが共有しているところだが、改めて選手としての圧倒的な成績を見せつけられるとミスタードラゴンズの名は伊達じゃないと思わせられる。今年は頑張って結果出して欲しい。

 インタビューに収録されているのは当時の主力である川上憲伸や岩瀬、山本昌など投手が中心。落合政権の象徴であるアライバ、森野といった野手サイドのインタビューはFAで移籍してきた和田のみ。野手関連はほとんどコーチでカバーされている。若干残念な気持ちありつつコーチサイドの視点で地獄のキャンプ内容の実情が語られており興味深かった。時代の趨勢としてオーバーワークは敬遠されがちだが、当時の選手達は当たり前だったようだし選手寿命が延びたと和田は言っていて練習量が多いことも悪いことばかりではないのかもしれない。

 勝利至上主義で選手の自立を促す。プレイしている選手たちのやる気を引き出すことにフォーカスしているので、実際のプレイヤーたちは思った以上に戸惑いがなかったという点が共通している。特に伝説となっている完全試合直前での山井の交代は納得している人が多いのも印象的だった。また川上憲伸がのちにメジャーに行った際に既視感があったのはすべて落合の言葉だったというのも新たな視点で興味深かった。つまり既存の日本の野球のスタイルから逸脱していたが、選手を第一に考えたアプローチを取っていたとも言える。

 CBCの番記者の特別寄稿も興味深い。選手時代に番記者されていた方の寄稿で、落合が使っていたバットを科学的に分析していき、彼がどれだけ正確にバットの芯でボールを捉え続けていたか明らかにするくだりは理系的アプローチでかなりオモシロかった。そんな彼のラインが落合を象徴しているように思えたので引用。

落合博満に対する人物評はさまざまである。褒め言葉もあれば、逆に厳しい意見もある。私はそれを”地層”なのだと思う。幾重にも重なる落合博満という名の地層。どの深さの、どんな土に触れるかによって感じ方は違う。でも、地層自体はまったく揺るぎない。

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