2023年5月7日日曜日

母という呪縛 娘という牢獄

 

母という呪縛 娘という牢獄/齊藤 彩

 友人のおすすめで読んだ。9年間も大学受験を娘に課した母親が娘に殺害されて遺体をバラバラにされて遺棄された事件のルポルタージュ。エグい話なのでページをめくる手が止まらなかった。いわゆる毒親に該当する話であり、子どもを自らの所有物であると考えてしまうのはどんな親でも遭遇する場面だと思うので自戒していきたい。

 著者は元共同通信の記者で若い女性というのは本著の特徴だと思う。こういう殺人事件のルポの著者は年食った男性が多い中、カバーを含め今ままでの切り口と違うように感じた。著者自身の考えや意見は相当抑えられており、あくまで事件にスポットを当てつつ陰惨な事件の背景を加害者である娘の手記を中心に明らかにしていく。この娘と同世代なので、どうしても自分の学校遍歴、受験時代などを嫌が応にも想起するし同じ関西圏ということもありリアリティをもって迫ってきた点があった。受験しているときにすべてがテストで決まっていく辛さがフラッシュバックした。

 大半の親がここまでのハードコアさ、狂気性は持ち合わせてないと思うが、彼女の見せる邪悪な要素はみんなの心に少なからず巣食っているはず。だからこそ背景に何があったのか取材して欲しかったとは正直思う。肝心の当人が亡くなっているので真相は闇の中であり、分からないゆえの怖さというのも理解できるが、単純な子どもを使った学歴リベンジっていうレベルで片付かないと思うから。終盤、家族という檻が反転していく様はまるでドラマのよう。家族に死ぬほど苦しめられたのに最後は家族がいてこそという結論になっている点がアイロニックに感じた。

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