2023年5月5日金曜日

暇と退屈の倫理学

 

暇と退屈の倫理学/國分功一郎

 超絶ベストセラーで、色んな人が色んなところで紹介しており、いつか読みたいと思っていた。情報量がパンパンとなっており一度読んだだけで全容が把握できた気はあまりしない。ただ人生において暇と退屈についてこれだけ真剣に考える時間が取れたことに本著を読むことの意味があると思う。また自分のような哲学初心者にも優しい構成なのが助かった。

 古今東西の哲学者の考えをさまざまに引用しながら、それについて著者の論考をぶつけていくスタイルなのが新鮮だった。正しい根拠として引用するケースはよく見るけど「この考え方は理解できるか、ここは皆目見当違い」と鮮やかに喝破して比較的平易な言葉で自分の考えを伝えてくるのがかっこいい。そして過去の人間たちの叡智の偉大さ、つまり哲学の深淵さにひれふすしかなかった。

 とにかく目から鱗な話の連発で他の書籍ではなかなか知れない範囲をカバーしていると思う。遊動→定住による退屈の発生する過程、暇プロフェッショナルの有閑階級と暇アマチュアの大衆という対比、消費社会観点でのファイトクラブに対する考察などなど枚挙にいとまがない。これらの長ーい前振りが色々あって最後に退屈の仕組みを細かく解きほぐしている点が本著最大の読みどころだった。一口に退屈といってもそこにはグラデーションがあるため3つの形式に分ける。それぞれの形式ごとの退屈のあり方をさらに細かく説明していく点が興味深かった。とくに「決断」に身を任せることの快感と危険性について改めて気付かされたし、我々は退屈を生きているのであり、それが人間たるゆえんなのだ、という話は勇気もでた。ただ本著を退屈しのぎに読んでしまい議論の流れをちゃんと終えていないのでいつかメモを取りながら再読したい。

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