2023年5月19日金曜日

電車の中で本を読む

電車の中で本を読む/島田潤一郎

 夏葉社の島田潤一郎氏による本にまつわるエッセイ集。夏葉社、サイドレーベルの岬書店含めて魅力的な本がとても多くてよく読んでいる。それらの仕掛け人である著者の本を初めて読んだのだけど、とてもオモシロかった。タイトルからして本好きは間違いなく刺さるのは当然のこと、本を通じた生活や社会にまつわる考え、提案がどれも優しいかつ鋭くて読み終わるのが惜しかった。

 4章で章立てされており、それぞれテーマを用意した中で本にまつわる話をそれぞれ展開していた。毎回1冊の本を紹介しているのだけど、本のレコメンドがめちゃくちゃ良くて本著を読むだけで読みたい本がめっちゃ増えた。それはマイナーなものだけではなくメジャーなものまで。特に万城目学について、雑な映画化によって何となく敬遠していたけど、著者の紹介でとても読みたくなった。どのエッセイにもまっすぐな本への愛が溢れていて、自分が天邪鬼なこともあり余計に刺さった。

 また絶賛子育て中なので、第三章の「子どもと本」は子育ての中における本、読書にまつわるエピソードが読んだことのない視点の連続で興味深かった。この章に限らず本好きに刺さるパンチラインがそこかしこに仕掛けられており、その量と質は今年、いや人生レベルでトップクラス。本が好きな人はもちろん万人に勧めたい本にまつわる本だった。最後にラインを引用。

私たちのこころのなかにある、忘れてしまうような些細なこと。けれど、たいせつなこと。それらをあたらしく言葉にしようとする試みを、文学と呼ぶのだと思います。

これらの小説を支えているのは、私たちが日々の生活のなかで忘れてしまうような小さな出来事やこころの動きです。ぼくはその泡沫のような何かに、人生のいちばん魅力的なところがあるのではないと思うのです。


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