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| 音信普通 ONSHIN-FUTSUU/モトムラケンジ、早坂大輔 |
文学フリマのBOOKNERDのブースで入手して読んだ。音楽が通底するテーマとしてありながら、さまざまなトピックを横断的に往復書簡で語っている点が興味深かった。
モトムラ氏が京都のレコードショップ「RECORD SHOP GG」を経営されている方で、早坂氏は岩手のブックショップ「BOOKNERD」を経営している。本、レコードの販売を生業にする二人による往復書簡となっている。見開きページで、本文内で紹介されるアルバムのジャケットが左側に、文章が右側にあるという構成。このアルバムジャケットがそのままではなく、矢吹純によるスケッチとなっている。これが本当に至高…!行きつけのコーヒーショップのラベルも矢吹氏によるデザインで馴染み深いのだが、それも含め彼が得意とするのはブルースを感じる絵だ。しかし、今回は時代も国境も超えて、さまざまなアルバムのジャケットが描かれており、どれもこれも味わい深すぎて、ページをめくるのがとにかく楽しい。あんまりネタバレすると、読む楽しむが減るのでここでは詳細は書かないが、ONRA『Chinoiseries』は青春のアルバムであり、あのジャケが矢吹タッチで書かれていてブチ上がった。
ベタからニッチなものまで、幅広く紹介されており、音楽ガイド本として最高。しかも、振りかぶって音楽を紹介するのではなく、何気ない会話の中の一つとして紹介されている点に、音楽は嗜好品でもなく生活の一部なのである、というメッセージを感じた。
新譜チェッカーとしては、新譜は「新しい」というだけで聞くきっかけがあり、今年のリリースのアルバムだと一旦聞いてみる。しかし、旧譜は何かトリガーがないと、なかなか聞こうとするきっかけがない。そういった観点でいえば、本著はトリガーだらけで前述のONRAを含めて聞き返したいアルバムもあったし、新たに知ったアルバムもあった。一番強烈だったのは、ANDRÉ 3000のピアノスケッチ集。音楽になる前の芸術の塊みたいなアルバムだからぜひ聞いてほしい。
二人のテーマは多岐にわたり、タイトル通り「普通」の話が展開される中でも、やはりクリエイティブ論や、モノを売ることに関する内容が興味深く映った。二人とも小売業だけではなく、レコードや本といった自身のプロダクトも手がけるからこそ、今の時代にモノを作って売ることに対する矜持がふんだんに語られており、私もZINEを細々と作って売っている身として刺激になった。特にこのラインにハッとした。
止むに止まれず、衝動としての音楽や文学をやっている人というより、みんなある程度オールマイティーに、経済のアルゴリズムに乗っかって音楽や文学をやっている。昔はただギターを鳴らしていればよかったのに、今ははじめからマネジメントとか、経理とか、オンラインストアに音源をアップするとか、そういうものを兼業することが当たり前になってしまったことが、結果的に自分たちのやっていることをつまらなくしているとしたら?
今の状況は不要な中抜きがなくなったことで、歓迎すべき状況だと思っていたけれど、インディペンデントに誰でもなんでもできるようになった結果、そこでクリエティビティが削がれている可能性は思いもよらなかった。そして、アルゴリズムに動かされて何かを作っているだけ、という強烈な言葉は、これからの時代、うちなるパッションをどれだけ大切にできるかが鍵だと感じた。
そんなBOOKNERDさんにて弊ZINE、お取り扱いいただいております。合わせてチェックくださいませ。宣伝エンディングで大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いします。
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