2025年2月8日土曜日

トーフビーツの(難聴)ダイアリー2022

トーフビーツ(難聴)ダイアリー2022/tofubeats

 ポッドキャスト番組のチャッターアイランドの最新回で、著者がゲスト出演していたので、積んであった本著を読んだ。日記というか、もはや業務日報の様相を呈しており一気に読み終えた。

 神戸の書店1003の特典として、前作リリース時に提供された『reprise』の延長戦であり、2022年の日記として再構成された一冊となっている。本作はZINEなので、いわゆる街の書店では取り扱いがないからか、前作以上にアクセル全開で音楽業界での仕事を中心に著者の思うことをズバズバと書いている。ここまで自分のスタンスが明確にあり、それを開陳できるアーティストがどれだけいるのかと前作に続いて感じた。

 それは著者が会社を経営する社長であることが大きいだろう。メジャーレーベルとディールしつつ、一企業の社長としての振る舞いの数々からは、自分で会社を持つことの苦労が垣間見える。とくに終盤に出てくる大トラブルは具体的な言及はないものの、契約周りのトラブルであることが推察され、自分も仕事で似たようなトラブルを今抱えているので、心構えが参考になった。オンオフの切り替えは比較的できるほうなのだけども、大きなトラブルになるとオフのときも喉に小骨が引っかかっているようで気持ちが悪い。だから、エビデンスを集め、色んなシミュレーションを重ねることで、自分の心の平穏を取り戻していく必要があることを再認識した。(しかし、著者が言うところの正常性バイアスにどうしても寄りかかってしまうところもあるのだが…)にしても、DJ QとのコラボEPがリリースに至るまでの艱難辛苦をみるにつけ、音楽という権利ビジネスはリリースするまでにリスナーには見えない苦労がたくさんあることに気付かされたのであった。

 アーティストの日記においては、どのようにクリエイティビティを発揮しているか、その過程を追うことができる点に魅力がある。本著でもそれはいかんなく発揮されており、C.O.S.Aにビート提供を頼まれたけど、しっくりいかなかった話とか、一ヶ月で30曲もサントラとして書き下ろすことができるとか、tofubeatsの音楽家としての側面をたくさん知ることができる。そういった活動の様子と私生活がシームレスに読める点が日記のいいところで、先日のポッドキャストでも愛妻家っぷりを感じていたが、本著でもパートナーとのエピソードが多く収録されている。差し迫った仕事のあいだの閑話休題として紹介されるパートナーとのほっこりエピソードから、犬を含めてパートナーの存在は著者にとって大きいことが伺い知れた。2023もしくは2024もリリースされて欲しい。

0 件のコメント: