25歳からの国会: 武器としての議会政治入門/平河エリ |
衆議院が解散され、選挙が月末にあるということで長らく積読していた本著を読んだ。国会、選挙などの仕組みについて、わかっているようで、わかっていないことがたくさんある現実に気づかされた。なお「25歳」とタイトルにあるが、これは被選挙権を得る年齢のことで他意はないようだ。Age ain’t nothing but a numberってことで、今から政治の勉強をしても何も遅いことはない。
日本の国会や選挙の仕組みについて、教科書のように淡々と説明されても、なかなか頭に入ってこない。しかし、本著では「こんな疑問に答えます」という形で、近年話題によく上がる質問に対して諸外国の制度と比較しながら解説してくれており理解しやすかった。また、過去の国会答弁を引用している点もユニークだ。それら各章でを読むたびに、今の政治家の答弁がいかに誠実ではないか、時代を逆行しているようで辛い気持ちになった。
会期制を中心として日本の時代遅れっぷりが目につく。著者も言及しているとおり、民意が100%反映されるような仕組みは実現不可なのだが、納得度が高いものを求めることが必要だろう。社会がこれだけ変化しているにも関わらず、選挙や国会の仕組みがほとんど変化していない。その歪さに最適化している自民党が勝ち馬に乗っているままだと変わる可能性は低い。選挙が権力の附託であることを改めて認識させられた。
日本は小選挙区が中心で議員個人に投票するものの、議員が一個人でできることには限界があり、政党によるガバナンスが基本となっている。であれば、すべて比例枠でもいいのでは?と考えてしまうが、そうなると今の小選挙区の死票が効力を持つから自民党は困るのだろう。自民党が長期政権化し、それに対抗する野党の不在により、野党の言動が問題視される場面をよく見かける。それは野党が国会の制度上で対抗するために取れる言動だと初めて知った。たとえば自明に思える質疑も、それによって政府側の問題点を浮き彫りにするという意味がある。その意図を知らない人からすると時間潰しにしか見えないのかもしれない。(時間潰しも一つの目的なので、両方の意味があるのかもしれないが。)ただ、制度に沿ったものとはいえ、民衆の理解を得られなければ本末転倒なので、やり方は考えてほしいところだ。
本書の最大の特徴は「ジェンダーと国会」という章だ。女性議員が諸外国に比べて極端に少ない背景について考察されている。実は国会や選挙自体が、家制度を未だに色濃く残しているものであり、それと女性議員が少ないことを繋げており興味深かった。なかでも選挙における名字の重要性を読むと、選択的夫婦別姓を嫌がる理由も透けて見える。つまり、選挙において名字は一つの看板であり、それを一種形骸化させることへの警戒心が働いているのではないかと。未だに世襲が多く占める状況を抜け出し、議員個人の資質に対してジャッジできるような有権者がいなければ、状況は変わっていかない。また、同性婚の憲法解釈については知らないことばかりだった。「「両性の同意に基づいて」の文言があるから同性は不可」という安直な理解ではないことが丁寧に説明されており勉強になった。月末選挙!民意!示そう!
0 件のコメント:
コメントを投稿