2023年11月7日火曜日

2023年11月 第1週

DONG JING REN by Jinmenusagi

 今年のベストアルバムきたか?くらい今週ずっと聞いていたJinmenusagiの新しいアルバム。コンセプト、ビート、ラップどれを取っても一級品で彼の長いキャリアの中でも一番好きなアルバムとなった。日本のヒップホップでドリルが取り入れられるようになってしばらく経つが、ドリルの肝になるのはベース、キックであり、そこだけは外さなければ形式として成立するゆえのアプローチのオモシロさ。とにかく新鮮だし、セルフプロデュースでこれ作っているのもすごい。シーン的にはとにかくジャージーというフェーズにあるが、楔を打つかのようにドリルのアルバムが出たことも嬉しい。現状のシーンに対するカウンターもリリック内に含まれており等身大を訴えているのが印象的だった。また逆輸入のコンセプト、つまり海外から見た日本という視点で日本の考えているのは伝わってきたし、昨年のSKOLORとの共作アルバムからさらに進んだ独特のアジア感がかっこいい。Denzel Curryのように日本を愛してくれて、その要素を取りこんで発信してくれるのも当然嬉しいけど、こうやって自国のカルチャーのオモシロい部分をレップするのは大切なことだと思う。(ナショナリストではないけど)
 あと本当に今更だけどラップが超うまい…今どき珍しい固有名詞連発なのが最高。ゲーム関連を筆頭に自分の語彙の完全に範囲外なので、その名詞を調べてもう一回歌詞みて意味を理解してニヤニヤ。みたいなことが何回もあった。複雑なフローはあえてせず、ビートに合わせたラップの軽やかさとうまさが本当に際立っている。今回のアルバムのビートはラップがうまくないと音が派手ではない分、物足りないものになる。ゆえに客演はシーンきってのスキルメーター振り切れている若手の面々というのは納得だった。POP YOURSを含めて若手の活躍は今回のアルバムを作る動機にもなっているそうで、彼は全く飲まれてないので目的を達成されていると思う。完全に桜庭〜好きな曲を選ぶのめっちゃむずいけど、やっぱり”Opp Otaku”

Mother by BUPPON

 BUPPONがKojoe のJ.Studioからアルバムをリリース。なんてウェルメイドで素晴らしいアルバムなんだと感心させられた。先行シングルのBOSSを迎えた曲はカントリーサイドからの狼煙のような曲で2人のパッションがビシバシ感じる曲だったが、アルバムはもっと落ち着いたトーンの仕上がりになっている。彼のリリシズムがこれでもかと炸裂しているのはこれまでどおり。過去作は1枚通して聞くとtoo much感が否めなかったけど、今回はちゃんと抜けのある作りになっていて1枚通して楽しめた。特にKojoeとの”HONDAI”で仕切り直す点が好き。いきなり具体性のある描写へ行く前の抽象的な表現に意味があると思う。タイトル曲の”Mother”以降は亡くなったであろう母との思い出に関する曲で構成されていて、彼のリリシズムが炸裂しまくり。今回初めて知ったyamabequoのビートはいい意味で癖がなくリリックが映えながら感情が昂った。BUPPONの歌もいい。ガキくさいFLEXがしょうもなく思えてくる日本のヒップホップのアルバム。好きな曲はやっぱ”Mother”

SCRAP by SHO-SENSEI!!

 SEEDAが参加した『THE BLUES』というアルバムは結構聞いていたSHO-SENSEI!!の新しいアルバム。Singing Styleのエモラップというスタイルだと国内でもトップクラスだと思う。十代の頃に出会っていたら、間違いなく好きになっていたと思う。ヒップホップ側からRADWIMPS的なアプローチしているのが興味深い。有名なラッパーを青田買いして意義のないfeatを繰り返している本家には彼のような存在を知ってほしい。彼のパートナーと言っても過言ではない10PMのビートがとにかくフレッシュでかっこいい。Airpodsだとダイナミズムを感じにくかったけど、スピーカーでしっかり聞くとドラムがデカい音で最高。特に”ミシン”という曲はめちゃくちゃいかつい。エレキギター、ストリングス、ボーカルのカットアップなどがてんこ盛りなんだけど調和していて超かっこいい。この曲だけドラムは生で叩いているのは、ライブサポートもしているAge factoryのドラマーの人。この路線は日本産のヒップホップと言えると思うのでどんどん拡張していってほしい。好きな曲は当然”ミシン”

No.00 by Olive Oil

 Febbのバースが入っていると知り聞いたOlive Oilのニューアルバム。ボーカルをフィーチャーした曲は3曲だけで残りはインスト。最近だとオジロのアルバムにビート提供していたことも記憶に新しく聞けばOlive Oilと分かるビートの数々で楽しめた。やっぱドラムの音はデカいに越したことはないし、その辺のローファイビートメイカーと一緒にすんなよという気概を感じる。1曲で6分、7分のインストが入っているのもオモシロい。REMIXや上音の弾き直しなど既存の曲の再構築しているのも特徴的で紅桜の”悲しみの後”のREMIXである”Favorite Song”は彼の出所を祝う叙情性があって素晴らしかった。Aaron Choulaiが5lackの”早朝の戦士”のメロディを弾いている”TO BE CONTINUE SHAKE FINGA”が好きな曲。タイトル的には次がありそうなので今後も楽しみ。

POP OFF by pH-1

 pH-1がmixtapeをリリース。昨年のアルバムも素晴らしかったけど、今回のEPもかっこよかった。本作はバックDJを務めるSprayがすべてのビートを担当している点が聞きどころでバリエーション豊富な引き出しをこれでもかと披露している。Featは韓国に閉じずにグローバル化しているのも特徴的。CHIKAというのが個人的にはかなり意外な人選でビックリした。韓国のラッパーはoygliが参加。来年あたりにアルバム出て、それがマスターピースになるのでは?と予想しているほど今アップカミングなラッパー。彼との曲はDilla系のビートで好きだった。声の色気とフローが最高なんすよね。前作のアルバムも相当完成度高かったけど次のアルバムも楽しみになった。好きな曲は”COSIGN”

Occam’s Razor by Deepflow & JJK

 DeepflowとJJKによる共作EP。DeepflowはVMC解散後、30への加入、『Dry Season』というアルバムのリリースなど精力的に活動している。恥ずかしながらJJKを今回初めて知ったのだけど、とてもかっこよかった。タイトルはオッカムという学者が提唱した「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針のこと。必要最低限でかっこいいだろ的なニュアンスだと言える。ファンキーなビートが多くて最近のアルケミ的なアプローチのビートが多く、そこで2人がスピットし倒してる感じ。好きな曲はオルガンとベースがいかついタイトル曲”Occam’s Razor”

An Ever Changing View by Matthew Halsall

 Apple musicのレコメンド精度も前よりはマシになってきていて、Kammal Williams繋がりでレコメンドされたUKジャズ。本人はもともとトランペッターでそこからコンポーザーとして楽曲を制作するようになったっぽい。Alice Coltrane,Pharoah Sandersの影響を受けてスピリチュアル志向があるらしいのだけど、この作品ではそこまで感じなかった。トランペットをベースにしたジャズに対してエレクトロニカ、ソウルなど色んな要素がごった煮になっているのだけども、本当に各楽器のアンサンブルが美しくて聞き心地がよい。毎朝のBGMとして最高だった。好きな曲は”Natural Movement”

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