2023年11月14日火曜日

2023年11月 第2週

THE SOLOEST by SINCE

 韓国のフィメールラッパーSINCEの2ndアルバムがリリース。SMTM10で決勝まで残って惜しくも優勝を逃したが一番プロップスを獲得したラッパーだと思う。とにかくラップがめちゃくちゃうまいしかっこいい。「フィメール」 と書いたが彼女の場合、その説明は不要だと思っている。女性であることをレップするよりも純粋にラップが彼女の一番のアイデンティティになっているから。どこかのレーベルに所属するかと思いきやインデペンデントとして活動しているのもかっこいい。CODE KUNSTの曲がオープニングを飾り、次に盟友Lean$mokeのビートでブチ上がる流れからして最高。Featも適材適所な人選で久しぶりに聞いたHash Swanのトーンがめっちゃかっこよかった。前半はハードモード、後半はメロディアスな展開になっているがSinging Styleに流れずあくまでラップにフォーカスしているところが彼女を信頼している点でもある。好きな曲は”EST” SINCEはビデオの字幕に毎回日本語を用意してくれており、これはYoutubeの統計上、日本から見ている人が多いからなのでは?と思っているので、早々に来日してくれ!!

SICHIMI by SUMIN

 SUMINによるEPがリリース。最近はプロデュースでよく名前を見る中、久しぶりの自身名義での作品。これまた間違いない最高の出来だった。ミニマルな音の構成なんだけど、クールなファンクネスが内包されている。SUMINの好きなところはドラムの音色で、ここにもミニマルさを感じる。ここ数年のLouis Cole、Sam Gendel的なものとK-R&Bの融合の結果とでも言えばいいか。好きな曲は”KIKI”

Skyblue Dreams by HD BL4ACK

 HD BL4CKの新しいアルバムはQのDaytonaからリリース。ビートメイカーの中でも相当多作の部類で今年だけでアルバム4枚も出てる。もともとLBNCというChaboomやLeebidoもいるレーベル所属だったけど今回で移籍ということなのか、ワンショットでのリリースなのか。今回の作品は両方のレーベルのコネクションを活かしたラッパーが参加している。LBNCのラッパーがオーセンティックなスタイルが多いこともあり、それに合わせたビートのスタイルだったけど、Daytonaの若手向けにはちゃんと今っぽいビートを提供していて引き出しの広さを感じた。締めのQの曲がとても好きなんだけど、シーンの現在の実力者だと個人的に感じる3人が集合した”Love”が好き。

LEAN$MOKEISMYPRODUCER by kitsyojii

 kitsyojiiが少し前から始めた特定のプロデューサーと一緒にEPを作るシリーズ。今回はLEAN$MOKE!個人的には2023年最も活躍しているプロデューサーだと思うし、実際に提供されているビートのクオリティが高くて今回も最高にかっこよかった。kitsyojiiは基本オートチューンかけたラップでビートとの相性良し。好きな曲は上音の治安が悪くてMeek Millの声が聞こえそうな”gym”

CHED&L by Way Ched & TRADE L

 Way ChedとTRADE LによるEP。Way Chedの前作『It's Your Way』に収録されたTRADE L、OSUNによる”Rewind”が大好きだったので必然に感じるコラボレーションだった。結果としてケミストリーが炸裂していて全曲最高、捨て曲なし!TRADE Lのメロディセンスが本当に素晴らしくて、それを支えるWay Chedのビートという感じ。韓国ヒップホップのSinging styleの最高峰を味わいたければTRADE Lを聞けばいいと言ってもいいくらい完成されつつあると思う。好きな曲は2023年客演王のStreet Babyを迎えた”NO BRAINER” Singing styleでなくてもラップかっけ〜

Knower Forever by KNOWER

 Louis Cole とGenevieve Artadiによるユニット、Knowerの新作アルバム。Flip side planetの新譜紹介回で知った。(毎回チェック漏れをカバーしてもらっていて大変ありがたい…)プリンスなきあと、シンセ使ったミニマルファンクな路線を受け継いでいる筆頭はLouis Coleだと思っているのだけど今回もそれを体現した内容でかっこいい。Knowerの場合は女性ボーカルなのでポップさが増して個人的にはLouis Cole単品よりも好き。Bandcamp でクレジットを見るとまさかの打ち込みなし!ストリングスとかコーラスまで信じられないくらいコストをかけていてDTM全盛の今こんな作品は見ない。その割にミックスとマスタリングはLouis Coleが手がけていて、生楽器ゆえのダイナミズムをそこまで感じさせない謎の仕上がり。好きな曲は”Real Nice Moment”

New Growth by Jesse Boykins III

 これもFlip side planetの新譜紹介回で知った。もともとThe Internetの客演で存在を知り『Love Apparatus』というアルバムは以前に聞いていた。久しぶりに聞いたら、めちゃくちゃいい…恋愛にまつわるリリックが多い中で、ファルセットによるメロディの美しさと重心のしっかりしたビートの数々がアフロビートからバラードまで幅広く配置されておりアルバムとしての完成度が高かった。好きな曲は”Convo”

The Night Shift by Larry June & Cardo

 来日を控えるLarry Juneの新しいアルバム。(デイイベントで見たかった…)USのラッパーの中では相当なハードワーカーなのは間違いないし、ここ数作でさらにかっこよくなっていて名実ともにトップラッパーだと思う。今回はCardoというプロデューサーとの共作になっていてタイトルどおり強烈に都会の夜を感じるビートにレイドバックしたフローでラップしていくのが最高。まさにウェッサイ〜前作とのアルケミとのタッグは最初うーんと思いつつも後からめっちゃハマったのに対して、今回は初速から最高なので、やっぱこういうドラムがガッツリ主役なビートが好きだと再認識した。FeatもユニークでDej Loaf、Jordan Ward、ScHoolboy Qあたりを呼んでいる点にグッときた。彼の好きなものが伝わってくるし、featに必然性を感じるケミストリーがどの曲でも起こっていた。

Heaven knows by PinkPantherless

 気づいたらスターダムの道を歩んでいたPinkPantheressのアルバム。UKのトレンドとなっているダンスミュージックをポップに解釈して彼女のシルキーなボーカルトーンが乗っかることでマジックが起こりまくりで良かった。Erika de Casier の系譜がここまでオーバーグラウンドな音楽になるとは想像もつかなかった。韓国ヒップホップ好きとしてのチェックポイントはslomがプロデュースしたZion.Tの”Sleep walker”という曲のメロディがCentral Ceeを迎えた”Nice to meet you”で引用されていた点だろう。どこにでもありそうなメロディなようにも思えるけど、大手レーベルのsamplingやIntercorpolationのジャッジ基準はとても厳しいのかなと思えた。”Feel complete”のブレイクビーツっぷりも最高なんだけど、好きな曲はKelelaとの”Bury me”

Too Good To Be True by Rich Ross & Meek Mill

 2010年代リバイバルな空気を少しずつ感じる中で真打ちが登場!アツい!アツすぎる!と言いたくなる仕上がりで世代的にはブチ上がった。ラッパー稼業はソロアーティストが大勢となって久しいが、トップどころのラッパーがガッツリタッグ組んで作れば、これだけ最高なアルバムになるのかと底力を感じた。この2人のバイブスの高いラップの掛け合いはたまらないものがある。ゲストも2010年代的な配慮があり、Fabolous, Wale, Jeremih ,The Dreamあたりはどうしたってアガらざるを得ない。好みとしてはやはり後半にかけて、Snoop Dogの”Tha Shiznit”使いの”Above The Law”でムードがガラッと変わってくるところが好き。懐古主義といえば、それまでだが2023年にリリースされたことに嬉しく思う。好きな曲は”Fine Lines”

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