2023年11月1日水曜日

2023年10月 第4週

 突如BEEFが勃発して目を皿にしてSNSを追いかけてしまい、もう30後半なのにこんなことやってて何になるのか?と思い直し、Xをログアウト。その結果、気分的に改善した。乱暴な文字のインプットを減らした結果、自分のアウトプットが増えた。今週リリース量が多かったのもあるけど文字数が異様に増えたのは自分ごとだけど興味深い現象。AwichがSpotifyライナーボイスという企画において、現代は他者のことばかりが目に入ってきて自分にフォーカスする時間が少ないと話ており、それがとても刺さった。その対策として日記が挙げられていたのに納得したし、日記によるセルフケアの重要性を別のことでも実感したので自分の時間を大切にしたい。

THE UNION by Awich

 話題のBEEFでSNSが地獄の業火と化す中で、それを予期して鎮火するために作られたような、ユニオンをタイトルに冠したアルバムがリリース。フェスを含めてかなりの露出がある中で、こんな超クオリティ高いアルバムを作っているのは本当にかっこいい。キャリアの積み上げ方を真剣に考えていることがよく分かる内容だった。”United Queens”でかましてていた女性としてのカウンター要素はかなり減っていて、もっと普遍的な内容に仕上がっている。個人的には”Burn Down”が圧巻だった。Trill dynastyの18番であるペイン系ビートでネットの地獄をラップしていくのだけど近々の騒動を踏まえるとグッとくる。そして何よりもビビったのはGADORO。もともとリリシストだとは思っていたけど、このリリックはめちゃくちゃかっこいい。やることやっている人は進化していることを痛感…ビートは鳴りも展開も最高でこの曲が一番好きだった。『Queendom』ではラップにフォーカスしていたが本作は従来からあった歌も含まれている。なかでも30-40代に刺さりまくるのは”Call On Me”だと思う。Ashantiとかその辺の00年代のR&Bをfeelするような曲でたまんない。正直最後の3曲は置きにいっているのは否めないが、その辺のJ POPがこういう曲で塗り変わっていくのは大歓迎なので続けてほしい。

Restart by GADORO

 ということでAwichのアルバム経由で最新作を聞いたら、めっちゃ良かった。1曲目からいきなりGファンクでビックリしたし、いろんなテイストの曲が入っているけどGADOROのアルバムになっている点が良い。ゴリゴリの「日本語ラップ」チルドレンなのは間違いなく、それゆえにリリックの素晴らしさは言うことなし。まだまだ日本語で表現できる幅はあるのだなと感心させられるくらい言い回しがうまい。内容が真っ直ぐ過ぎて昔だったら気恥ずかしくなっていたかもしれないけど、このくらい直球投げているラッパーはな最近いないので新鮮に思えた。PENTAXX.B.Fが数曲提供していて、ベタベタに踏みまくった韻、ダブルミーニングで清貧を讃歌していることもあり過去のZORNを想起するのは間違いない。ただZORNと違うのは彼は歌フロウを取り入れている点。その歌フロウもUSのスタイルというよりも日本の歌、演歌のバイブスさえ感じるスタイルでかっこいい。ケツメイシっぽさとも言えるかな?hokutoがビートを手がけている”PINO”はその良さが最大限に出ていると思う。ここまで書いてさらに考えることは、R指定に別の未来があったら、こうなっていたのでは?ということ。それはともかく最後の曲で箕輪厚介のフレーズ引用してるのはマジで辛かった…ラッパーは話すとロクなことにならへんで。好きな曲は笛の上音でこのBPMは最近意外な感じもする”頭文字G”

82_01 by 仙人掌 & S-kaine

 仙人掌とS-kaineによるEPが突如ドロップ。この2人でEPをリリースするのは正直意外。S-kaineのこれまでの作品を考えれば、Dogearの面々が作ってきたヒップホップのムードの最有力後継者ではあったと思うけど、まさかこのタイミングとは。2人の相性がとても良くかっこよかった。このEPで仮に仙人掌だけだったら、これまでの流れと変わらない感じもするが、S-kaineが入るだけでこんなにフレッシュになるのも驚き。(とはいえ仙人掌のリリックはこれまでよりも一歩踏み込んで具体性が増して進化していると思う)ビートはENDRUN, GQ, Gwop Sullivanなど馴染みのメンツに加えて、S-kaineのビートメイク名義Judaのビートも含まれていて彼のビートもかなりいい。好きな曲は”Wish”

East Clap by The Clap Brothers

 意味たっぷりのリリックもいいのだが、音の気持ちよさも好きで今年一番くらい日本語の気持ちよさが詰まっていた。ラッパーのチプルソとビートメイカーのKEIZOmachine!によるユニットのEP。ユニット、EPにもある通りクラップ音がどの曲にも入っていてノリの良さが気持ちいいし、そこに乗ってくるチプルソの韻とフロウの気持ちよさの相乗効果でブチ上がった。好きな曲は昔のL-Vokalを想起する”ChipToe”

Madness Always Turns to Sadness by Tabber

 Tabber がついにアルバムをリリース。SMTM10で注目を集めたのち、The InternetのSydとのコラボなどシングル単位での活動はあったなかで満を辞してのアルバム。といってもサイズ的にはEPで若干物足りなさはあるもののチャレンジングな要素もあり楽しんだ。それは特に最初の2曲に顕著でスクエアなビートかつBPMが速い。彼の強みとしてはレイドバックしたフローと素晴らしい歌声なので意外だった。後半はその特徴を生かした曲となったので個人的には後半が好み。好きな曲はミッドディスコとファルセットが最高に気持ちいい”Being”

Life is Once by Leellamarz

 Street Baby,NSW Yoon という若手を連れてドープなヒップホップのアルバム『DAYDATE』を春にリリースしてLeellamarz。年も暮れようかとするところでフルアルバムをボム。この人も相当なハードワーカーで2017年からアルバムリリースのない年がない…どうなってんねん。『DAYDATE』と対をなすようにかなりポップな仕上がりとなっている。もともとバイオリンをやっていたこともあり音楽的素養が高く、なんでもできるのは本当に才能だと思う。 本作はFeatを迎えている曲が好きだった。兵役を終えたCHANGMOの復活はアツいし、既発シングルのSik-Kとの2ステップは最高に気持ちいいし、GistとJayci yucca の曲はミニマルファンクでかっこいい。全体にアコギを中心のサウンドとなっており、ほとんどの曲でTOILがプロデュースに関わっていることも影響していると思う。

Novel by GIRIBOY

 SMTMマスターのGIRIBOYがアルバムをリリース。最近はSNSでの露出も控えている中でも製作は続けているそのハードワーカーっぷりに畏怖の念を抱く。ただ肝心の中身は今までのGIRIBOYの作品の延長戦上にあるメロウな曲が中心で特にアップデートがないように感じた。とはいえクオリティは高いのでずっと聞いてられる。好きな曲は”Issu du Feu”

Bad Nights by ZENE THE ZILLA

 ZENE THE ZILLAの新しいアルバム。リリースごとに熱心に追えているわけではないが、久しぶりに聞いたらウェルメイドな作品で好きだった。個人的にはSinging Styleよりもスピット系が好きなのだが、彼は味変でもう少しスピットしてもいい気がする。どの曲もパッと聞きはいい曲で好きなんだけど引っかかるものがなかった…好きな曲はDON MALIKがその引っ掛かりになっている”Great Life”

BOLD CREW BOOTLEG by 30

 年始にアルバム出した30がEPをリリース。全曲VIANNプロデュースのかっこいいビートの数々で皆がスピットしてい良かった。”BOLD CREW”という曲が前のアルバムに収録されており、このEPはその延長上にあると思われる。 ジャケにあるのはMF DOOMの仮面であり”OLD BOY”のアウトロ、"JAL IT SUH”の声はMF DOOMな気もするのだけど有識者の人に教えてほしい。ジャケのとおり後ろノリの首が振れるやーつ系ビートでひたすらラップ、ラップ!という感じ。DeepflowがまたJUSTHISのこと言っていて相当根に持っているのだなと思う。好きな曲は”COCK BLOCK”

Love & Life by Chip Wickham

 Kamaal Williamsと横並びでレコメンドされていて何気なく聞いたらめっちゃ良かった。ジャズミュージシャンでいろんなミュージシャンのサックス/フルート奏者として活躍していたところから自身のキャリアをスタートさせ作品をリリースするようになったらしい。UKをルーツに持ちイギリスのファンク、ソウルシーンとの繋がりが強くNew Mastersoundsとも活動を共にしていたこともある。本作はファンクというよりジャズソウル的なアプローチ。フルートの音が全面的にフィーチャーされている2023年のジャズというのがかっこいい。好きな曲はフルートに加えてVibraphoneの音色もたまらない”Space walk”

For All Time by Mayer Hawthorne

 Mayer Hawthorneの新しいアルバムがリリース。個人的な音楽史としては重要なキーパーソンであり、往年のソウルやディスコをアップデートした形でStones Throwから提示してくれて、自分がソウルやディスコを好きなった大きなファクターの一つ。そんな彼が1stの頃を彷彿とさせるソウルフルなサウンドの連発しており唸りまくった。何も新しいことはないと言われればそれまでなんだけども、個人的な思い入れが強いのでどうしたって上がらざるを得ない…結局エバーグリーンなソウルなムードが自分を支配していることを痛感した秋でした。好きな曲は”Eyes of Love”

The Interludes by Ojerime

Flip side planetで存在を知ったOjerimeのEP。ストリーミング隆盛により発達したプレイリスト文化の影響で、Interludeというものが過去の遺物と化す中でこのタイトルでEP出すのかっけぇっす。。。1曲目がSoulectionのSango,Esta呼んでるからどんなビートかと思いきや、攻め攻めのJukeっぽさもあるビートでビビった。Interlude集ということもあり1曲あたりの尺は短い。ただ最後の曲のアウトロの無音部分をかなり短くしているのでリピート再生することを前提にして作っていると思う。好きな曲は”Pissed Off”

Movement by p-rallel

 KMのインスタで前作のEPを知ったp-rallelのアルバム。ハウス、ガラージといった四つ打ちで構成されていてブチ上がった。以前に聞いた『Forward』というEPは歌ものでまとまっていたし、流行りのアフロビーツ、アマピアノも含まれていたけど今回はストレートな四つ打ちが多くてそれが個人的には好きだった。最初はドラムンベースで始まって、最後はブロークンブーツで終わるのはUKをレペゼンしていてかっこいい。好きな曲はR&Bムードの女性ボーカルが最高な”I Know”

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