2024年6月30日日曜日

LIFE HISTORY MIXTAPE 01

LIFE HISTORY MIXTAPE 01/菊池謙太郎

 SNSで見かけて読んだ。『東京の生活史』とラップスタア誕生が接続して、こんな書籍が生まれるなんて誰が想像できただろうか?と驚きながら一気読み。ラッパーたちの人間味あふれる話の数々に心を奪われっぱなしだった。

 著者はテレビディレクターでラップスタア誕生というヒップホップリアリティショーも担当、そして『東京の生活史』でボランティアで聞き手として参加していたそう。ラップスタア誕生ではラッパーたちの地元へ行って、そこで彼らのキャリアを聞いてから曲を披露するフッドステージが用意されている。そのステージでにおいてどういう環境で育ってきたのか紹介されるけども、やはり主役は音楽なので紹介内容はラッパーとしてのキャリアが中心。ゆえに本著で収められているような家庭環境の深い話は知らないことだらけで非常に興味深かった。同じようなアプローチだと都築響一の『ヒップホップの詩人たち』が挙げられるが、あちらは既に名の知れたラッパーたちの話だった。しかし本著はこれからまだまだ売れていくヤングガンズたちの話でありヒップホップで何かを変えたい気持ちが子どもの頃の話を踏まえてひしひしと伝わってきた。ハードな環境においてビートの上で自分の思いをラップとして吐き出すことはセラピーのような効能があることもよくわかる。日本は相対的に貧しくなっているわけだが、逆境においてこそヒップホップが輝き出す、本著はそんな証とも言えるかもしれない。

 ラップスタア誕生に出場していたラッパーたちの番組で取り上げきれなかったディレクターズカットのような内容になっており番組視聴者は倍楽しめる。その要素が一番大きいのはEASTA、Tepa Roucciのチャプターだろう。想像もしていなかった二人の共通点にびっくりしたし、Tepa Roucciは今年フッドステージに進出、そこで紹介されたエピソードは序の口に過ぎないくらいハードな環境で同じく驚いた。この二人に限らず通常のインタビューで拾いきれない事実がてんこ盛り。たとえばアルバムリリース時に行われるインタビューよりも音楽の聞こえ方が変わるようなインパクトの大きい話がたくさん載っている。

 個別に言及するとキリないのだけども、TOFUとHomunculu$ の関係は今年出たアルバムをより楽しめるし、ratiffのバックグラウンドはおおいに納得するものだったし、個人的に一番ブチ上がったのはJoseph Blackwellがまだラップを辞めていないこと!01とのことなので次作のリリースも期待して待ちたい。

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