2023年10月24日火曜日

2023年10月 第3週

Stings by Kamaal Williams

 キーボーディスト、プロデューサーのKamaal Williamsのアルバム。むちゃくちゃかっこいいアルバム。今年聞いたバンドのインストアルバムだとトップクラスに好き。彼の色んなジャンルをごった煮しているサウンドはヒップホップだと多いけど、こういったバンド編成で体現していて、なおかつそのサウンドのクオリティーが高いものはそれほど多くない。タイトル曲の”Stings”がベースでグイグイ引っ張って、サックスのバキッとした音色をかまし、徐々にグルーヴしてくるドラム…これで飯何杯でも食えます!系サウンド。ジャズ、ハウスを単に混ぜたというよりもそれぞれの音楽に対する愛の深さが曲から伝わってくるところが最高。後半はドラムレスでアコースティックなムードなのも家で聞くにはピッタリだった。”Dogtown”が一番彼の特徴的なシンセのメロディがあって好きだが、やはり”Stings” が一番好き。

Lahai by Sampha

 先行シングルの”Spirit 2.0”が出た段階で「これは…!」と死ぬほど繰り返して聞いていて超期待してたSamphaのアルバムが出た。その超期待を余裕で超えていった半端なさすぎるアルバムだった…D'ANGLEOの『Voodoo』とかみたいに時代を象徴するアルバムになるのでは?と思う。すべての曲に隙がなくて全部かっこいい。エナジーはパツパツだけど優しくて…「これが言語化できたら音楽いらんで」的な音楽を聞く喜びを思い出させてくれる。アウトロで女性ボーカルを起用するのも曲の印象がグッと引き立つオモシロい仕掛けだなと思った。詳しい話はインタビューにも出ている。やっぱ”Spirit 2.0”のYusef Dayesのドラムはマジで鬼。レコードも即買いした。好きな曲は"Jonathan L. Seagull"

Weak by Loco

 Locoがビジュアルを一新してアルバムをリリース。ずっと曲をリリースしているので止まっていたイメージは全くないけど、アルバムというまとまった形で楽しめるのが嬉しい。ポップな曲とドープな曲のギャップが大きい中でもLocoのラップが楽しめるようになっている。これをトップ戦線にいる彼がリリースできるのは韓国ヒップホップの懐の深さだと思う(この話は何回しているか分からない。)コライトの文化がかなり進んでいるようでAOMGメンバーのLee-Hi,Coogieなども参加していて興味深いし、featで参加しているWoo,georgeは他の曲でもコミットしている模様。ビートメイカーとしてはGray, Peejay, Slom, SUMIN, Mokyoなど強強メンツ。参加している中でもキーパーソンは最多4曲参加しているJambinoだろう。SMTM11で邂逅し作られた”Like Water”はめちゃくちゃ中毒性高い曲でお気に入りだったけども相性の良さを彼ら自身も感じていることが想像される。好きな曲はPeejayによるド直球80sムードな”Broken iPHONE“

January Never Dies by Balming Tiger

 ついにリリースされたBalming Tigerのアルバム。韓国ヒップホップを真剣に聞き始めてから知ったグループのひとつでブログを検索すると2021年の初めだった。彼らの存在も韓国ヒップホップのレベルの高さに衝撃を受けた1つの要因だった。というのもミクスチャーとしてのセンス、各人のキャラ、ラップやライブのうまさがとんでもないレベルだったから。今回の作品はロックテイスト強めで、個人的にそこまで好みなミクスチャーのベクトルではないものの、彼ら独自のサウンドなのは間違いない。ゴリラズとか好きな人には間違いなく刺さるし、彼らが世界で受けているのはそういう背景もある気がする。好きな曲はプリンス御大のファンクネスを感じさせてくれる”Bodycoke”

Communication by テークエム

 梅田サイファーのテークエムによる2ndアルバム。梅田サイファーのアルバムではフックを中心にかましていたが、ソロ作品は彼のラップを十分に楽しめるもので良かった。心理的な不安定さは一般社会において許容されにくいが、ことアーティストにおいてはそれがプラスに働く。彼はまさにそのケースであり、鬱屈としている日々をラップに昇華してスピットしている点が好き。内省要素も強くACE COOLのアルバムも想起した。あとBLのビートの引き出しをたくさん開けさせているのも最高で最近は綺麗でツルッとしたビートが多い中でも30代が体験したBLの歴史を体感できるようなバリエーションに富んだ作りになっている点も好きだった。好きな曲は”Enemies”

My Mind by ANARCHY

 ANARCHYの久しぶりのリリースは全曲Statik Selektahとのタッグというサプライズ。前作のアルバムが本当に1mmも刺さらなかったのに比べるとかなり好きだった。彼の声のトーン、リリックはヒップホップ純度がめちゃくちゃ高いことを改めて知れる。もともとこういったオーセンティックなスタイルからメジャーへ移行する際にサウンドを拡張した経緯があるので隔世の感はある。あとC.O.S.Aが昔のAnarchyよろしくイメージ刷新中の中で、このトーンの曲に客演することには正直驚いた。Anarchyは皆にとって本当にヒーローなんだろうな。好きな曲は”Pass the mic”

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