2018年11月3日土曜日

2018年10月 第4週

10月22日
五反田で飲み会への道中で、
「ビリー・リンの永遠の一日」読了。

ビリー・リンの永遠の一日 (新潮クレスト・ブックス)
ベン ファウンテン
新潮社
売り上げランキング: 372,365

久々のがっつり長編海外小説で楽しめた。
信頼と実績の新潮クレストブックスはいつだって最高。
表紙のかわいさとは裏腹に戦争に対する、
イラク帰還兵のシニカルな視点が興味深い内容。
400ページもあるのに描かれているのは
実質2、3日というところに驚く。
かけ離れているように見える
超ギラギラしているアメフトのハーフタイムショーと、
イラクでの戦場がオーバーラップしていき、
それこそThis is Americaなシーンが白眉だった。
Destiny's Child が登場し「Soldier」を歌うなんて
出来すぎた展開なんだけど
実際に起こったことらしい→リンク
とはいえ、それはこの本の一部分でしかなくて、
ほとんどを占めるのが英雄の帰還兵が
アメリカに帰ってきて考えたこと。
戦争を支持する保守エリアにおいて
「君たちはアメリカを守る英雄だ」
とのたまうおじさんたちは実際の戦争を知らないくせに
おらついているのが何なんだと19歳の兵士が
亡くなった仲間を時折思い出しながら熟考する。
戦争の悲惨さを理解した上で見る、
アメリカのマッチョイズムの虚しさを
ひたすら描いているところがとてもオモシロかった。
飲み会行く予定はそもそもなかったけど、
場所が五反田だからサクッと行けるはと思ったら、
意外に遠かったけど久々に会う友達もいたし、
五反田で飲むという体験も新鮮で楽しかった。

10月23日
この日は10時に大手町のビルに行けばよく、
ゆったりした朝だった。
電車も空いていて快適だな、
10時出勤にしたいなと心底思った。
東京駅から歩いて行ったら死ぬほど遠くて、
来年から大手町のオフィスになるのだけど、
こんなに歩くのかと絶望的な気持ちになる。
午前中に用事を終えて大手町〜東京駅で
ランチしなければならなくてどれも高くて迷う。
結局パッタイを食べた。美味しかった。
霞ヶ関に移動してセミナー。
いろんな事故ケースの紹介で
事故が起こった原因は当たり前だけど様々で
事故は起こると内容がハードだから、
大変だよなーと他人事のように聞いていた。
品川へ移動してエクセルシオールで読書。
400ページの小説から音楽の対談集になったので、
サクサク読めて楽しい。
けどページあたりのCPって低いのかなと思ったり。
心を落ち着けて英会話の授業へ。
初めての先生で脱力系かつ圧強めな人だったので、
最初緊張してしまってうまく話せなかった。
レッスンの内容が飛行機に乗るとき、
乗っている間の所作だったので、
先生側が時間持て余している感じだったけど、
途中ドラマ結構見ているという話をしたら、
オザークすげーオモシロかったよと
レコメンドしてもらったから見てみようかと思う。
I like dramas of organized crime and drugs.
「organized crime」とは?と聞いたら
マフィアのことらしい。
「ナルコス」「ベター・コール・ソウル」は
最高ということで最後に意気投合した。

10月24日
ここ数日Rebuild.fmを聞き込んでいる。
最近はお笑い系のラジオを中心に聞いていたので、
意味のある情報がたくさん詰まっているのが新鮮。
一度友人に勧められたときに
苦手だなと思う人が出演していたのと、
テック系の話題が多くキャッチアップできなかったから
聞くのを数年やめてしまっていた。
けれども、その友人にエピソードごとに
出演者が違うことを教えてもらったことで
かなり聞きやすくなった、かつ超おもしろい。
ギャグセンスというかワードセンスのキレが独特だし、
テクノロジーを駆使して人生を能動的に生きる
という雰囲気が最高だと思う。
あとハヤカワのSF文庫系の情報が充実してるのもよくて、
「バーナード嬢曰く」を読んでから
トライしたい気持ちはあるのだけど、
何読んでいいのかと悩んでいたところで、
こうした読んだ人の具体的なレコメンドは助かる。
通勤中に「文化系のためのヒップホップ入門2」を読了。

文化系のためのヒップホップ入門2 (いりぐちアルテス009)
長谷川町蔵 大和田俊之
アルテスパブリッシング
売り上げランキング: 5,059

前作を読んでいたのもあるし、
ネット上でK DUB SHINEを中心に炎上していたのを
軽く見かけたりしていた。
入門編にしてはハードルが高いように感じるけど、
ヒップホップ好きにとって興味深い視座が
たくさんあってオモシロかった。
ヨーロッパ側からのヒップホップ史観、
ラッパーをお笑い芸人に例えると綺麗に全部説明できるとか。
2012〜2014年という近過去をまとめているのも助かる。
ちょうどヒップホップの勢いがグイグイ増している中で、
新譜を次々に聞いていくだけになっていた時代だったから。
しかも各アーティストの背景を深掘りしてくれているし、
著者2人で時代の趨勢を紐解いてくれている。
前作こんな感じだったっけ?というくらい、
想像以上に長谷川町蔵が
ヒップホップマウントおじさんなのが驚いた。
それも90年代黄金期論者へのカウンターとして、
ヒップホップは新しいものこそ聞くべきという、
新しいタイプのおじさんだった。
柳楽光隆が参加したパートはジャズヒップホップというより、
ジャズとヒップホップの距離の話になっているのが、
ただただ興味深かったけど、音楽リテラシーが高くないと、
読み解ききれない部分も少しあった。
トラップが入ってきた15年以降、
ヒップホップのゲームのルールが激変したことを
2人の解説で早く読んでみたい。
帰ってからは「オザークへようこそ」を見始めた。



英会話の授業でブレイキングバッド的な
ドラッグの映画で最高だぜと言われて見てみた。
あーこれはハマっちゃうやつ。と1話見て思った。
ドラマは本当にピンキリで1話目の迫力にかけると
見る気失せてしまうのだけど、この1話の重みは稀有。
冒頭の金にまつわるモノローグは
繰り返し聞きたくなるまさしく金言だと思う。
天気がいいのに全体に暗い画面、
それに合わせたミニマルな音楽が合わさって、
くすりとするシーンも用意されていない感じで、
ずーっと物憂げな雰囲気なのが新鮮。
(傑作True Detective シーズン1に近い)
これをずっと見続けるのかと思うと覚悟いるけど。

10月25日
今日から何の本を読もうか積ん読を眺めても、
どれもピンとこなくて出勤時間ギリギリで、
ハードボイルドっしょ!となった。
何を読みたいモードなのか探るのは
読書するときの楽しい時間の1つだと思っている。
結局ハードボイルド選んだけど、
本当は人文とかテック系の本を読みたい気持ちがくすぶっている。
帰りに本屋に寄って進撃の巨人を
フォローアップしようとしたけど
実家で何巻まで読んだか思い出せなくて諦めた。
家で「オザークへようこそ」をひたすら見続けていたら、
いつのまにか遅い時間になっていたので寝た。

10月26日
How To Dress Well「The Anteroom」を聞きながら出勤。



誰かのリミックスかと思うくらい、
ボーカルはあくまで材料でしかないという内容で、
しっかりしたシンガーというイメージと
真逆でダンスミュージックとして機能している感じ。
飲み会キャンセルになったから
家の近くでラーメンを食べて帰宅後、
「オザークへようこそ」をひたすらビンジウォッチングして、
シーズン1を見終えてしまった。
ドラッグ素人がどんどん泥沼に突っ込んでいく、
NEXTブレイキング・バッドといった内容で、
ドラッグマネーの資金洗浄を生業にしている家族の話。
直接ドラッグの売買しているわけではないけれど、
金を洗うという仕事に悪戦苦闘する。
オザークは湖のあるリゾートのようなところで、
その湖をキーにしてホワイトトラッシュも巻き込み、
閉塞感ある村社会を描いているのがオモシロい。
ナルコスみたいに悪人同士の諍いも見てて楽しいけど、
やっぱり市井の人とドラッグという関係性が
感情しやすくて楽しく見れる。
シーズン2も待機しているのでさっさと見たいけど、
ずっとトーンが暗いからエネルギー吸い取られるから、
少しずつ見すすめようかな。


10月27日
どっか出かけるとなって自由が丘に行こうとしたところ、
友人から神保町でブックフェスやっていることを教えてもらい、
そちらに路線変更して神保町へ行ってきた。
このブックフェスティバルなんやかんやで毎年行っていて、
狙って何か買うというより出会い頭を期待していて、
今回もtababooksのブースで半額になっている本があって、
それをゲットできた。成長し続ける積ん読。
帰りに気になっていた天ぷら屋で飲酒。
とてもリーズナブルな上に美味しくてよかった。
半熟卵の天ぷらを鶏そぼろの上に乗せて食べる、
変則卵ごはんが特に美味しかった。

10月28日
全く外出する気にならず、
最近ドラマばっかりなので映画でも見るかと思い、
「スノーデン」をNETFLIXで見た。



ドキュメンタリーの「シチズン・フォー・スノーデン」が
抜群にオモシロかったのでフィクション版は
見なくていいやと思っていたけど見てみたら、
映画ならではのback in the daysな部分がオモシロかった。
ドキュメンタリーの場合、暴露に至る恐ろしくスリリングで
RAWな瞬間が最高に興奮するのだけど、
本作では彼のバックグラウンドを知ることができて、
スノーデンの一連の行動に別の側面を見ることができる。
どこまで脚色しているのかは謎だけど、
どういう仕事をしていて、どの場所にいたかは本当だし、
日本も唐突に出てきて驚いた。
この問題がオバマ時代にある程度明るみに出ていて
良かったと思える作りになっているのだけど、
リベラルなイメージのオバマが
スノーデンを「29歳のハッカー」呼ばわりしていることに
権力は人の目を腐らせるのだなと思ったりした。
スノーデンを演じるのがジョセフ・ゴードン・レビットで、
声をかなりスノーデンに寄せていて、しかも結構似ていた。
あと俳優陣でいうとニコラス・ケイジの無駄使いはアガる。
久々に家で映画を見ると間延びする感が強くて、
集中力がもたないから、やっぱ映画は映画館で見たい。
見終わったあと、いつの間にか寝ていて、
夜ご飯に手羽元と大根の煮物を作って食したのち、
TVを見ながらKindleで「宝石の国」9巻読了。

宝石の国(9) (アフタヌーンコミックス)
講談社 (2018-10-23)
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ここ数巻、謎に包まれていた部分が
徐々に明らかになりつつあり、それがオモシロい。
特に月側の視点が入ってきたことで、
自分の痛みと他人の痛み、両方を知ることで
見えてくる別の世界、みたいな話になってきていて、
今読まれるべき作品な気がする。
(展開としてはスパイものみたい)
Kindleで読んでいるとページまたぎの部分が
紙の本で読んだときの感動がないことに
改めて気づかされるくらい絵がかっこよかった。
お互いの思惑が交錯する形で、
9巻も終わっていったので10巻を気長に待ちたい。

10月29日
Amerieの新譜を聞きながら出勤。
EP×2という変則スタイルでの久々のリリース。





2000年代R&Bの中でも特に好きで、
Rich Harrisonのソウル使いが冴えまくりな曲たちは
僕にとって青春の1ページでもある。
そんな雰囲気の印象からガラッと変わった本作は、
彼女に昔ながらのスタイルを求めると
がっかりするかもしれないけど、
今のトレンドと00年代的なノリの折衷案な感じで、
独特な聞き心地だった。
とくに「After 4AM」のほうがかなり良い出来で好き。
Pitchforkのレビューを読んでから聞くと、
また味わい深いところがあった。
Be independentの大切さとうか、
マス投下できなくても自分の好きなものが
届くところに届けばいいというのが今の時代。
帰宅後、NETFLIXオリジナル映画「7月22日」を見た。



オスロで実際に起こった子どもの大量虐殺を
描いた映画でとてもヘビーな内容だった。
上記内容を理解していたので、
ある程度覚悟はしていたけれど、
想像を上回ってくるハードさ。
殺人シーンの描写もキツいけど
それよりも何よりも手口が陰惨過ぎて…
この最悪のテロとどう社会が向き合うのか、
という話に中盤からシフトしていき、
安易な勧善懲悪に落とし込まないところに
かなり好感を持った。
実話ベースだから、といえばそれまでなのだけど、
犯人を懲らしめるというよりも
事件に遭遇した当事者や家族が
次に向かってどうやって生きていくのか?
そこにフォーカスしている。
今の時代は懲罰を含めてとにかくツッコミたい訳で、
他者のことばかり気にしているけど、
それよりも他者と接している自分という人間は
一体どうなのか?ということを見ているあいだ、
とくに被害者の男の子のリハビリ、演説を見て
自分を恥ずかしく思った。やっぱBe myselfだな。

10月30日
Georgia Anne Muldrow「Overload」を聞きながら出勤。



現状ねっとりシンガー最高峰と思っているのだけど、
Brainfeederからのリリースということもあり、
とても聞きやすいアルバムになっていた。
最近はRebuild.fmのアーカイブをひたすら聞いていて、
新譜チェックがままならなくなってきている。
可処分時間をどうやってやり繰りするのか、
それは本当に悩ましいことで大変な生活エブリデイ。
セミナーが三田であったので会社から会場まで歩いた。
慶応大学周りの施設がたくさんあって、
滲み出るリアルな金持ちだらけで
こんな世界があるのかと思ったし格差社会がそこにあった。
セミナー参加して質問タイムになったとき、
illness全開の人ばかりが質問していて世も末。
人に教えてもらうのにその態度はないぜ的な。
くだらねーと思いつつ思いのほか早く終わったので、
「search」をTOHOシネマズ川崎で鑑賞。



前評判良かったので期待していたけど、
むちゃくちゃオモシロかった。
「スクリーン」の定義を更新したと言っても過言ではない。
このタイプの映画の場合、ギミックだけで
中身が大したことないパターン多いと思うけど、
本作は脚本も相当練られていて伏線の回収が
とても鮮やかでオモシロかった。
じゃあギミックってなんなんだ?って話で、
それは映画がPC、Macbook、iPhoneの画面で
語られていくということ。
WindowsXPから始まる導入部分の
圧倒的完成度にまず度肝抜かれるし、
SONYの映画なのにiPhoneをガンガンに
フィーチャーしている点も潔くてよい。
よくWebサービスが劇中で登場するときに、
権利の関係上、似たようなサイトが
登場することが多いと思うけど、
本作はすべてガチというところも新しい。
あらゆるデバイスにカメラがついているし、
動画のWebサービスもひと昔前に比べて
めちゃくちゃ充実しているから、
それらの映像だけで物語を語ることができる、
というかっこよすぎる宣言のような映画だった。
メインで進行するのは失踪した娘を探す話で、
近年でいえば「ゴーン・ガール」に近い。
父親が娘のMacbookにログインして、
SNSからローカルのデータまで
縦横無尽に横断して彼女の情報を収集していく過程は
スタイリッシュかつ恐ろしくスリリング。
よく言われるけど電子デバイスは
個人情報の塊となっていることがよく分かる。
あと発明だなと思ったのはタイピングで
気持ちを表現するということ。
これまでメールだとすべて決定稿しか
見ることができなかったわけだけど、
メッセージをタイピングする画面は
露骨に気持ちが出ていることに気づかされた。
ここまで述べてきたように、
すべてがフレッシュ過ぎて物語の中身に加えて、
その語り方もオモシロいから、
信じられないくらいの映画的強度を持っている。
映画館で見て欲しいのは当然だけど、
これがソフトリリースされてMacbookで見たら、
一体どんな感動が待っているのか。
それが今から楽しみで仕方ない。
川崎で飯食うかとなり近くの王将行ってみたら、
信じられないくらい並んでいて、
並んでまで食べるものではないと思って引き返し、
帰り道にあった天下一品でラーメン&唐揚げ。
信じられないくらい唐揚げがまずくて引いた。

10月31日
今日は皆出張でいないので
超ギリギリに出勤して周りを気にせず仕事。
さぼってしまうなーとか余計なこと考えてたけど、
誰とも話さないから非常に捗った。
余裕で定時退社してからの英会話。
英会話前に喫煙所でタバコを吸っていたら、
隣で上司とその部下らしき人が残業について話していて、
部下の人が「好きで残業なんてするわけない」
「あの上司を本当にどうにかして欲しい」
とシリアスに訴えていた。
今日の先生は2週前くらいに1度授業してくれた先生で、
そのときにビールの話を結構したからか、
僕がすごい酒飲みで彼も同じく酒飲みで、
意気投合できたと思っているようだった。
授業中は前回同様、三人称と時制を逐一指摘されて
自分がいかにその辺をおざなりに適当に話しているか、
認識させられて勉強になった。
空港での応対の授業ということもあり、
空港および飛行機のエピソードを話していたのだけど、
先生が聞かせてくれた話がまるで映画だった。
彼は遠距離の彼女にプロポーズするために、
20年前に観光ビザで日本にやってきたらしい。
そのときにテンション上がりすぎて、
入国カードにその旨を丁寧に全部書いたらしく。
すると税関で止められて別室に連行、
空港まで迎えにきた彼女も合流して問い詰められた。
しかし彼はサプライズでプロポーズしようとしていたのに、
彼女は税関職員から「結婚するって本当か?」と言われて、
そこで初めて彼がプロポーズすることを知った。
なーんていうまるでラブコメみたいな話。
本当なのか、英会話教師の盛り上げ用妄想話なのか。
とはいえ先週の適当な先生に比べて、
丁寧な授業でとても為になった。
Anderson.Paak「Tints」のMVが超かっこよい。



アルバムが完成したみたいで
ドレがミックスを担当しているようなので
今年の重大アルバムになることは間違いないし、
ケンドリック以降の新しいスタンダードになるかもしれない。
テレビで渋谷のハロウィンの様子を眺めながら、
よくこんな場所で働いていたな。。
と遠い目をしながら就寝。

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