2018年4月23日月曜日

2018年4月 第3週

4月16日
行きの電車で「テロ」読了。

テロ
テロ
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フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
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表紙だけ見たら職務質問されそうな、
鬼ストレートなタイトルな訳だけど超おもしろかった。
ドイツで起こった飛行機ハイジャックを
阻止するために空軍がその飛行機を撃墜し、
200名弱を殺害する事件が起こった。
その犯人を裁く裁判を描いた作品。
飛行機を撃墜していなければ7万人が死んでいたわけで、
200名弱の命と7万人の命を天秤にかけて、
さぁいったいどっちが大切なんでしょうか?
そもそも命を天秤にかけてよいのでしょうか?
頭で考えてもどっちが正解なのか分からない
議論が延々と展開されて、それが無類にオモシロかった。
ほぼ演劇のト書きで、それが新鮮というか
基本セリフベースなので
海外文学だけどスルッと読めるのも良い。
しかもダブルエンディングが用意されていて、
それは裁判所が判決を述べるところなので、
理論武装された判決の理由が展開される。
どっちも正論にしか見えないので、
読者はめちゃくちゃ考えさせられる。
本編はここで終了しているのだけど、
著者の演説が最後に付いていて、
彼がどちらのスタンスなのか分かる構成になっていた。
法治主義国家のプライドってあるよな、
それ捨てたら終わりだよなと思った。
これもまた今刺さる内容だった。
PUNPEEの「Sofa King Friday」を聞く。
Rihanna「Pon De Replay」の
マッシュアップを聞いてDJ始めたての頃、
ブート12インチのマッシュアップよく買ってたなー
とおセンチな気持ちに浸った。



粋な夜電波はフリースタイル。
冒頭のシンセの曲が超かっこよいなーと思ったら、
Photayの2014年のEPの曲だった。



去年のアルバムが大好きだったので
過去作も聞いてみよーと思う。

4月17日
Kali Uchis聞きながら出勤。



先行シングルのBooty御大とTylerを迎えた曲も
もちろん最高なのだけどアルバムトータルで好き。
今年も色んなグッドミュージックと出会えて感謝。
お昼は渋谷の権八で同僚とランチ。
今回で2回目の転職流浪人として、
思うことをいろいろと伝えておく。
最終決断は自分がするわけなので、
自分の市場価値を確認するために
活動することはプラスにしかならないと思うし、
井の中の蛙でこき使われるなら、
より良い条件のところで働いた方がいいというのが、
これまでの仕事人生で思ったこと。
他にもオモシロい話を聞かせてもらったけど、
彼とはそこまで親しくなかったので、
もっと始めから仲良くなれれば良かったなぁと思った。
定時ダッシュで帰宅、
ハンバーグ定食を作って食べながら
「シチズンフォー」をNETFLIXで鑑賞。



公開当時イメージフォーラムのみで見逃してしまったことを
思い出して見てみたらオモシロ過ぎた。
今はFBの個人情報流出が目下話題になっているけど、
それより遥かにエグいことを
国家ぐるみでやってたことを思い出して、
公聴会でザッカバーグがボコられているのは
少しかわいそうかなという気持ちにはなった。
(本作で暴露される情報搾取とFB問題は
別の切り口なのだけど)
本作はスノーデンがアメリカが世界中で
行っている情報搾取について暴露する過程に
密着したドキュメンタリーでとにかくスリリング。
通常の場合、情報提供者は隠されているのが
報道の原則として一般的なのだけど、
彼は自分が矢面に立つことを厭わない。
目立ちたがり屋と思われるかもしれないが、
告発によって追われる立場になることを考えれば、
彼の行動動機は純粋な正義なのかもしれない。
SNSを含むインターネットで
何も発信していない人の方が少ない社会は、
権力側にとって都合のよい社会なのだなと
頭では分かっていることを
まざまざと見せつけられた。
話の中身以外で好きだったのはショットの構成。
スノデーンに密着しているときは
ホテルの室内で狭苦しい画面なのだけど、
各国の監視システムとなっている建物を
ロングショットで非常に美しく撮っている。
建物が物静かにどーんと佇んでいる様と
スノーデン含めたジャーナリストの
わちゃわちゃ感の対比が素晴らしかった。
権力vsジャーナリズムという観点でいえば、
今の安倍政権とジャーナリズムの戦いと
照らし合わせて見ると楽しいかもしれない。
いかに幼稚なのか分かるから。

4月18日
朝から打ち合わせ。
この打ち合わせも残り数回で、
解放されると思うと心も晴れやか。
けど結果4時間も拘束されて死ぬかと思った。
午後休みでそのまま直帰。
映画でも見に行こうかと思ったけど
体がまったく動かず家で
ポッドキャストを聞きながらひたすら家事。
夜に最近無料版にうっかり入っている、
アマゾンプライムビデオを物色して、
ジャド・アパトー監督の
「エイミー、エイミー、エイミー!」を鑑賞。



NETFLIXのドラマ「ラブ」も最高にオモシロかったけど、
映画というフォーマットに収まっている方が、
すっきりしていて良いこともあるなと思った。
(こぼれ落ちるものもあるのだろうけど)
NYで働く女性の恋愛観を巡る話で、
いわゆるb*tchと呼ばれる類の人なのかもしれない。
けれどそこにも理由はあって、
残りの人生を誰と生きていくのか、
考える話になっていくところが良かった。
とにかくビル・ヘイダーが出てるだけで最高最高。
今回はいつもより真面目な役だったけど、
レブロンとの絡みがオモシロかった。
(レブロンがそこそこ重要な役なのも笑える)
そしてブリー・ラーソンはいつまでも美しい。

4月19日
早起きしてイメージフォーラムで「港町」鑑賞。


想田和弘監督、観察映画第7弾。
牡蠣工場」も無類にオモシロかったんだけど、
今回も最高にオモシロかったー!
生活、仕事、社会、人生、
こういった言葉のプリミティブな部分が
スクリーンに浮かび上がってくる稀有な映画だった。
高齢化社会が先行して進む日本の地方都市において、
どういった人がどのように生活しているのか、
それが観察映画の視点で切り取られ、
その先にどういったものがあるのか、
観客1人1人が考えさせられる。
今回は監督初のモノトーンになっており、
色を削ぎ落とすことによって
情報量が落ちた分、読み手が深読みできるレンジが
さらに深くなっている印象を受けた。
観察映画においてはテーマを決めずに
カメラをひたすら回して、
そこから立ち上がってくるテーマを
映画にまとめるという手法。
こういった手法だからこその、
いわゆる神シーンが毎回楽しみの1つなんだけど、
今回は「Dog Hunter」を着た
お墓参りのおばちゃんと終盤のおばあちゃんの独白。
前者は超笑ったけど、
後者はこの作品のトーンを別の次元に持っていく、
独白するおばあちゃんはイメージビジュアルに
使われているくらいメインで登場する。
彼女は前半、街の事情通として
想田監督にあれこれ世話を焼く、
良い意味でも悪い意味でも
お節介おばさんとして登場する。
その彼女から放たれる壮絶なダークサイドの話を聞くと、
人は様々なものを抱えて生きているという
当たり前のことに胸を打たれた。
また、彼女がある友人の男性を待つシークエンスは
「ここにいないものを待っている」
という伏線で効きまくり。
何気ない日常のつなぎ合わせで意味が立ち上がるのは
観察映画の醍醐味なんだと思った。
アフター6ジャンクションのカルチャートークに、
想田監督がゲスト出演していて、
それが本作の理解にかなり役立つ内容なので、
見た人は聞くことをおすすめ。
また6月に次の作品も公開されるので、そちらも楽しみ。
そのまま会社に出勤。
引き継ぎを繰り返してそそくさと退社。
夜遅くにテレビ朝日のセクハラに関する会見を見て、
ここまで事態が進んでフェーズが1個進んだ気がする。
セクハラのほうよりテレビ朝日のパワハラに
論点をずらすことが増えていくのだろうなと思って
暗澹たる気持ちになったので寝た。

4月20日
休み。なんとなくYoutube開いたら、
オモシロそうな企画があって一気見。



ニートTOKYOで引きの強過ぎるインタビューを
次々と披露していた孫GONGの魅力200%出てた。
バンドとのセッションが相性良い。
引越しの見積もりで業者が来宅。
知らないおじさんと自宅で対峙するのは
家電の修理とか含めて全く慣れない。
(向こうも同じこと思ってるだろうけど)
自覚しているけど荷物がとても多く、
単身の一番小さいトラックでは乗らないと言われた。
ものを捨てて身軽になりたい気持ちは強いけど、
その一歩踏み出す勇気があれば、
こんな状態にはなっていない。
ダンボールを受け取ったので、
とりあえずダンボールに詰めていく。
ポッドキャストたまりまくりなので捗る。
前からぼんやり考えていたのだけど、
12インチはよほど思い入れのないもの以外は売ろう!
と決心して仕分けしながら整理した。
今の家の退去手続きで不動産屋へ。
思ったよりあっさりした手続きだった。
いかにもローカルな不動産という感じで、
奥で働いている人たちが映画に出てきそうな。
(フィクションと現実を混同しすぎ)
移動中の耳のお供はJ.Coleの新譜。



サウンド的には前のアルバムとかの方が好きだけど、
歌詞がオモシロいので1つ1つ読んでいる。
「Photograph」という曲がオモシロくて、
SNSを通じた恋の話なんだけど、
Young Hastleの「無意識 Feat. GG UJIHARA」と
トピックがほとんど同じ。



くだらねーと思えるけど、
共感できるポイントが多いラッパーが売れるのかもしれない。
ツッコミではなくボケのスタンス。
結果、Young Hastleは本当に最高のラッパー。
そのまま新宿へ移動し蕎麦食って
K'S Cinemaで「大和(カリフォルニア)」鑑賞。



本日が最終日だったので駆け込みで見たんだけど、
日本でラップをやることと基地問題を絡めた、
日本とアメリカの境目を描いた映画でオモシロかった。
はっきり言って前半は見るに耐えないシーンが
いくつか散見されたのだけど、
後半にかけてグイグイ尻上がりに好きになり、
ラストシーンで泣いてしまった…
撮影が黒沢組常連の芦澤明子ということもあり、
惚れ惚れするシーンがいくつもあった。
(監督の宮崎大佑も黒沢組らしく納得)
2人の女の子が初めて打ち解けて
大和市を放浪するシーン、
その2人が雑魚寝しているシーン、
お母さんとホームステイの女の子の橋でのシーンなど。
これらはスクリーンで見てこそ響くものばかりだった。
黒沢組ということもあり長回しが
もっとあってもよいかなと思ったけど、
そこは線引きしてるのかな。
そして、本作ではラップにフォーカスしているところが
僕にとってはビビッドに思えた。
前述した見るに耐えないシーンと言ったのは、
サイファーのシーン。
キツいな…と思いながら見ていたのだけど、
最後まで見るとあえてそういう演出にしていたことは理解できた。
ただエクスキューズなしに見るとキツい。
神奈川県の大和市が舞台ということもあり、
神奈川のラッパーが登場する。
リル諭吉が映画全体の音楽を手がけていて、
さらに漫喫の店員役で出てたり。
NORIKIYOは憧れの先輩として冬樹、
ライブパフォーマンスも披露。
劇中の挿入歌としてアルバム「Exit」から
「IN DA HOOD」「DO MY THING」が流れていた。
これがカーステというか
原付から乱暴に流れる演出も最高だったなぁ。
映像に挿入されるのと全然味わいが違う。
アメリカのモノマネと揶揄される、
日本のラップとは何なのか?という問いに
向かっていく姿勢がオモシロくて、
それが主人公の女の子が
自分の言葉を獲得するというテーマと繋がる。
とても好きなところだった。それが結実するのがラスト。
ラストシーンまでのつたなさや痛々しさが
すべてフリとなっていて、ラップというより
ポエトリーリーディングに近いのだけど、
そのソウルフルな叫びに心を打たれた。
上映終了後の舞台挨拶では
質疑応答があってそれも興味深かった。
(皆、好きになるシーンは同じなんだと思った。)
監督が説明していた、
フリースタイルラップと音源のラップの違いの説明が、
もっと広まって欲しいくらいに分かりやすかった。
どういうことかといえば、
フリースタイルはスピードスケート、
音源のラップはフィギュアスケートという例え。
同じスケートではあるものの、
フィジカルな速度を追求するスピードスケートと
芸術性を追求するフィギュアスケートは異なるという話。
あーそういうことなんだよなと溜飲を下げた。
次の映画もすぐに池袋で公開されるみたいで、
そちらもどんな作品なのか楽しみ。

4月21日
早めに起きて「宮本から君へ」第3話を鑑賞。
今週も圧巻の仕上がりで泣いた。
ドラマというより映画だ、完全に。
脚本の妙というよりショットの力強さ、
役者の演技で全部持っていかれる。
今週は宮本の泥臭さが全力で発揮されていて、
冬の海で体張りまくっていた。
その迫力が画面全体から伝わってくる。
(これもカメラは芦澤明子!)
「普通のやつにフラれたらダメだろ!」
というセリフがあまりにもかっこ良すぎた。
原作を再解釈して全部ホームラン級に
成功しているのが最高最高!来週も楽しみ。
今日もひたすら荷造り。
図書館で予約していた本が取り寄せられているのか、
電話でしか確認できなかったので
電話してみたら無事に届いていたので取りに行く。
今日は気温も天気も最高で
図書館のある公園は家族連れで大賑わい。
「いい時間」が流れていた。
ただ耳元はNYのブーンバッブ、Smoke DZAの新譜。



見た目がナードなのでこういうヒップホップ聞いていると
思われてないだろなといつも背徳感を楽しんだりしている。
自意識過剰。ちなみに会社で
「サカナクション聞いてそー」と言われたことは忘れない。
GW思ったより暇になりそうなので
多めに本借りて途中スーパー寄って帰宅。
本搾りの缶チューハイ飲みながら
「最高の離婚」を垂れ流して再見。
昔、見たときよりも年を取ったこともあり、
刺さり方が尋常じゃない。
つまりはマスターピースなのだなぁと。
「結局あなたは一人が好きなだけなのよ!」という
尾野真千子のセリフの切れ味、
喉元に突きつけられた気がした。

4月22日
外は快晴。荷詰めしたり、ダラダラしたり。
借りパクしていた漫画、売るレコードを
宅配業者に引き渡す。
普段、宅配便使うことないので、
こんな値段するのかと驚いた。
(よくわかってないからボラれたのかな)
「捨てがたき人々」をNETFLIXで鑑賞。



以前に友人から薦められていたことを思い出して見た。
どこをどう見ても「クズ」しか出てこなくて、
久々に見たこの感じの映画。
クズが出てくる映画の場合、
「はい、この人たちダメな人なんです」
という大げさな演出は引いちゃう。
けど本作は一歩引いている視点で好感を持った。
とにかく大森南朋のsavage具合がとにかく最高。
最初は彼が特異的に見えるのだけど、
徐々に人間みな野蛮な部分を持っているのである、
というフォーカスのずらし方をするので、
他人事だと思っていても飲み込まれちゃう。
舞台が五島列島で街が美しい一方で、
そこに広がる日本の村社会のエグみの対比が
なんとも言えない気持ちになった。
Kindleで原作上下で600円くらいだったので、
読んでみよかなーと思いながら就寝。

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