2023年7月5日水曜日

2023年6月 第4週

 今週は日本のヒップホップのアルバムで素晴らしい作品が多かった。中でもSadajyo、UNDER DOGGSのアルバムを聞いて思ったのは、オーディション番組で作られる価値観がすべてだと思わせてしまう功罪だった。当然間口を広げる意味で、かっこよさの基準を明示しヒップホップの理解度を高める意味でオーディション番組が効果的なのは間違いない。けれど、そこに当てはまらないからダメなわけでは決してないし、なんならヒップホップはその価値観を伸長してきた歴史を持つ音楽だからこそ色んなスタイルがあってほしい。

Golden Virginia by Sadajyo & Jeff Loik

 Sadajyoの1stアルバムがリリース。QNとの曲で知ったアーティストで、RAPSTAR誕生においてTOP10まで残ったことで認知が高まり満を辞してのアルバムという感じ。これが手垢のついた「ブームバップ」とは一線を画す内容でめちゃくちゃ良かった。Jeff Loikのビートは昔のFLA$HBUCKSやSIMI LABのアルバムを彷彿とさせるサウンドデザインでサンプリングベースなんだけど、ドラムやサンプルが細かく刻まれており単純なループではないのがいい。SadajyoはSEEDAの表現を借りれば日本語を「ベンド」してグルーブを作っていくスタイル。そのねちっこいフロウとイカついビートが絡み合って化学反応が起きていた。好きな曲はSwizz Beatzっぽい”Jungle”

READY 4 by UNDER DOGGS

 KID PENSEURとSTICKY BUDSによるユニット?のUNDER DOGGSのアルバム。ジャケがもう最高なんだけど、内容も素晴らしかった。大阪のシーンで脈々と受け継がれるB-BOYの遺伝子ここにありという感じで自然に首がふれるやーつ。若い人たちは別にビートのスタイルとして90s主義とかでもないので、いろんなビートの中で渋いラップをスピットしていくのがおじさんとしては新鮮な気持ちになる。好きな曲は”No Sugar”

Grandma's Wish by CHICO CARLITO

 Chico Calitoが昨年に続いてアルバムをリリース。前々作とのリリーススパンを考えるとかなりハイスペースのリリースとなっている。オーセンティックなスタイルのThis is HIPHOPなアルバムでかっこよかった。バトルで対戦したBonberoを招いた曲”ベストキッド”は2人のスタイルウォーズが面白いし、ビートもパーカッションでドリルのパターンを刻んでいたりで聞きどころたくさん。他の曲もリリックとフローの質が両立していてかっこよかった。個人的には王道よりも変則的なビートでの彼のラップが聞きたい。

Inner Division by Shin Sakiura

 プロデューサーのShin Sakiuraのアルバム。前のアルバムを友人に教えてもらってその時の衝撃をそのままに今作も素晴らしかった。1曲目のKaytranadaよろしくな曲でもう勝負ありって感じで多くの曲が四つ打ちのダンスミュージックでアガる。あと大きい音で聞くと低音のエグい鳴りとか各楽器の立体感がとても伝わってきて気持ちよさがパない。素人ながらにミックスがいいんだろうなと感じた。本人によるセルフライナーノーツがInstagramで公開されていてそこにも音へのこだわりが綴られていたので納得。初めて本人の歌唱も入っているのだけど、それもまたよし。好きな曲は”Magic”

Stimulate by Tensnake

 信頼の橋本徹レコメンド。ディスコ経由のエレクトロ、ハウスみたいなサウンドで最近聞いてなかったので、とても新鮮だった。DJしていた頃なら絶対かけてたと思う。比較的ポップな中にディスコバイブスが見え隠れする一方、”Take Your Time(Do It Right)” みたいなカバーもあったり。最近はロウなバイブスがどっちかといえば好みなので、好きな曲は”Brain Food”

Fine Tune by Terrace Martin

 サックスプレイヤーでありプロデューサーでもあるTerrace Martinのアルバムがリリース。 最強ジャズミーツヒップホップコレクティブのDinner Partyへの参加も記憶に新しい彼だけど、アルバムは色んな曲がってめちゃくちゃ聞きやすくて良かった。これまでウェッサイなムードの曲のイメージがあったけど本作にはストレートなジャズも収録されていて、それがアクセントになってアルバム1枚でプレイリストのような構成になっている。朝は基本これを聞いていた気がする。好きな曲はドラムが刻みまくりなのとサックス、トランペットの絡みが気持ちいい”3am Traffic”

2 Kids On The Block Pt. 1 by Dynamic Duo

 DymamicduoのEPがリリース。イントロで俳優のイ・ビョンホンがナレーションしているというとんでもないカマシから始まるのにびっくり!2人のラップはベーシックなスタイルでベテランの安定感があるし、オーセンティックなGRAYのビートとの相性がいい”19”なんて最高。だけどビビったのはRUN DMCの”Pied Pipers”のオマージュをかました最後の曲。今これやるのアツ〜だし2人の掛け合いも最高。アルバムがどんな作品になるかのか楽しみになった。

S3X AND THE CITY by Jayci yucca & dnss

 友人に教えてもらって知ったやつ。Jayci yuccaがラッパーでdnssがプロデューサー。現行USモードバリバリでラップがかっこいい。アトランタっぽくて”Ganges”、”Pop 2 Pills”とかめっちゃそれ。(”Ganges”、Metro Boominで同ネタ曲あったような…)こういうのゴロゴロいるのが韓国のヒップホップの底の厚さを感じる瞬間でもある。AmbitionやDaytonaとのコネクションの強さがよく分かるFeat陣も豪華で良い。好きな曲は”Sober”

[ Rorschach ] Part 2 by PENOMECO

 PENOMECOのEPは前作の続き。前作でもイメージを裏切るスピットスタイルを見せていたが今回もそのスタイルは健在。甘い声のシンガー扱いされるのを嫌だと思ったのか、ギャップ狙いなのか。友人とも話していたが、今回のPENOMECOのようなケースやスピット系のラッパーのシンギンスタイルとかギャップがあるとグッとくるよなーというのはある。好きな曲は”Quick Fast”

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