2023年6月28日水曜日

「差別はいけない」とみんないうけれど

「差別はいけない」とみんないうけれど/ 綿野恵太

 この時代にスリリングなタイトルだなと思って読んでみた。半分タイトルは釣りのようなもので、著者自身は差別に同調するわけではなく今やすべての前提となっている「ポリティカルコレクトネス」を紐解いてくれていて勉強になった。差別に対して意見を発するときにどのポジションなのかが肝心だと分かった。

 初っ端のまえがきの中でも言及されているのだが、全体を通底するのは民主主義と自由主義の違いについて。つまりはアイデンティティ・ポリティクスとシチズンシップの違いなんだけども、この論点が超重要。読む前後で世界が違って見えるようになった。端的にいうと今までは被差別者が差別に対してNOを突きつけていたが「差別はいけない」ことだという社会全体のコンセンサスがかなり取れるようになった結果、当事者以外も含めた市民社会全体で差別へカウンターするようになってきたということ。ただ、そのシチズンシップが見据える平等というのは本当に実現可能なのか?とか差別構造と経済はどうしても切り離せないとか。個人的に嫌だなと思ったのは統治功利主義の広がりに伴って合理化が進むうちに差別が肯定されてしまう話。なんでもCPを突き詰めてもしょうもない社会しか生まれないことを再確認した。あと差別は意図的かどうか問わないという話もあり、こないだ読んだWe Act! 3 で感じた居心地の悪さは然るべき反応だったのかもしれない。その不快さについて言語化することが必要であり、自分がどういう考えなのか、そこに論理の飛躍や矛盾がないか確認するべきと書かれていて納得した。こんな感じで普段考えもしない論点ばかりで興味深かった。

 ただ正直なところ内容の半分か半分ちょいくらいしか意味が取れていない気がする。ポイントポイントでラップアップしてくれて論点を整理してくれているのだけど、固有名詞の馴染みの無さと話の難しさでなんとなく読み流していく場面も多かった。まだまだ頭を鍛えねば…

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