2021年12月28日火曜日

きみは赤ちゃん

きみは赤ちゃん/川上未映子

 子どもが産まれるにあたり身体の変化がなく自分の親としての無自覚さが怖くなって読んだ。女性の視点で出産に対してどのような思いでいたのか、妊娠や出産にまつわる性別間の差異やそれに伴う怒り、憂鬱な感情がときに冗談めかして、ときにストレートに書かれている点がオモシロかった。特にネガティブ寄りの自分としては著書の意見は参考になることが多かった。

 比較的序盤で「すべての出産は、親のエゴだから」というパンチラインでいきなりぶん殴られて、まさしくそのとおりだよなと心底思う。親が子どもを自分の所有物のように振る舞うことにエゴを感じていたけど、そもそもこの世に産み落とした、そのエゴと向き合うことも必要なのか…と自分の覚悟を問われた気がした。

 著者の出産や育児の環境が自分のパートナーと近いこともあり、こんなに大変なのかという思いと同時に夫にまつわる不快事案を知ることができてケーススタディの役目も果たしてくれて助かっている。この本に書かれていることを前提にして行動できるので男性こそ読むべきだと思う。

 子どもが産まれるまでは他人と違うことをユニークと捉えて、むしろ誇りにして生きてきた人生だったが、著者のいうとおり育児に関しては全くそういかない。乳幼児の発育については誰とも比べてはならないのが鉄則らしいのだが、「普通」から逸脱していないか気になってしまう。その違いが生命に直結しているので一概に比較はできないのだけど、自分がこんな気持ちになるとは想像もしていなかった。

 あと一番刺さったのはこのライン。ぐうの音も出ないクリティカルヒットだったので積極的に育児に関与しようと思った。

あれだけ日々ネットにつながっていてときにはしょうもない情報を読んだりしているはずなのに、その時間はたんまりあるはずなのに、われわれの一大事であるはずの妊娠、ひいてはわたしのおなかの赤ちゃんについてただの一度も検索をしたことがない、ということに、わたしはまじで腹が立ったのである。

 著者が繰り返し主張しているように男女間の出産、育児に対する認識の違いは常に意識しておきたいと思うことが多かった。出産や育児が女性の身体に依存するファクターが多いとはいえ男性がコミットできない理由はない。子育ては妻の仕事みたいな役割分担にならないように本著を自分への戒めとしたい。 

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