2015年8月4日火曜日

野火



劇場で予告見たときから、これはとんでもないで…
と思っていた塚本晋也監督作品。
今年は戦後70年ということで、
8月にかけて様々な戦争映画が公開されますが、
本作は頭一つどころから身体一つ抜けてるのでは?!
そのぐらい圧倒的な作品でした。
戦争の残酷さを伝える方法としては、
大きく2つに分けるとすれば、
ヴィジュアルで分からせるものと、
戦争というシステムの無意味さを
伝えるものがあると思います。
本作は前者について徹底的に追求し、
これでもか!とエグミを見せてくる。
それがただ単に残酷な訳ではなく、
極限状態での人間関係にフォーカスし、
戦争が何を引き起こすものなのかを
観客に考えさせてくる。
映画史に残るレベルの傑作だと思います!
舞台は第二次大戦中のフィリピンの島で、
主人公は監督自身が演じる田村一等兵
彼は肺病を患いながらも島内を徘徊し、
何とか生き残ろうとするものの…という話。
田村が野戦病院と戦場を行き来するシーンから
映画が始まるんですが、ギャグか!
っていうたらい回しぶりに笑える。
そして、ここで提示される、
どこにも居場所がなく、戦場をひたすら徘徊することは、
物語を構成する大きな要素になっています。
田村一等兵が生き残れるかどうかという話なんですが、
とにかく生死ギリギリの表現が凄まじい…
当然の如く死体はゴロゴロ転がっているんですが、
単純に血が出てるだけじゃなくて、
虫が沸いていたり、欠損をモロに描いていたり、
容赦なくエグ味がスクリーン上に展開されます。
何よりも大きなテーマが「食事(食料)」
飽食時代である現在の日本だと考えにくいですが、
当時の戦場における「食べる」ことの
プライオリティの高さがビシバシ伝わってくる。
それをヴィジュアルと人間同士の関係性で見せてきます。
ヴィジュアルでいうと、土付きの芋をそのまま食べたり、
謎の草をしゃぶったり、文字通り泥をすすりながら、
何とか生き延びていく描写はグロよりもキツい。。
タロイモ(?)が主食で、それを巡っての争いは
敵、味方関係なくて生き地獄そのもの。
医療、タバコ、火など己の優位点を使ったディール、
ぶっ殺してでも食料をゲットするとか。
極限に置かれた人間同士の関係性の変化は
「自分がもしこの立場だったら…」という形で、
観客は間違いなく考えさせられます。
それを支えるのが間違いない俳優陣。
とくにリリーフランキー、中村達也が好きでしたね〜
悪者といえば悪者なんだけど、
一概に言い切れない側面もあって…というバランスを
見事に2人は体現していたと思います。
戦闘シーンもいくつかあるんですが、
本作を見た誰もが忘れられないシーンが、
パラボラ島へエスケープするための夜間大移動。
ここの銃撃シーンの凄まじさは
それこそプライベートライアンの冒頭レベル。
ライトついた瞬間の絶望は忘れられへんで…
終盤は前述した食料の話へとフォーカスしていきます。
田村、リリー、少年の三角関係は、
人は生きるためにどこまで野蛮になれるか?
という問いかけを体現している。
物語の積み重ねがあるから、カニバリズム展開も
ヴィジュアルを含め重く響いてくる。
さらに、その後の田村の食事シーンは
PTSDという言葉で片付けられない、
「何か」がスクリーン上に浮かび上がる。
戦争のエグ味を体感するのに、
これ以上の作品はないと思いますのでマスト!

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