2026年1月28日水曜日

『Skippin' on Step』 Worldwide Skippa Release Party

 Worldwide Skippaのリリースパーティーに行ってきた。彼の存在を知ったのは、ソングウォーズの第1回目で、当時まさかここまでシーンの中心的な存在になるとは、誰も想像していなかっただろう。1年弱という短期間で、ハードワークを武器にヒット曲を立て続けに生み出し、確固たるポジションをシーンに築いたことをあらためて証明するような、素晴らしいパーティーだった。

 仕事終わりに行ったので、19時過ぎにWWWに到着するとTakaryuというDJの時間だった。深夜帯のパーティーから足が遠のいて久しい身にとって、この時間に爆音でDJを浴びられるありがたさを噛み締める。現場でしか聞けない日本語ラップのマッシュアップもあって到着早々ブチ上がった。(プレイリストを本人が公開してくれていました→リンク)ストリーミングばかりで音楽を聞いていると、こういう瞬間には一生出会えないので、現場に行くことの大切さを実感した。

 続いて登場したのはBBBBBBB。Dos Monosのポッドキャストで名前を聞いて気になっていたのだが、こちらの想像の上の上の上くらいのライブで圧巻だった。Underworld「Born Slippy」が流れる中、長髪の男が一人、さらにもう一人と現れ、彼らがBBBBBBBだとわかる。BPMの早い四つ打ちビートの上でひたすらシャウトし続け、WWW独特の傾斜きつめの客席へ移動していく。もう一人の男は徐々に衣服を脱いでいく。そんな奇想天外で自由なステージングをみると、自分の凝り固まっていた音楽観が気持ちよく破壊されていった。パンクのようなアプローチであるものの、煽りが「3、2、1、Let's go!」という近年のヒップホップライブの定型であり、ヒップホップ好きとしては親近感を抱きやすかった。さらにビートが四つ打ちからグライムっぽいノリになると、彼らの表現したいことが一気に伝わってきて、結果的に「なんか好きかも?」と思わされているから、ライブこそが彼らの最大の魅力なんだろう。

 BBBBBBBの出番で客演した徳利がそのままライブへ。正直に言えば「インターネットのミーム的な存在」という雑な認識しかなかった。しかし、ガイドボーカルに頼らず、汗をかきながらストイックにラップし続ける姿は、予想を裏切られた。キャッチーな曲名やトピックは、ライブにおいて圧倒的な強度を持ち、ワンコールでフロア全体を巻き込む力がある。「ネタラップ」として一括りにされがちだが、観客をロックする力を目の前で見れたことは新たな発見だった。

 その後はグライムかけおことsoakubeatsによるDJ。ここにsoakubeatsを招聘することに、パーティー主催者の感性の豊かさ、コンテキストを大事にしていることが伝わってくる。グライムに留まらない広義のUKダンスミュージックが流れまくり。普段聞かないサウンドばかりでブチ上がった。ストリーミングでいつでも何でも聞けるからこそ、DJというフォーマットの価値が高まっているように感じた。つまり、何をどういう順番でかけるのか?ということ。

 そんなUKミュージックをサンドイッチするかのように、最初と最後の曲は自身がプロデュースした日本語ラップというのがニクい。冒頭は「The Bridge feat. A-THUG」この日初めて聞いたのだが、どんなビートでもA-THUGの曲にしてしまうオリジナリティには毎回驚かされる。ラストは「ラップごっこはこれでおしまい feat. ECD」このパーティーで流れること自体に意味がある一曲だ。素直に見れば、ECDが日本語ラップにもたらしたコンシャスの系譜がECD→MOMENT JOON→Worldwide Skippa と引き継がれる様が刻印されたと言える。しかし、事はそんな簡単な話ではない。後述するMOMENT JOONのライブでも示されたとおり、「コンシャス」な側面はそのラッパーの一側面でしかない。それはSkippaもインタビューで話していたとおりである。内容偏重ではなく、あくまで音楽としてかっこいいかどうか。そして、<将来の夢は犯罪者>と喝破するECDのラップは「コンシャス」というわかりやすいフレーミングに対するカウンターに聞こえてしまうのだからヒップホップは不思議な音楽である。

 そんなECDの曲を聞いたあとのMOMENT JOONのライブ。旧知の仲なので、もう何回も彼のライブを見ているが、ここまで諦念が漂うライブは初めて見たかもしれない。一番顕著だったのは「シャトレーゼやめた」のフロウを引用して披露したアカペラのラップである。「正しいことの代弁者」という他人に背負わされた十字架の重さについて、こんなふうにラップで表現できるのは彼しかいないだろう。「TENO HIRA」という代表曲も披露されたのだが、そこに至るまでの構成から、従来あったエンパワメントのムードがシニカルに反転し、顕在化した強烈な諦念に思わず泣いてしまった。今の彼を支配する気持ちが具体的にどういったものなのか。その辺りは連載中のエッセイなのか、はたまた次のアルバムなのか、是非とも知りたいところである。ただ、そんな諦念を払拭するように五本指の手のひらから中指だけを残し「We Don’t Trsut」に流れていくあたりは流石。彼のビーストモードが開放され、ラップをスピットしていて、ひたすらにかっこよかった。

 そして、大トリを飾るのはもちろんWorldwide Skippa。「まほろば」から始まったわけだが、実質ワンマンとはいえ圧倒的な合唱率で驚く。30分という短い尺の中で「メタナイト」「Tee Shyne Flow」などの人気曲を本人が「出し惜しみなし」と言う通り、立て続けに披露され、フロアの盛り上がりはとんでもないことになっていた。特に「俺が出るライブで痴漢したら殺す」の大合唱は本当に信じられなかった。こういった啓蒙ソングで、ここまで盛り上げることができるのは、先述したコンシャスの文脈でいえば、内容に即してしんみり聞く必要もなく、曲としてかっこよければ、それはそれで盛り上がるということを体現している。まさに彼が日本語ラップをネクストステージに導いた証左と言える場面だった。

 ゲストゾーンが豪華メンツでこちらも出し惜しみなし。同じく名古屋を拠点とするXameleonとは「King’s anthem」を披露。目下最注目のプロデューサーである808 Edi$onのビートを初めてデカい音で聞けたので、私にとって1月27日が<Edi$on記念日>。そして、サプライズゲストとしてShowyの二人。翌日リリースのShowyのシングルにSkippaが客演で参加しており、その曲がこの日歌い下ろし。その名も「Worldwide lit」Showyのステージングはキャリアを感じさせるもので、圧倒的に華があった。そして個人的に一番好きな曲である「Go Taxi」では、Sad Kid Yazを召喚。圧倒的なアンセムっぷりをライブで体感することができた。

 MOMENT JOONを再び呼び込んでの「We Don’t Trust REMIX」はまさかのフルメンバー!Skippaが、2021年に行われたMOMENT JOONのWWWXでのワンマンを見にきていたというエピソードも相まって、エモーショナルな展開だった。REMIXの他の客演参加者であるFisong、SiX FXXT UNDXRを見れたことも貴重な機会だった。二人ともラップのフィジカルが仕上がっており、間違いなく今後注目のラッパーである。今回でいえば、SiX FXXT UNDXRがこの場にいたことの意味は特に大きい。なぜなら彼は、Skippaの楽曲のミックス、マスタリングをほとんど手がけており、Skippaの活躍の陰の立役者だからだ。いわゆるアングララッパーの音源を聞いていると、ミックスやマスタリングの粗雑さが耳につくこともある中で、Skippaの音源はその点がしっかり整理された音像、鳴りになっているのは彼がいてこそだ。これもパーティー主催者のキュレーション力の賜物と言える。

 『Skipping tape vol.1』から「徳利とブラピ」「Trust me」なども聞くことができた。「徳利とブラピ」のアウトロに言及があって、彼自身もここまでのスピード感を想定していなかったのだろうと腑に落ちる。今後はなかなか聞けないかもしれない。終盤は「don’t stop freestyle」「Nagoya rich boy」「Fuck hater 裏」といった最近のリリース中心の構成。最後は「シャトレーゼやめた」で大団円。当日はSkippaの誕生日だったらしく、ステージにHABUSHとケーキが用意されてライブが終演した。

 30分とは思えないほど充実したショーケースでいかに彼がヒット曲を生み出してきたか、よくわかるステージだった。一方で、キャリアの短さゆえにラッパーとしてのフィジカル性はまだ足りていない印象を受けた。そもそも1年で50曲近くリリースして、さらにそれらをライブでしっかり歌えるように仕上げていく、というのは土台無理な話で期待しすぎではある。その不足をシンガロングで補う観客との関係性こそ、新世代のライブスタイルなのだろう。Skipping tapeシリーズではないアルバムを用意しているらしく、2025年の間に出したミクステで、これだけのリスナーを巻き込んだSkippaだからこそ期待は否が応でも高まるわけで楽しみに待ちたい。

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