積ん読の本/石井千湖 |
本屋で見かけてパラっとめくって、オモシロいことを確信して読んだ。他人の読書スタイルや本棚に関するエピソードは誰の話でも興味深い、それを証左するような内容だった。
著名人の自宅や仕事場を訪問して、本棚を見ながら、どのように積ん読しているか、また積ん読に対する考え方、ひいては読書全般に関することをインタビューしている。作家、学者、翻訳者など登場人物はさまざまだ。本棚のスタイルも雑然と山積みにしている人もいれば、きっちり本棚に収納して管理している人もいたり、本という物理媒体と向き合い方のグラデーションを知ることができて、本好きとしては脳汁が出た。写真が素晴らしく、カラーということもあり、かっこいい本棚の数々が美しく輝いて見える。やはり本がたくさん積まれたり並んでいる様は、収集癖がある身としては心を昂らされる何かがある。そして本棚は一種のレコメンドとして機能しており、インタビュー含めて読みたい本が増えた。
本棚に本を置いておくことの意味は「いつか読むかもしれないから」とか「好きな本だから」以上の意味があることを本著は教えてくれる。本屋や図書館の本棚でもなく、電子書籍でもなく、自分の本棚を持つ意味を考えさせられた。特に山本氏の「本棚は知識のインデックス」という観点での主張は目から鱗だった。読む、読まないは関係なく積むことで意味が立ち上がる。それは自分の知識のアウトソースとして本棚が機能しているということだ。まだまだそんな境地ではないので、本棚道を精進したいところである。
また、小川公代氏が主張していた「本棚はビオトープのようなものだ」という主張にはおおいに納得した。大きな本棚を最近購入して、そこに収まるだけにすると自分ルールを定めたことにより、本棚で好循環が起きており、まさに生きている感がある。手元に置いておきたい本と、パッと読んでしまいたい本のラインが長年の読書生活で定まってきたことも大きい気がする。本棚をエディットする感覚を本著を参考にしながら本棚を養っていきたい。
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