アマニタ・パンセリナ/中島らも |
ブクログ徘徊で知って読んだ。著者の作品は『今夜、すベてのバーで』を随分前に読んだのが最初で最後。小説という体を取った実体験を含むアル中小説だったわけだが、本著はその頃の話も含めた各種ドラッグに関するエッセイとなっていた。こんなに書籍であっぴろげにドラッグ遍歴を語ることができる牧歌的な時代もあったのだな〜という隔世の感がある。パーソナルなドラッグ体験と客観的な効果や史実がいいバランスで興味深かった。
ドラッグの種類ごとにチャプター分けされており、各ドラッグとの思い出を柔らかいトーンで語っている。語り口は日常系のエッセイと変わりないのだが、起こっている事態は嘘みたいな本当の話の連続で興味を惹きつける。冒頭の猫に睡眠薬を飲ませたエピソードなんてエグすぎて寒気がした。
本著では数あるドラッグについて、効果に関するグラデーションが事細かに説明されているので、その点の理解が大いに深まった。特にシャブがいかに危ないドラッグなのか。さまざまなドラッグが紹介されている中、怒りめいた告発のような文体で唯一描かれているのがシャブだった。日本では大きな枠組みで「ドラッグは絶対悪!」とされてしまっている現状があるが、そこにあるグラデーションを伝えていってほしいものだ。特に大麻周りは誤謬が多過ぎて特段推進したい派でもないが、ここ数年の国のムーブは見ていてしんどいものがある。
ドラッグからの離脱に関する話もあり、著者の場合、ブロン(コデイン)中毒からの離脱だった。当時、咳止めシロップを飲めば摂取できる合法トリップとして知られていたブロン。やめるにあたっての著者の相当な苦労を知ると、始めるのは簡単でも危ないことがよくわかった。「ルールなんて無し あるのはマナー」といったところだろうか。
単なるジャンキーというより先走る好奇心が、著者を作家たらしめている点だと言える。これだけたくさんのドラッグをキメながらも、各ドラッグについて書籍や文献にあたり、歴史や効能について真面目に調べているからだ。それが顕著なのは幻覚サボテンに対するアプローチである。サボテンに含まれるメスカリンでトリップを試みようと試行錯誤する様は小学生の自由研究を見ているようで読んでいて思わずクスリとしてしまった。今、中島らもを読むのは新鮮な体験だったのでエッセイ、小説問わず読んでいきたい。
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