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| 世界へ ガザからの漫画 |
blackbird booksのインスタで知って読んだ一冊。イスラエルとパレスチナの間では、人質解放をきっかけに和平へのわずかな兆しが見え始めているものの、依然として先行きは不透明だ。そんな状況で、ニュースでは感じ得ないガザに住む人の生の感情が本著から伝わってきて、なんとも言えない気持ちになった。
原作は医学生、作画は英文学専攻の学生。ともに2003年生まれという若さで、戦争に巻き込まれている現実を突きつけられる。物語は、戦禍に巻き込まれたある学生が、北部から南部へ避難しながら、ガザで起こっているジェノサイドを止めてほしいと訴える手紙を凧に託し、塀の向こうへ飛ばすというもの。誰かがそれを受け取ってくれることを祈る、ただそれだけの話なのだが、結果的に誰も止めることができず、日々が過ぎていった現実に胸が痛くなる。
決して絵が上手いわけではないのだけど、「描かずにはいられない」という衝動が伝わってくる。また、弱いタッチや直筆の文字から情勢の不安定さがにじみ出ていた。あとがきで語られる木炭の話は、紙とペンさえあれば何とかなるという希望と、絵を描くのに木炭を使わないといけない絶望の両方が同時に伝わってきて苦しかった。
「他国における戦争がどうして自分ごとにならないのか?」は答えがなかなか出ない問いである。BDS運動としてマクドやスタバをボイコットできるかと言われれば、実質そんなことはできておらず、娘との食事でマクドを選んでしまう。一方で、CanteenのBoiler Roomとの協業に関する声明には正直納得できなかった。このように戦争に対して是々非々で接しているとき、自分が部外者であり、無力な存在だなと感じる。
そんな中、自分の身近な日常の中で、イスラエル寄りに映る両論併記的な発言をみかけた。いかにも平和主義のように見える「戦争を起こさないようにしよう」という発言が、親イスラエル側から発されることに違和感を感じたのだった。多くの子どもが亡くなっているジェノサイドをすっ飛ばして「両方の問題だよね」と、このタイミングで言うことなのか?と納得できなかった。とはいえ「平和が一番」という旗印のもとでは、多くの人にとっては私の感じた違和感は伝わりにくいかもしれない。実際、妻とは「何が問題なのかわからない」という話になった。
情勢が複雑になるほど理解が追いつかず、戦争は遠くの出来事になっていく。だからこそ、こうして当事者が書いた本を手に取り、少しでもその痛みや現実に触れることが、自分にできる小さなアクションなのかと思う。戦争に胸を痛めている人には、ぜひ読んでみてほしい。
※bbbではすでに在庫切れでしたが、ほかの書店ではまだ購入できるようです。

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