2025年9月2日火曜日

FANMADE ARCHIVE ICE BAHN

FANMADE ARCHIVE ICE BAHN

 日本語ラップの盛り上がりと共にファンベースが拡大し、それに呼応するようにファンZINEも増えている。手前味噌ながら自分でも作成したし、このブログで紹介したマルリナさんのライブレポZINEも素晴らしいものだったし、今はRIPSLYMEのZINEが話題となっている。そんな中でnoteで見つけたのが、ICE BAHNのZINEだった。コンビニ印刷できるとのことだったので、すぐに印刷して読んだのだが、想像以上に愛情のこもった一冊だった。

 著者の説明によると、本著はnoteでまとめていた内容を、改めて冊子の形に起こしたものとなっている。「資料集」と名付けられているとおり、ICE BAHNのこれまでの活動を確認することができる。ディスコグラフィーは、活動初期の楽曲や客演曲まで含めて網羅されている。また、ディスコグラフィーだけではなく、ライブ映像、MCバトルといった活動まで記録されており、なおかつその記録の粒度が高く、情報の質と量に圧倒された。

 特に印象的だったのは「ICE BAHNの現在地」から始まる構成だ。横浜ベイスターズへの楽曲提供、JA全農のラジオCM、ヒプノシスマイクへの楽曲参加といった近年の活動を丁寧に解説しており、単なる懐古ではなく、今のICE BAHNにフォーカスしているところに唸らされた。

 近年のフリースタイルブームの一翼を担ったFORKのMCバトルについてまとめられている点が、本著の白眉である。他のメンバーを含めてICE BAHNのMCバトルの戦績が網羅的にまとめられており、勝敗の結果まで丁寧に記録されていることに驚く。そして、稀代のフリースタイラーであるFORKのバトルにおけるバースが一部書き起こしされているのだが、相当読み応えがあった。即興のリリックよりも練られたリリックの方に魅力を感じるので、正直なところMCバトルはそんなに得意ではない。しかし、FORKのバトルでのバースを文字で読むと、そのライミングは即興のレベルを大きく凌駕して、時間をかけて熟成されたバースと同じ味わいがあるのだ。本著のようにまとまった形で読むと、改めてリスペクトが増した。

 2006年のUMBにおける名勝負、HIDA vs FORKについても多角的に深堀りされている。さまざまな資料をリファレンスしながら、当時のバトルがどういう位置付けにあったのかを浮き彫りにしていく様は、ジャーナリズム的アプローチで読み応えがあった。そして今の時代が素晴らしいのは、このテキストを読んだあとにすぐに映像が見れることだ。このパートを読んだあとに、実際のバトルを見ると、自分も歴史の証人になったような気持ちになった。

 巻末のリファレンス一覧に代表されるように、著者は紙媒体やウェブ記事、YouTube、ラジオ、さらには本人への直接取材まで駆使している。情報の裏づけが徹底されており、資料的価値は極めて高い。noteでも読むことができるようだが、やはりこういった読み物の形でまとまって読めるのは大変貴重なものだ。しかも、これは第一弾で続編があるらしいので、次もリリースされればぜひ読みたい。印刷できるのは9/8 AM8:00までらしいので急げ!

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