2025年3月5日水曜日

Paloalto Live In Tokyo

 韓国のラッパーPaloaltoの単独公演があったので行ってきた。韓国ヒップホップにおいて最もアイコニックな存在はJay Parkであることは間違いないが、裏番長とでもいうべきか、屋台骨のような存在がPaloaltoと言ってもいいだろう。そんな彼のレガシーがたっぷり詰まった90分のショウケースは、圧倒的すぎるラップスキルとライブスキルで完全にノックアウトされた。最近見たヒップホップのライブの中でも群を抜いたクオリティだった。2020年のShow Me The Money(以下SMTM) 9から韓国ヒップホップを聞き始め、もう5年ほどシーンを追いかけ続けた、その魅力が存分に発揮されていたのであった。

 事前に本人からセットリストが公開されており、それを聞いてから、ライブに臨んだのでかなり楽しみやすかった。ライブ会場はミュージックバーに近いクラブのようなところで、ステージの横を人が通るような、お世辞にもライブ向けとは正直言いにくい場所。ライブ前は心配だったが、それは杞憂だった。「弘法筆を選ばず」をまさしく体現しており、1MCのラップだけでこれだけロックされるのは本当に久しぶりだった。タイトなラップがかっこいいのは当然ながら、声の安定感、ライブでの所作など、すべてがベテランゆえの技量で「これぞプロフェッショナル…!」と感嘆せずにはいられなかった。

 本人がDJすることも影響していると思うが、押し引きの構成が本当に見事で緩急を駆使し、とにかく飽きさせない。韓国ヒップホップの屋台骨がゆえに、自身の曲だけではなく、Featで参加したヒット曲がたくさんあるわけだが、それらも出し惜しみなく披露してくれるサービス精神旺盛っぷりも頼もしい。また、曲のバリエーションが豊富で、縦ノリ、横ノリを自在にコントロールしてるあたり、マスターオブセレモニーとしてのMC能力が高く、相当なライブ巧者であることが証明されていた。

 曲間のMCはすべて英語で、日本語はiPhoneにメモしたものをたまに披露していた。日本での単独公演かつ、これだけの長尺は初めてらしい。前半はDaytona移籍後の2枚『DIRT』『Lovers turn to Haters』が中心。自らがオーナーだったHi-Lite Recordsをクローズした際はかなり驚いたが、Daytona移籍後はCEO業をQuiettに任せ、ラップにフォーカスしたこともあってか、いずれの作品も個人的にかなりお気に入りなので、それらの楽曲を生で聞けただけで最高だった。この日買った『DIRT』のバイナルは一生大切にします…

 さらにそこからFeat曲、Hi-Lite Records、4 The Youth、SMTMというパートに分けながら、ライブが進むことで、彼のレガシーがスタックされていく構成は、Paloaltoがどういうラッパーなのか証明するようなものであり、ライブを見終えたあと、彼に対するリスペクトがこれまで以上に増した。Hi-Lite Records時代の曲を中心に往年の名曲でかなり盛り上がっていたので、この日を待ち望んだ古参ファン(a.k.a 同志)がたくさんいたのだろう。個人的には後半の4 The Youth、SMTMパートがかなりグッときた。『4 The Youth』は当初、JUSTHISのわかりやすいラップスキルで好きになったのだが、聞き返すたびにPaloaltoの魅力に気づくことになった韓国ヒップホップのマスターピースだ。「Wayne」「Swith」「Next One」といった楽曲群を生で聞けたのが嬉しかった。そしてSMTMパート。昨年見たBlaseのライブでもSMTMパートがあったが、PaloaltoのSMTMパートはコミットしてきた歴史の長さもあいまって、番組で生まれたクラシックとしての圧倒的な強度があった。なかでもSMTM9で生まれた「Want it」はSMTM9で韓国ヒップホップの衝撃を受けた身なので、5年のときを経て本人のラップを目の前で聞くことができて感慨深かった。

 この規模かつ90分のライブを見れたのは本当にラッキーで満足度が高かったことは間違いない。ただ、継続的に日本で韓国ヒップホップのライブを見る可能性を考えると、今回のような形はあまりサステイナブルではないと思うので、日本と韓国のラッパーの交流がもっと進んで、相互が盛り上がるフェスのようなものが開催される未来を期待してやまない。

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