2024年7月12日金曜日

JJJ JULY TOUR


 JJJのワンマンライブに行ってきた。昨年リリースのアルバムは個人的に2023年のベストだったし、リリース後に初めてライブを見るのでとても楽しみにしていた。その期待をはるかに上回る圧巻の完成度の素晴らしいライブだった。約2時間MCなしでスピットし倒すラップ力、ライブのうまさは健在。今回はヒップホップのラウドさを活かしつつ音楽的な挑戦と拡張を掲げた野心的な編成が特に目を引いた。それは生楽器の導入だ。コントラバスとしてSTUTSバンドでおなじみの岩見氏を招聘するところまでは予期できる範囲だが、尺八、琴の奏者を召喚するのは想像の上の上だった。尺八、琴も海外のラッパーたちがオリエンタリズムの要素の一つとしてビートで使っているケースがあるが、日本のラッパーがそういった象徴的なものではなくモダンな音として採用している点が本当にかっこいい。JJJで琴といえば当然「wakamatsu 」を想起するわけだが、それだけではなく元のビートにその手の音が入っていない曲も含めアレンジが施されており各曲をネクストレベルに押し上げていた。

 なかでも最高だったのは「Friends kill」への入り方。尺八奏者がサックスさながらのソロプレイを始めて徐々に当該曲のフレーズを混ぜていき徐々に寄せていく構成が憎い。ツアータイトルにもなっている「July」が琴使いとしてはハイライト。琴に対してなんとなく正月のイメージを持っているけど、音色としては完全に夏であり清涼感の演出に大きく貢献していた。コントラバスは尺八、琴に比べて、かなり多くの曲で参加していたが際立っていたのはイントロ。特に「Strand」前のソロ演奏、「心」前のSTUTSとのセッションが白眉だった。

 ここまでアレンジがどうのこう書いてきたが、それらはすべて後付けでありベースとなるビートの圧倒的な鳴りがあってこそである。彼がキャリア初期からこだわってきたその鳴りがZEPPのような大きな会場で爆音で響き渡っていた。”そんなビートじゃ たたねえよ Right?”は彼だからこそ言えるラインであることの証左となっていた。

 フィーチャリングの充実度も想像以上で盟友Campanellaの八面六臂の活躍しかりISSUGIのOGとしての立ち振る舞い、Kid fresino のフリーキーさ、Daichi Yamamotoのクールネス、盛り上げ番長C.O.S.AとOMSBのSummit組、フックだけでクラウドを掴み切るKEIJU、ミューズのMFSなど。フィーチャリングだけで十分お釣りがくる豪華さであった。

 キャリアを総括するように1st、2ndの曲もふんだんに披露してくれたのも長い尺が可能なワンマンライブならでは。特に「Place to go」や「Room」は個人的なフェイバリットだったし比較的キャリア初期からライブを見ている身からすると感慨深いものがあった。

 そして今回のライブで際立っていたのはFEBBの存在だ。亡くなってしまってからもう六年経つわけだが、そんな中でも彼は忘れられることがなく観客の心の中で生きていることがライブで証明されていた。楽曲で生き続けていることを示すかの如くFla$hBackS時代の曲を含めて多く披露していた。そして観客もFEBBに対するJJJの思いを汲むかのようにフックやバースをシンガロングする様子が印象的だった。そういった観客たちの想いが一番昇華されたのは「Beautiful mind」だろう。この曲を若い子たちがみんな全力で歌っている様を見ると、こういった形で一種のペインを共有しながら盛り上がることのできるヒップホップの素晴らしさを改めて感じてこみ上げるものがあった。(オープニングDJで16FLIPがFEBBの曲をかけたときの盛り上がりも記しておきたい。)そして最後は“Changes”で大団円。

 寡作なアーティストではあるので次のリリースまでもしかすると時間がかかるかもしれない。しかし、それは彼に音楽に対する真摯な姿勢があるからこそ。そんなJJJが生み出す次の音楽はいつまでだって待ちたい。


0 件のコメント: