2022年1月18日火曜日

村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝/栗原康

 はたらかないでたらふく食べたいがオモシロかったし、伊藤野枝が朝ドラになるらしいので予習として読んだ。こんな人が明治、大正の時代にいたのか!という驚きの連続と著者の軽快な語り口調で一気に読めてオモシロかった。

 生い立ちから最後陸軍に殺されてしまうまでの生涯を当時の資料に基づいて説明してくれている。表紙とかタイトルから重たそうな内容に見えるけど、実際読んでみるとかなり軽妙。いわゆる伝記と異なるのは語り手である著者の気持ちが乗ってきている点。評伝の場合、なるべく客観性を出すために著者が前に出ないと思うけど、本著では著者が独特の文体で「いやーマジで伊藤野枝やべえっす」とひたすら言い続けていてそこが最高にオモシロい。

 女性の権利を明治、大正の時代に声高に唱えるだけで相当弾圧されていたという話は怖いなと思う一方で、この時代の延長線上に我々は生きている。彼女やこれまでたくさんの人々がストラグルした結果、社会が一歩でも男女平等に近づいているのか?と頭の中で問いが駆け巡った。方向としては平等実現に進んでいると思うし性差別をよくないよね、という社会的コンサセンサスも昔に比べたら取れてると思うけど、たまにギョッとするようなニュースがあるのも事実。(医学部入試の件とかマジでキモ過ぎてゲロ吐くレベル)得られつつあるコンセンサスを社会に具現化していくためには伊藤野枝のような強い意思と行動力が必要だと感じた。

 なにかを我慢する必要はなくて自分の思うままに生きるべし、というのを生涯通じてやり抜いた、その生き様がめちゃくちゃかっこよくて今で言えば完全にヒップホップだと思う。繰り返し出てくる「生を拡充する」ことは人生で大事な指標だと感じた。 

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