2021年9月5日日曜日

失われた賃金を求めて

失われた賃金を求めて/イ・ミンギョン

 友人のレコメンドで読んでみた。いわゆるフェミニズム関連の書籍を読んだことがなく、今回初めて読んでみて知らないことが多く勉強になった。と同時に自分が既得権側なので責め立てられているような気持ちになり終盤しんどい部分もあった。「テメエのしんどいレベルじゃないレベルで、女性は虐げられているのだ」と言われればそれまでなんだけども…
 著者は韓国の方で本著で取り扱っている話も韓国の女性差別の状況について解説されている。しかし、あとがきにもあるように日本と韓国はほぼ同じ状況なので既視感のあることばかり。テーマはズバリ賃金で「韓国でもっと女性が受け取れるはずだった賃金の金額を求めよ」をベースに据えて色んな切り口でいかに女性の賃金が男性に比べて失われているか?データ、文献を駆使して想定される男性側からの反論を1つ1つ論破していく。前述のとおりしんどい気持ちになるのは「男の考えは間違っている」という話の連続だから。自分自身が女性差別的ではないと思っていても、心の中に巣食っている無意識の差別意識をグリグリほじくり返されている感じがした。つまり「それは思い込みなのでは?」とか「被害妄想なのでは?」と思ってしまう瞬間があったということ。実際、本著の中でも男性の無意識のバイアスにまつわる実験結果も紹介されており、相当気にしていないと自分がセクシズムな振る舞いを取りかねないなと思う。そもそも歴史的に男性偏重社会が続いてきたので、どこかで相当程度思い切り舵をふらないと本当の意味での平等を達成し、性差別が無くなることはないと痛感した。
 また生きていく上で必須である家事を含むケア労働を女性が負担することへの対価について、社会全体が安く見積もり過ぎているという話はまさしくその通りだと思う。つまり制度だけ変更したとしても解決するのは表面上のことだけで、やはり男性を含む社会全体で共通の課題だと認識しないと前に進まない。今もたくさんの女性が何かをあきらめているかもしれないけれど、その瞬間を減らしていく、ゼロにしていくことをあきらめないために少しでも自分の意識を更新することに気をつけたい。最後に特にグサっときたこと、Little Simzのめちゃくちゃかっこいい曲を引用しておく。

特定のポジションをめざした女性がせざるをえなかった努力、身につけざるをえなかった能力は、女性でなくても必要だったろうか?それだけの力量やガッツのある女性がセクシズムに対抗するためにエネルギーをさかなくてすんだら、他になにか別なこと、あるいはもっと多くのことを実現できなかっただろうか?そして、そのポジションにつく女性の数はどれほど多かっただろうか?

進入路が遮断されているのを見てそれ以上進むのをあきらめた女性の決断を、完璧に個人の選択だとする態度には相当な欺瞞がある。

0 件のコメント: