2026年6月3日水曜日

そして誰もゆとらなくなった

そして誰もゆとらなくなった/朝井リョウ

 著者のエッセイシリーズである「ゆとり三部作」の最終作が文庫になったので読んだ。これまでの二作ともおおいに笑わせてもらったが、本著も間違いない仕上がりで何度も笑った。

 直近の作品であり、過去の作品よりも自分と執筆時の著者の年齢が近く、年をとることに伴う変化について書かれているエッセイが多いので、過去作の中ではもっとも親近感をもって読むことができた。

 とにかく文字で笑わせるスキルがハンパじゃない。SNSのくだらないミームは足元にも及ばない「これぞプロ!」というスキルをこれでもかと見せてくれる。テンポ、ボキャブラリー、文体など、文字で自身が経験した状況と感情を描くスキルは他の追随を許さない。世はエッセイブームであり、箸にも棒にもかからないエッセイが山ほどある中で、こんなに人の心を動かせるエッセイは他にないかもしれない。

 著者の「おもしろい」に対するシンプルな考えが本著であきらかにされており、まさに著者のエッセイの真髄である。「おかしみ」を抽出するスキルが高い。

おもしろいというのは私にとって、様々な邪念が一切入ってこないくらい、素直に、そして真剣に生きているときに滲み出る〝おかしみ〟のことなのだ。そのおかしみは、隙、と表現することもできる。

 「お腹がゆるい」という著者の特性に関するエピソードが今回は特に多く、その内容に勇気づけられる。自分もどちらかといえばゆるい方だが著者ほどではないので、こういった 経験談をてらいもなく開示してくれていると「自分なんてまだマシだ」というポジティブな気持ちになれるので感謝である。「腹と修羅」における「現代のシザーハンズ誕生の瞬間である。」というパンチラインは笑いすぎて死ぬかと思った。

いろんな人に『イン・ザ・メガチャーチ』をおすすめされているので、早く読みたい。

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