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| 父親が子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もない。/布施太朗 |
大阪帰省の際、blackbird booksで見かけてタイトル買いした一冊。タイトルに掲げられた事実を踏まえ、自分はどう振る舞うべきかを考えさせられる内容だった。
著者は三児の父。関西出身で神奈川郊外の海辺に住み、都内でサラリーマンとして働いている。そんなペルソナの父親が、育児とどう関わっているかが記録されている。遊ぶ時間が短いとわかっていればこそ、日々の関わりは本来尊いもののはずだが、その瞬間にはなかなか実感できない。その前提を踏まえた著者なりの育児奮闘記であり、ノウハウ本というより「こんなことしてます」という日記的なものなのでグイグイ読めた。
自分の今の状況とは子どもの人数や就労状況などが異なるので、単純に重ね合わせることはできないけれども、著者が子どもと一緒に何かをすることに重きを置き、それに全力で応える子どもたちの元気いっぱいな姿が目微笑ましい。
本著で繰り返し唱えていることは、子どもと遊ぶときの「準備」の大切さだ。ただでさえ子どもは色んなことでまごついてしまう。だからこそ、大人サイドの準備不足による時間浪費を最小化して、いかにスムーズに導入し、楽しくできるか。時間があると、つい自分のことに時間を使ってしまいがちだが、子どものいないところで子どもを思って事前に行動しておく必要性を感じた。
読み応えが最もあったのは、子ども二人を連れての四万十川を川下りするパートだった。新宿から夜行バスで高知へ向かい、河原でキャンプをしながら数日かけて川を下る。その冒険譚はどこか椎名誠的だと思っていたら、実際に本人が帯を書いていて腑に落ちた。著者のような行動力はなく、無類のインドア派で行動に移せないことが多いので見習いたい。
本著は2016年の刊行であり、この十年で父親の育児参加を取り巻く状況は大きく変化した。育児休業の実質的な義務化もあいまってコミットする男性は確実に増えている。当時はまだ父親の育児参加が珍しかったこともあってか、「父親」であることを強調する構成は今読むと違和感を感じた。(著者が一人称を「オトン」としていることも、違和感を助長している気がした。)つまり、父と子どもの時間が中心で「家庭の育児」という全体像が見えづらいのだ。育児にコミットしていることは伝わるのだが「非日常はオトン、日常はオカン」という性別役割分担に映るのだった。
当然、男性サイドが育児に参加していなかった状況なので、それを打破するためには男性に育児に対して目を向けさせる必要がある。その認識を基にして、ウェブサイトを作ったり、そこでの連載が本著という形で本になったり、他にも巻末で紹介されているような施策を事業として企画している。そういった草の根の活動があってこそ今があるのは間違いない。
一方で男性が育児を語ることの難しさは、自分が育児のZINEを作って初めて認識したことだった。「男性」という属性が付与されるだけで、もともと女性が日常的に担ってきたことが特別視されてしまう。ある種、下駄を履かされている状態である。自分では、そのあたりのドヤ感が出ないように配慮したつもりでも、本というスタティックな情報になると、そのニュアンスが出てしまう。「育児本」と一言で圧縮してしまうと、こぼれ落ちてしまう話でバランスを取ったつもりだったが、機能しないこともあるのが現状で、結果的にイクメン文脈に回収されてしまう状況について、本著を読んで改めて考えさせられた。

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