2024年1月4日木曜日

2023年12月 第4週

Only Built 4 Human Links by MOMENT JOON & Fisong

 次のアルバムを最後に引退宣言していたMOMENTが新たにレーベルを立ち上げ若手のFisongというラッパーとコラボしたアルバムがリリース。『Passport & Galson』は彼がどこからきてどこへ向かうのか、それがハイコンテキストなアルバムという形でリリースされたのとは対照的で、本作はミックステープ量産時代を彷彿とさせるラップマシーンとしての魅力がふんだんに詰まっていて感動した。イケてるビートを選んでいかにかっこよくラップできるか?このコンペティションに再エントリーしてきた感じといえば伝わりやすいか…Watsonのリリシズムがもてはやされるのであれば、MOMENTのリリシズムの偏差値の高さも同じく評価されるべきだと思う。そして、MOMENTを再びこのモードへ引き摺り込んだFisongというラッパーが本当にかっこいい。彼は在日韓国人らしく、日本語、英語、韓国語の三言語を巧みに駆使してラップを構築している。音としての韓国ヒップホップに魅了されている身からすると、彼のリリックのバランスがめちゃくちゃハマった。韓国語のパーカッシブ性を活用してフローで魅せていきつつ日本語では意味を求めていく。1曲目でKhundi Panda & JUSTHISの”뿌리からリリックを引用してきたところでガンフィンガー立てまくり。(そして、この曲はMOMENTもビートジャックしている)前半はハードモード、ボースティングで攻めまくりつつ後半はメロウな展開になっていくのがジャケからすると意外。そしてラストの”Light”で大団円を迎える形はやはりアルバムというフォーマットでしか味わえない感動があった。(ここにちゃんとスクラッチを入れている点に彼らのヒップホップへの愛を強く感じた。)韓国を別のベクトルでルーツとして持ちながら日本でヒップホップをかますこと、2人だからこそできるアルバムになっていたので最高だった。タイトルはRakewonの1stアルバムからもじっているけど、その背景とか知りたいところ。好きな曲は複雑な気持ちになるけど、やっぱり”Robbin’ Time”

Hall & Nash 2 by Westside Gunn, Conway the Machine & The Alchemist

 もともと2017年にリリースするつもりだったアルバムが時を経て年の瀬にリリース。最近来日したことも記憶に新しいアルケミストの2023年のハードワーキングっぷりはえげつない。彼のソロアルバムを聞いてたわけでもないのに今年よく聞いたアーティストのトップ10にランクインしてた。つまりラッパーとの共同名義でたくさんリリースしたことがよくわかる。本作もここ数年のドラムレスもしくは鳴りの弱いスタイルのビートの上でGunn氏、Conway氏がハードにスピットし倒すというヒップホップ好きにはたまらない仕上がりだった。なかでも異質だったのはSchoolboy Qが参加した”Fork In The Pot” 今の時代に東も西ももはや関係ないとはいえ、Schoolboy Qの参加は意外だしビートのネタも皆目見当つかないけどかっけぇ!というヒップホップ純度めちゃ高い曲だった。

Knlls by Maalib & WRKMS

 Wooのインスタで知って聞いてみたら、特大ヒットだった。インディロック的なアプローチによるR&Bは最近のトレンドである中、もろにそのアプローチでめっちゃかっこいい仕上がりになっている。2人は韓国のプロデューサーのようで、クレジットによると本作は全編バンドサウンドで構成されている。バンドではあるものの抑制されていて引き算で作られている。最低限の音数でグルーヴ作られている感じが上品で好き。JOONIEという女性ボーカリストが半分ほど参加していて英詞多めなのも特徴的。当然グローバル視野に入っているだろうなと思うし全然通用すると思う。Wooはラップで参加、SUMINは6曲目にコーラスで参加しており彼らがフィールするのもよく分かる。インスト2曲が本当にいいアクセントになっていて、好きな曲はKim Okiのかっこよすぎるサックスが雄弁に語るラストの”Mounds, Knulls”

Naive by Ourealgoat

 前作のEPがかなりポップで「どうした?」という方向転換を始めているOurealgoat。今回のEPもその路線を踏襲しつつ若干ヒップホップに戻してきた、という塩梅。韓国ヒップホップのポップさというよりKポップ的なアプローチなのでそこまで好きになれず…ルックスもいいから人気の獲得という観点では間違いではないと思う。ただラッパーとしての素質めちゃ高いので、アルバムではドープさを期待したい。ポップな中でもヒップホップさを感じた”Can’t stop”が好きな曲。

0 件のコメント: